「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」 東京ステーションギャラリー
東京
chariot

東京駅の東京ステーションギャラリーでは北陸新幹線開業記念、「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」が
開かれています。
会期は7月20日(月・祝)まで、入館料は一般900円です。

鴨居001


鴨居玲(1928~1985)は金沢市出身で、1946年に金沢美術工芸専門学校
(現在の金沢美術工芸大学)に入学し、宮本三郎に師事しています。

「夜(自画像)」 1947年 笠間日動美術館
鴨居006

鴨居玲はよく自画像を描いていますが、これは学生時代の作品です。

初期の作品はまだ作風が固まっておらず、シュルレアリスム的な作品もあります。

評価も上がっていきますが、絵具が乾くまで待ってから塗り重ねていく
油絵の技法が体質に合わなかったりして、1950年代後半からの10年間は
油絵から離れたこともあるそうです。
鴨居玲の描き方は短時間に一気に描き上げるというものなので、油絵では
もどかしかったのでしょう。
その間、南米、パリ、ローマを放浪しています。

「静止した刻」 1968年 東京国立近代美術館
鴨7-20-2010_007

帰国後に描いたこの作品で安井賞を受賞します。
サイコロを振る男、驚く男など、サルのような顔をした、いわくありげな4人の男が
テーブルを囲んでいます。
重苦しい色彩の中で、盆の緑色が妙に鮮やかです。

「静止した刻」 1968年 石川県立美術館
近代美術館の作品とよく似た構図で、ストーブが無くなり、人物の配置が変わっています。

1971年にスペインに渡り、南部のバルデペーニャスに住んで、老人、酔っ払いなどを
題材にした作品を次々に生み出します。

「おっかさん」 1973年
鴨7-20-2010_004

ピエロのような赤い鼻をした酔っ払いの襟をつかんで、母親が叱り付けています。
「いい年をしてこのざまは何だい!」と言っているのが聞こえるようです。
鴨居玲には戦死した兄と姉の鴨居羊子が居て、末っ子の甘えっ子だったということです。

「石(教会)」 1974年 笠間日動美術館
鴨7-20-2010_008

教会をテーマにした作品も幾つか描いています。
スペインという、非常にキリスト教の影響の強い国に居て、何故自分は無宗教
なのかという自問から始まっているとのことです。
金沢時代に姉に連れられて教会に行っていたということですが、
キリスト教とは距離を置いています。
マグリットの絵に似ていますが、ここに描いてあるのは具体的な建物ではなく、
抽象的な「教会」という存在のようです。

「教会」 1976年 ひろしま美術館
鴨居004

鴨居玲の描く教会はやがて風で傾いたり、宙に浮いたりします。

「蛾」 1976年
鴨居003

1974年にバルデペーニャスを離れ、トレド、マドリード、パリに移り住み、
1977年に帰国し、以後は神戸で制作を続けています。
離れた理由は、明暗を強調する技法に嫌気がさしたのと、村の人間関係に重苦しさを
感じるようになったためとのことです。
作品では、男が目の前を飛ぶ一匹の蛾に驚いています。
バルデペーニャスを出た後の作品には、色彩が明るくなったものがあります。

「1982年 私」 1982年 石川県立美術館
鴨居002

大作で、鴨居玲の代表作、それも悲痛な代表作です。
自分の描いてきた酔っ払い、廃兵、老人、宝くじ売り、楽士、老婆、裸婦たちが
取り囲む中、何も描いてないキャンバスの前で筆も持たずに茫然としています。
愛犬チータも画家の後ろに座っています。
クールベの「画家のアトリエ」に倣っていますが、クールベの自信たっぷりの風情とは大違いです。

鴨居玲はバルデペーニャス時代の作品が最も充実しており、以後は裸婦などの新しい画題に
取組んでいますが、成果を挙げていません。
物語性のある、強烈な印象を残すバルデペーニャスの作品群に匹敵するものを生み出すのは
、至難のことだったのでしょう。
描けない自分を描く画家というのは珍しく、鴨居玲らしいとも言えます。

「ミスターXの来た日 1982.2.17」
初めて心臓発作に襲われた日の自画像です。
死というものが目の前に現れたときの恐怖を描いていて、数時間で仕上げたそうです。

以後は制作の悩みと心臓発作への怖れから、自殺未遂を繰り返すようになります。

「出を待つ(道化師)」 1984年
チラシに載っている作品です。
道化としての自画像でもあり、強い赤色が道化を演じる人物の悲哀を際立たせています。

「勲章」 1985年 笠間日動美術館
鴨7-20-2010_006

亡くなった年の作品です。
胸にビールか何かの王冠を勲章代わりに着けた男は、自画像でもあります。
世間的な評判のむなしさを表しているようで、寂しい表情をしています。

「踊り候え」 デッサン 1979年
鴨居005

鴨居玲はデッサンを欠かさず、時には1枚の作品に100枚のデッサンを行なうことも
あったそうです。
作品を一気に描き上げることが出来るというのも、デッサンの力によるものでしょう。
題は室町時代の歌謡集、閑吟集の歌に拠っています。

 憂きもひとときうれしきも思い醒ませば夢候よ 酔い候え踊り候え


鴨居玲は惜しくも57歳で自死を遂げていますが、スペインの人物群や多くの自画像を観ていると、
描くべきものは描き切ったのではないかと思えてきます。


2010年に横浜のそごう美術館で開かれた、「没後25年 鴨居玲 終わらない旅」展の記事です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は北陸新幹線開業記念、「交流するやきもの 九谷焼の系譜と展開」展です。
会期は8月1日(土)から9月6日(日)までです。

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【2015/06/06 21:04】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • こんにちは。
  • 迫力のあるデッサンも何点か展示されています。
    会場は東京駅なので、観に行くのにも便利です。

    【2015/06/07 06:24】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • chariotさん☆

    こんばんは~!
    観に行かれたのですね<鴨居玲展
    たくさんの画像有り難うございます(*^▽^*)
    私も、早く観にいきたい・・o(^o^)o

    【2015/06/06 23:51】 url[慧喜 #-] [ 編集]
    please comment















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