「チューリヒ美術館展」 国立新美術館
乃木坂
chariot

六本木の国立新美術館では、「チューリヒ美術館展」が開かれています。
会期は12月25日(月)までで、火曜日は休館日です。

チュ007

副題は「印象派からシュルレアリスムまで」となっていて、スイスを代表する美術館である
チューリヒ美術館の所蔵する、モネからポスト印象派、フォービズム、抽象絵画、
シュルレアリスムまで、74点が14室に分かれて展示されています。

第1室 セガンティーニ

第1室にはアルプスの画家、セガンティーニの作品が2点、展示されています。

ジョヴァンニ・セガンティーニ 「虚栄」  1897年
セ008

部分
セ012

若い女性が小川を水鏡にして自分の姿を写していますが、石の橋にはドラゴンのような
不気味な怪物が取り付いて女性を見上げています。
髪を持った女性の姿はメドゥーサを連想させます。
ナルシズムを否定的に捉えていて、古典絵画のような耽美的な雰囲気はありません。
主題に合わせるように色調は抑えてありますが、画面下半分の日陰と上半分の
日の当たる部分をはっきりと分けています。

2011年に損保ジャパン東郷青児美術館で開かれた、「アルプスの画家 セガンティーニ 
―光と山―」展に出展されていた作品で、今回再会出来ました。

第2室 モネ

第2室はモネ4点、ドガ1点、ロダンのブロンズ彫刻1点の展示です。
1889年にロダンとモネは二人展を開いています。

クロード・モネ 「陽のあたる積み藁」 1891年
チュ008

積み藁の連作の1枚です。

クロード・モネ 「国会議事堂、日没」 1904年
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1898年から1901年にかけては毎年ロンドンを訪れて、国会議事堂やウォータールー橋などを
描き、ジヴェルニーの自宅で連作を完成させています

クロード・モネ 「睡蓮の池、夕暮れ」 1916/22年
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睡蓮の連作の一つで、横6mの大作です。
晩年に白内障を病んでいたモネは、大きな画面だと遠くから何とか見ることが出来たので、
大画面の作品を描くようになったそうです。
赤から紫まで、虹の色をすべて使っていて、近くで観ると大振りなタッチでざくざくと
描いてあるのが分かります。
ほとんど形が無くなっていて、抽象絵画はもう目の前だなと思います。

エドガー・ドガ 「競馬」 1885/87年頃 
チュ016

パステル画で、競馬はドガの好んだ題材です。
ドガも眼を患っていて、光の強い屋外での制作はあまりしなかったようです。
ドガは8回の印象派展のうち、7回を除きすべてに出品していますが、モネは4回まで
出品した後は、ドガの出品しなかった7回にのみ出品しています。
そのドガの作品がモネの部屋に並んでいるというのも面白いものです。

第3室 ポスト印象派

ゴッホ2点、ゴーギャン・セザンヌ・ルソー各1点です。

アンリ・ルソー 「X氏の肖像(ピエール・ロティ)」 1906年
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ピエール・ロティ(1850-1923)はフランスの海軍士官で作家です。
ロティはイスタンブールに滞在したことがあり、その経験を小説にしたので、トルコ帽
を被った姿になっています。
ロティは猫を可愛がっていたので、一緒に描かれています。
顔は陰影を付けられて立体感があります。

第4室 ホドラー

スイスの画家ホドラーにも1室が設けられ、6点展示されています。

フェルディナンド・ホドラー 「真実、第二ヴァージョン」 1903年
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横3m近い大作で、左右対照の構図になっています。
題名からすると黒は虚偽の徴でしょうか。
ホドラーの作品は人物画も風景画も水平的で、左右対照、繰り返しが多いのが特徴です。

10月7日からは国立西洋美術館で、「フェルディナンド・ホドラー展」が始まります。

第5室 ナビ派

ボナール2点と、ヴァロットン4点です。

フェリックス・ヴァロットン 「アルプス高地、氷河、冠雪の峰々」 1919年
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色彩がまとめられ、氷河の薄緑色が印象的で、山の峰の連なりにはリズム感があります。
ヴァロットンはスイス生まれで、フランスで活動しています。

第6室 ムンク

ムンク4点の展示です。

エドヴァルド・ムンク 「冬の夜」 1900年
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冷え冷えとして不安な雰囲気の景色で、手前の木は不気味な形をしています。

第7室 表現主義

ベックマン4点、キルヒナー1点、バルラハ1点です。

マックス・ベックマン 「女優たち」 1946年
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一人は王冠を被り、剣を持ちながら何か読んでいて、もう一人は布を頭に被って
鏡に向かっています。
黒々と太い描線を使って、力感のある画面です。
マックス・ベックマン(1884-1950)はドイツ表現主義の画家で、第一次世界大戦に
従軍していますが、ナチス政権時代は退廃芸術家とされ、弾圧されています。

第8室 ココシュカ

ココシュカ5点の展示です。

オスカー・ココシュカ 「モンタナの風景」 1947年
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オスカー・ココシュカ(1886-1980)はウィーン生まれで、表現主義の画家とされています。
ココシュカも第一次世界大戦に従軍していますが、後に退廃芸術家として弾圧され、
第2次世界大戦中はイギリスに滞在し、後にスイスに移り住んでいます。
この絵はスイスのモンタナを描いた作品のようです。
ココシュカの作品はどれも荒々しいタッチで、展示されている他の作品は色彩も暗いのですが、
この絵だけはとても明るい色調です。

第9室 フォーヴィズムとキュビズム
マティス、ピカソ、ブラック各2点、ヴラマンク1点です。

パブロ・ピカソ 「大きな裸婦」 1964年
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ゴヤの「裸のマハ」に倣った作品とのことですが、名声を得た後のピカソらしく、
大きな足の描き方などいかにも自信ありげです。

第10室 クレー

クレー4点の展示です。

パウル・クレー 「スーパーチェス」 1937年
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格子模様の画面の中で、チェスの駒のような物がアクセントになっています。
パウル・クレーはスイスの画家で、ドイツで活動し、第一次世界大戦にも従軍していますが、
後にナチスにより退廃芸術家として弾圧されたため、スイスに戻って晩年を過ごしています。


第11室 抽象絵画

カンディンスキー、イッテン、アウグスト・ジャコメッティ、モンドリアン、レジェ各1点です。

ピート・モンドリアン 「赤、青、黄のあるコンポジション」 1930年
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やはりモンドリアンは明快で、デザイン的です。

第12室 シャガール

シャガール6点の展示です。

マルク・シャガール 「パリの上で」 1968年
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パリでの幸福な時を描いています。
女性は最初の妻ベラでしょうか、2番目の妻ヴァランティーナでしょうか。

第13室 シュルレアリスム

ミロ2点、キリコ、エルンスト、ダリ、タンギー、マグリット各1点です。

ジョアン・ミロ 「絵画」 1925年
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粗く青で塗った地に赤、白、黄色で何か描いてあります。
色彩は強いのですが、形はどこかユーモラスです。

ジョルジョ・デ・キリコ 「塔」 1913年
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塔には陽が当たっているのに空は暗く、手前の教会のような建物は
暗く不気味です。
昼とも夜ともつかない、幻想の世界です。

マックス・エルンスト 「都市の全景」 1935/36年
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メソポタミアのジッグラトのような建物を満月が煌々と照らしています。
壁の模様は型で捺したものだそうです。
人の気配は無く、冷え冷えとした幻想的な光景です。
ドイツ人のマックス・エルンストも第一次世界大戦に従軍していますが、後にナチスにより
退廃芸術家とされています。

第14室 ジャコメッティ

アルベルト・ジャコメッティのブロンズ5点、油彩1点です。

アルベルト・ジャコメッティ 「立つ女」 1948年
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アルベルト・ジャコメッティはスイス生まれの彫刻家で、フランスで活動しており、
極限まで細くした人物像で有名です。


印象派のモネに始まる近代美術の流れをおさえた、よくまとまった展覧会で、
特にスイスの美術館らしく、スイスに関係の深いホドラー、ヴァロットン、ココシュカ、
クレー、ジャコメッティらの作品が多く展示されているのが魅力です。

展覧会のHPです。

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【2014/10/02 19:45】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • スイス生まれだったり、スイスに所縁のある画家の多いことに改めて気付きました。
    フランスやドイツの隣という地の利の良さもあるのでしょう。

    【2014/10/03 23:57】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 良い企画ですね
  • たくさんの作品紹介ですね。私も近代美術の流れを学び、楽しめる良い企画と感じました。チューリッヒ美術館がモネの大作初め欧州の有力画家の作品収集に努め、今回日本向けに選んでくれた内容に満足できました。

    【2014/10/03 23:05】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















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