「新印象派 光と色のドラマ」展 東京都美術館
上野
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上野の東京都美術館では、「新印象派 光と色のドラマ」展が開かれています。
会期は3月29日(日)までです。

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印象派は絵具を混ぜずにキャンバスに塗るという、筆触分割という技法によって
明るく光のある画面を生んでいます。
これを更に理論的に進めて、色彩を細かい点を使って表す点描法によって描いたのが
新印象派です。

この新印象派の作品を中心に約100点を展示する展覧会です。


プロローグ 1880年代の印象派

クロード・モネやカミーユ・ピサロの作品などが展示されています。

ピサロは印象派の長老格で、8回の印象派展すべてに出展した唯一の画家ですが、
新印象派にも理解があり、自分でも点描で描いた時期もあります。

シスレーは1880年のモネの個展を観て感銘を受け、画家を志したそうです。

クロード・モネ 「税関吏の小屋・荒れた海」 1882年 日本テレビ放送網株式会社
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モネはノルマンディーのプールヴィルの海岸をよく描いています。

クロード・モネ 「アヴァルの門」 1886年 島根県立美術館
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ノルマンディーのエトルタの景色です。


第1章 1886年:新印象派の誕生

1886年に開かれた、最後の印象派展である第8回印象派展に、ピサロの勧めで
ジョルジュ・スーラ(1859-91)とポール・シニャック(1863-1935)が出展しています。
スーラの「グランドジャット島の日曜日の午後」はこの時に出展されています。

ジョルジュ・スーラ 「セーヌ川、クールブヴォワにて」 1885年 個人蔵
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部分
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クールブヴォワはパリのグランドジャット島の北側にあります。
「グランドジャット島の日曜日の午後」を思わせる作品で、手前の木と影の濃い色と
セーヌ川や対岸の薄い色との対照が目を惹きます。
パラソルを持った女性を中心に、黑い子犬が右に、白いヨットが左に向かっています。
手前に大きな木を置くのは広重の浮世絵の影響でしょうか。

ポール・シニャック 「クリシーのガスタンク」 1886年 ヴィクトリア美術館、メルボルン
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部分
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クリシーはクールブヴォワの対岸の少し下流にあります。
エッフェルの設計によるというガスタンクが後ろに並ぶ、新開地らしい風景を選んでいます。
赤い屋根の色を出すのにもさまざまな色を使って工夫しているのが分かります。
エッフェル塔の完成は1889年です。


第2章 科学との出会い―色彩理論と点描画法

シニャックが著した理論書、「ウジェーヌ・ドラクロアから新印象主義」や当時研究の進んだ
色彩の理論書などが展示されています。
新印象派という名は評論家のフェリックス・フェネオンの命名で、フェネオンは
新印象派の擁護者でした。


3章 1887-1891年:新印象派の広がり

新印象派はすぐに広がりを見せ、1872年にはブリュッセルでのレ・ヴァン(20人会)の
展覧会に展示され、ベルギーやオランダにも伝わっています。

ジョルジュ・スーラ 「ポール=アン=ベッサンの外港、満潮」 
 1888年 オルセー美術館、パリ

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ポール=アン=ベッサンはノルマンディーにある港です。
淡い色調でまとめられた、整然として理知的な画面です。
額縁にも点描が施されています。

ところが、スーラは1891年に31歳で病死してしまい、その後の新印象派はシニャックが
担うことになります。

ポール・シニャック 「髪を結う女、作品227」 1892年  個人蔵
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部分
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妻となるベルト・ロブレスを描いています。
色調は暖かく、幸せそうな雰囲気が表れています。
鏡像、リボン、陶器、瓶、団扇など2つセットで組立てられています。
シニャックはスーラの遺作目録を作っている時、「グランドジャット島の日曜日の午後」が
当初に比べ退色しているのに気付きます。
そこで、この作品ではエンコースティックと呼ばれる、蜜蝋を絵具に混ぜる古代の技法を
採り入れ、退色を防いでいます。


4章 1892-1894年:地中海との出会い―新たな展開

シニャックは1892年から南フランス、サン=トロペを中心に活動するようになります。

ポール・シニャック 「サン=トロペの松林」 1892年 宮崎県立美術館
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サン=トロペの夕暮れの景色です。
スーラの「ポール=アン=ベッサンの外港、満潮」の北フランスとは光の具合が違います。
シニャックはこの作品を重視していて、1894年までに少なくとも4回展示されているそうです。

アンリ=エドモン・クロス 「農園、夕暮れ」 1893年 個人蔵
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アンリ=エドモン・クロス(1856-1910)はシニャックと親しく、シニャックが新印象主義を
採り入れると、自分も新印象主義の絵を描くようになります。
1891年には南仏に移って制作していいて、この作品はシニャックの「サン=トロペの松林」と
交換されています。
アール・ヌーヴォーや浮世絵の影響を受けているとのことで、松は様式的に描かれています。

マクシミリアン・リュス 「カマレの埠頭、フィニステール県」  1894年
 ミシェル・アンド・ドナルド・ダムール美術館、スプリングフィールド、マサチューセッツ
 
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カマレはブルターニュ半島の突端にある港です。
マクシミリアン・リュス(1858-1941)は第8回印象派展でスーラの作品に感化され、
早くから新印象派のメンバーになっています。
パリの貧しい労働者階級の子として生まれたこともあって、工場や労働者などを
よく描いていて、この展覧会でも何点か展示されています。
1871年のパリコミューンの壊滅を13歳の時に目撃していて、後にその惨劇を
作品にもしています。
リュスの作品は色彩のコントラストが強く、画面に迫力があるのが特徴です。
リュスもシニャックに招かれ、サン=トロペの風景を描いています。


5章 1895-1905年:色彩の解放

点描は手間が大変手間がかかることもあって、この技法を止める画家も多くなります。
ピサロも、点描では気持ちに技法が追い付かないとして、点描を止めています。
シニャック自身もスーラのある作品を見て、これは細かく描きすぎていて無駄なことを
していると感想を漏らしたりもしています。

新印象派の作風もやがて変化し始めます。
シニャックは筆触が大きくなり、色彩が強調されて、やがてモザイク画のように輝き出します。

アンリ=エドモン・クロス 「地中海のほとり」 1895年 個人蔵
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部分
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クロスも見たままの風景や色彩ではなく、再構成された世界を描きます。
プッサンのような古典的風景で、色彩も独特なものになっています。

アンリ=エドモン・クロス 「山羊のいる風景」 1895年 プティ・パレ美術館、ジュネーヴ 
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木陰と樹木に囲まれた日の当たる場所の明るさを強調しています。
遠くの山羊はシルエットになっています。


エピローグ フォーヴィズムの誕生へ

ポール・シニャック 「ロッテルダム、蒸気」 1906年 島根県立美術館
煙を上げて港を行き交う蒸気船や手漕ぎのボート、揺れる波、遠くの橋や工場の煙などが、
大きな粒の筆触で活き活きと描かれています。

アンリ=エドモン・クロスの、ヌードを描いた作品が何点か展示されています。

アンリ・マティス(1869-1954)はシニャックに招かれ、1904年にサン=トロペを訪れ、
点描法を試しています。
特に、その頃クロスが描いていたヌードのモティーフに興味を持ったようです。
マティスは翌年にはアンドレ・ドラン(1869-1954)とともに、スペイン国境に近い
地中海沿いの町、コリウールを訪れ、ここで二人は自由な色彩で描く、フォーヴィズムと
言われる作品を生み出しています。
シニャックやクロスの進めた、見える色ではなく感じる色で描くという新印象派の
新しい流れはフォーヴィズムの誕生に大きな影響を与えたことになります。

アンドレ・ドラン 「コリウール港の小舟」 1905年 大阪新美術館建設準備室
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会場の最後に展示されていて、目の覚めるような色彩が躍っています。
第3回サロン・ドートンヌに出展された作品で、フォーヴ(野獣)の名が生まれたのは
この展覧会です。

この頃の新印象派の作品を観ていると、新印象派がフォーヴィズムの源流の一つに
なっていることを実感します。


新印象派の誕生から発展、そして次代への影響までを知ることが出来ました。
特に、スーラやシニャックだけでなく、マクシミリアン・リュスやアンリ=エドモン・クロスなど、
その他の新印象派の作品も数多く展示されていて、とても興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2015/02/01 19:41】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • 点描による色彩表現の面白さを堪能できました。
    同じ点描でも人によって作風が異なったり、シニャックの筆触がダイナミックになっていったりしていくのが分かりました。
    フォーヴへのつながりも示されていて、有益な展覧会でした。

    【2015/02/11 00:24】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 私も見に行きました
  • 2月になって遅ればせながら見に行きました。点描画の魔術には魅せられます。スーラの夭折は不幸ですが、後を支えたシニャックの光と色彩の大きな変化の歩みやマチスの影響など、あらためて今回勉強になりました。

    【2015/02/10 23:29】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















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