「ウフィツィ美術館展」 東京都美術館
上野

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上野の東京都美術館では、「ウフィツィ美術館展」が開かれています。
会期は12月14日(日)までです。

ウ001


15世紀から16世紀にかけてのフィレンツェ美術を、ウフィツィ美術館の所蔵作品を中心に
約80点を紹介する展覧会です。
特にボッティチェリの作品が何点も展示されているのが見所です。

ドメニコ・ギルランダイオ 「聖ヤコブス、聖ステファヌス、聖ペテロ」
 1492-94年 テンペラ、板 アカデミア美術館

ウ014

壁龕の前に3人の聖人が彫像のように立っています。
聖ヤコブスは、彼の墓所のあるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼
象徴である杖を持っています。
聖ペテロの持っているのはイエスから授かったとされる、天国の鍵です。
衣服の赤が鮮やかで、柱などの装飾も細密に描かれています。
ドメニコ・ギルランダイオ(1449-1494)はフィレンツェの画家で、ミケランジェロの
最初の師でもあります。

フィリッポ・リッピ 「受胎告知のマリア、大修道院長アントニウス」
 1450-55年頃 テンペラ、板 ウフィツィ美術館
フィリッポ・リッピ 「大天使ガブリエル、洗礼者聖ヨハネ」
 1450-55年頃 テンペラ、板 ウフィツィ美術館

小さな縦長の板の上下にマリアとアントニウスが、別の板の上下にガブリエルとヨハネが
描かれています。
藍色の無地の背景に人物だけが描かれ、衣服の表現も簡潔で、古雅な趣きのある作品です。
フィリッポ・リッピ(1406-1469)ははフィレンツェの画家で、ボッティチェリの師です。

サンドロ・ボッティチェリ 「聖母子と天使」
 1465年頃 テンペラと油彩、板 捨て子養育院美術館

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フィリッポ・リッピ(1406-1469)の有名な「聖母子と二天使」に倣った構図ですが、
天使は一人になっています。
人気の高かった絵なので、リッピの弟子たちが構図を借りた作品を描いたのでしょう。
ボッティチェリ(1445-1510)は1460年頃にリッピの工房に弟子入りしています。
捨て子養育院は15世紀初めに絹織物商組合の資金で建てられた孤児院です。

サンドロ・ボッティチェリに帰属 「聖母子(海の聖母)」 
 1475‐80年 テンペラ、板 アカデミア美術館

ウ011

背景に海が描かれているので、「海の聖母」と呼ばれています。
ボッティチェリの作とされていますが、フィリッポ・リッピの息子、フィリッピーノ・リッピの
説もあるそうです。
フィリッピーノは父の死後、今度はボッティチェリの工房に入っています。
金線や透明なヴェールをあしらった、優美な作品で、マリアの顔は憂いを含んでいます。

サンドロ・ボッティチェリ 「パラスとケンタウロス」 
 1480-85年頃 テンペラ、カンヴァス ウフィツィ美術館

ウ002

パラスはギリシャのアテナ神の別名で、学問・芸術の神です。
ケンタウロスはギリシャ神話に出てくる半人半馬の怪獣で、弓矢などの武器を持ち、
野蛮で暴力的とされています。
パラスがケンタウロスの髪を掴んでいるのは理性の勝利を表しているそうです。
パラスは軍神でもあるので、大きな槍を持っています。
衣装の模様はダイヤモンドの指輪を組合わせたもので、フィレンツェの支配者、
メディチ家の紋章の一つです。
この絵は同じボッティチェリの「春(プリマヴェーラ)」と一緒にメディチ家一族の邸に
飾られていたそうです。

波打つ髪にダイヤモンドの飾りとオリーブの冠を着けたパラスはボッティチェリらしい
優美な顔立ちで、やや憂いを含んだ表情を浮かべています。

ウ003


パラスの上半身を包むオリーブの枝は衣装と一体になっていて、とても装飾的です。

ウ004


くるぶしを包むソックスもお洒落です。

ウ005


サンドロ・ボッティチェリ 「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」 
 1505年頃 油彩、カンヴァス パラティーナ美術館

ウ010

聖母マリアから幼子イエスをヨハネが受け取ろうとしていますが、マリアもイエスも
目をつむり、明らかにこの絵はイエスの十字架降下やピエタを暗示しています。
それまでの作品と違って、どこか冷え冷えとした感情に覆われています。

これは修道士、ジロラモ・サヴォナローラ(1452-1498)がフィレンツェで繰り広げた、
清廉を求め、贅沢を敵視する宗教運動の影響を受けたもので、以後のボッティチェリの
作品からは大らかな華やぎは消えてしまいます。

サンドロ・ボッティチェリ 「東方三博士の礼拝」 1490-1500年 テンペラ、板
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馬小屋というより古代の遺跡のような所で、聖母子たちが大勢の群集に囲まれ、
壮大で劇的な光景になっています。

フラ・バルトロメオ 「ポルキア」 1490-95年 テンペラ、板 ウフィツィ美術館
ウ009

ポルキアはシーザーの暗殺者の一人、ブルータスの妻で、彼女自身も
暗殺に加担しています。
自殺したブルータスの後を追い、燃える石炭を呑んで自殺したという逸話に
基いた作品で、足許に置かれているのは炭です。
小さな作品で、やわらかな光を受けて、暗殺の共謀者とは思えない優しい表情を
見せています。
フラ・バルトロメ(1472-1517)オはフィレンツェの画家で、この作品の時期の後、
サヴォナローラの教えに惹かれ、サヴォナローラの肖像画も描いています。

アンドレア・デル・サルト 「ピエタのキリスト」
 1525年頃 フレスコ(壁から剥離) アカデミア美術館

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力なくうなだれた姿のイエスがフレスコ特有の淡い色合いで、十字架上のイエスを
刺した槍の穂先も置かれています。
ピエタとありますが、マリアの姿はありません。
アンドレア・デル・サルト(1486-1531)はフィレンツェの画家で、夏目漱石の
「吾輩は猫である」にもその名前が登場しています。
私がアンドレア・デル・サルトの名を知ったのも「吾輩は猫である」を通じてでした。

ジョルジョ・ヴァザーリ 「無原罪の御宿りの寓意」
 1542年もしくは1544年 油彩、板 ウフィツィ美術館

ウ012

知恵の木(善悪の知識の木)に蛇が絡まり、アダムとイブ、アブラハムやイサクらが
縛り付けられています。
それらは原罪を表し、その上には無原罪の聖母マリアが描かれています。
画面全体が渦を巻くような構図です。

ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574)はフィレンツェの画家・建築家で、現在は
ウフィツィ美術館となっているフィレンツェの行政機関の建物を設計しています。
また、ルネサンス期の芸術家の伝記である、「画家・彫刻家・建築家列伝」の
著者としても有名です。

ヴァザーリは盛期ルネサンス以降の様式として、盛期ルネサンスで達成した美の
要素を集めて最高の作品を制作することを唱え、「マニエラ・モデルナ(新時代様式)」と
呼んでいます。
これがマニエリスムと呼ばれる様式で、会場にはこのマニエリスムの作品も
多く展示されています。

ブロンヅィーノ 「公共の幸福の寓意」 
 1565-70年 油彩、錫板 ウフィツィ美術館

ウ013

縦40㎝ほどの小品で、中央の女性が公共の幸福の擬人像で、商業の象徴の
カドゥケウスと富の象徴の豊穣の角を持っています。
右側の天秤と剣を持つのは正義、左側の2つの顔を持ち、地球を抱えるのは
賢明の擬人像です。

マニエリスムの特徴は、寓意の多様、奥行きの無い空間、曲がりくねり
引き伸ばされた人体などで、この作品にもそれが表れています。
ブロンヅィーノ(1503-1572)はフィレンツェの画家で、メディチ家の宮廷画家を務め、
メディチ家のタピスリー製作所のための下絵も描いています。


ボッティチェリの初期から後期までの作品を比較して観ることが出来、日本ではなじみの薄い
マニエリスムの画家たちの作品も観ることが出来ました。

展覧会のHPです。

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【2014/10/16 19:52】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • こんにちは。
  • フィレンツェは「花の都」ですから、ボッティチェリの作品はルネサンスの花と言えますね。
    オープンして早めに行ったので、お客さんは多いながらもゆっくり鑑賞出来ました。

    【2014/10/20 07:17】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • フィレンツェにいる気分
  • ルネサンスの絵画はいいですよね。日本にはないものがそのまま眼前に迫ってくる感じがします。パラスとケンタウルスをじっと見ると、ウフィツィ美術館でヴィーナスの誕生と春を見ている気になりました。

    【2014/10/19 23:15】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















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     外国美術館からのルネサンス関連の国内展覧会としては、ルーヴル美術館やエルミタージュ美術館のものは多いが、ウフィツィ美術館からのものは少ない。私の見たのは、2001年5月に国立西洋美術館で開かれた「イタリアル・ネサンス‐宮廷と都市の文化」展(絵画・工芸・写本など178点)、2004年1月に東京都美術館で見た「フィレンツェ‐芸術都市の誕生」展(絵画・彫刻・工芸など120点)の二つの他は、201...
    【2014/10/25 18:28】

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