「小林清親展 文明開化の光と影をみつめて」 練馬区立美術館
中村橋
chariot

練馬区立美術館では開館30周年記念、「小林清親展 文明開化の光と影をみつめて」が
開かれています。
会期は5月17日(日)までです。

清親001


小林清親(1847 -1915〉は下級幕臣の出身で、鳥羽伏見の戦いや上野戦争にも
参加しています。
後に河鍋暁斎や柴田是真に絵を学び、明治の東京を叙情的な浮世絵に描いて、
最後の浮世絵師と呼ばれるようになります。
特に、西洋画を取入れた、光と影を強調した「光線画」と呼ばれる絵によって、
人気を得ています。


「猫と提灯」 明治10年(1877)
ダブル008

提灯に逃げ込んだ鼠が子猫に尻尾を掴まれたところです。
第1回内国勧業博覧会に出品された作品で、木版を使って西洋の石版画に劣らない
描写を目指しています。
提灯に描かれた紋は小林家の紋である、丸に抱茗荷です。

「駿河町雪」 明治12年(1879)頃
清親003

左は三井越後屋呉服店、奥に見える和洋折衷の建物は明治7年に建てられた
為替バンク三井組(後の三井銀行)です。
清親は江戸と明治の文物を取り混ぜ、静かな風景として描くことを得意としています。

「高輪牛町朧月景」 明治12年(1879)
清親002

明治5年に新橋・横浜間で開通した鉄道です。
夜景として描いていて、煙突は火を吹き、客車の窓の明かりが見えます。
高輪辺りは海上に土手を築いて線路を通したので、手前にも海面があって、
窓の明かりを映しています。
文明開化の象徴、電信柱も描き込まれています。
描かれている機関車は実際に使われていたイギリス製ではなく、アメリカ製とのことです。
アメリカの石版画を参考にしたのだろうということです。
ターナーの「雨、蒸気、スピード、グレート・ウェスタン鉄道」が雨の情景なのに対して、
こちらは朧月夜です。
高輪牛町は、芝増上寺の造営に際し、京都から多くの牛車と牛を呼び寄せ、
工事の終了後に住まわせた所ということです。
江戸の牛車が明治の汽車に変わった訳です。

「川口鍋釜製造図」 明治12年(1879)
清親005

川口の鋳物工場の様子で、釜を作っているところのようです。
溶解炉の炎の生む光と影を捉えていて、左側に足踏みふいごを踏んでいる
3人の影も見えます。
同じような題材を描いた、新印象派の画家、マクシミリアン・リュスの「鋳鉄工場」
(1899年)を思い出します。

「両国花火之図」 明治13年(1880)
木004

5月28日は隅田川の川開きの日で、この日から納涼船を浮かべることが許され、
その日に両国の花火が催されてました。
上空で開く花火を水面近くに置いて描いたのは清親の工夫です。
川遊びの船と人がシルエットとなって浮かび、喜ぶ人々の姿にはどこか郷愁を誘う
ものがあります。

「明治一四年二月十一日大火」 明治14年(1881)
清親004

小林清親はジャーナリスト的な感覚も持っていました。
1月26日の神田松枝町から出火した大火では、写生帖を手に一晩中火事を追いかけ、
朝に帰ってみると自分の家は灰になっていたそうです。
宇治拾遺物語に出てくる、自宅の火事の炎を観察していた絵師のような話です。

この明治14年には「光線画」による東京風景画をやめ、明治15年からは
時局風刺雑誌の「團團珍聞(まるまるちんぶん)」などに「清親ポンチ」と呼ばれる
マンガを掲載するようになります。
また、日清・日露戦争を題材にした戦争画も描いています。

「我艦隊黄海ニ於清艦を撃チ沈メル之図」 明治27年(1894)
大判3枚続きで、沈む清国の軍艦や水兵を海中から見た、大胆な構図です。


清親は木版画の衰退とともに、肉筆画を多く描くようになります。

「七福神図」 制作年未詳
 清親006

師の河鍋暁斎を思わせる闊達な描きぶりで、他にも滑稽な絵柄の掛軸が数多く
展示されています。

「川中島合戦図屏風」 明治43年(1910)
6曲1双の屏風で、左に敵を蹴散らして進む上杉謙信、右に影武者たちに囲まれて
構える武田信玄が描かれています。

小林清親は自身の還暦を記念して1000枚の絵を描く千画会で、十干十二支を題材にして
朝から描き続け、夕方には1000枚を描き上げ、超過の分まで描いて、上機嫌で帰って
行ったそうです。
その折に描かれた1枚も展示されています。


小林清親のことを郷愁を誘う光線画の画家とのみ思っていましたが、後期にはさまざまな
題材の肉筆画も盛んに描いていることを知った展覧会でした。

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【2015/05/07 20:32】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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