「ヘレン・シャルフベック展」 東京藝術大学大学美術館
上野
chariot

上野の東京藝術大学大学美術館では、「ヘレン・シャルフベック展」が開かれています。
会期は7月26日(日)までです。

シャルフベック001


フィンランドを代表する画家、ヘレン・シャルフベック(1862-1946)の作品、約80点を
展示する展覧会です。

ヘレン・シャルフベックは当時ロシア領だったヘルシンキに生まれています。
3歳の時に階段から落ちたことが原因で、生涯杖を必要とするようになっています。

幼い頃から絵が得意で、1880年には奨学金を得て、パリに留学します。

パリの国立美術学校はまだ女性の入学を認めていない時代だったので、
女性を受け入れているアカデミーで学んでいます。

「少女の頭部」 1886年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック003

ヘルシンキ時代もパリ時代も堅実な写実主義に基いて描いています。

「恢復期」 1888年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック008

フランスで知り合い、婚約したイギリス人画家から1通の手紙で婚約を破棄されます。
その痛手から立ち直り始めた時期の作品で、大きな画面に明るい光が差し込み、
病み上がりでもじゃもじゃの髪の少女はいとおしそうに新芽の出た木の枝を見詰めています。
ヘレン自身の心象を描いたともいえる作品で、代表作となっています。

「お針子(働く女性)」 1905年フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック002

ヘルシンキに戻ったヘレンは母親の介護を兼ねて、ヘルシンキの北のヒュヴィンカーに
移り住みます。
フランスの美術雑誌などから最新の動向を掴んでいたようで、写実主義を超えた
独自の画風を確立していきます。
この作品はホイッスラー(1834-1903)の「灰色と黒のアレンジメントNo.1(母の肖像)」
(1871年)に強い印象を受けて描いたものです。
腰から鋏を吊り下げたお針子さんは、動きを予感させる揺り椅子に静かに座っています。
ホイッスラーの作品に比べ、画面が単純化されています。

2014年に横浜美術館で開かれた、「ホイッスラー展」の記事です。

「赤いりんご」 1915年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック009

ボナールを思わせる明るい色彩で、抑えた色調の多い作品の並ぶ中で際立っています。

「黒い背景の自画像」 1915年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック010

シャルフベックは自画像を多く描いています。
この頃は画家としての地位が確立していて、背景を黒にした控えめな描き方ながら、
自信のある表情をしています。
頬の紅色に華やぎがあります。

フィンランドは第一次世界大戦中の1917年にロシアから独立しています。

母の死後、1925年にフィンランド南部のタンミサーリに移り住んでいます。

「天使断片(エル・グレコによる)」 1928年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック006

この頃はエル・グレコに感銘し、エル・グレコに倣った作品も描いています。


「諸島から来た女性」 1929年 フィンランド国立アテネウム美術館
シャルフベック007

モダンなファッションの女性です。
シャルフベックはインスピレーションの湧くようなモデルが居ないと描けないので、
タンミサーリではモデル捜しに苦労したそうです。

体調のすぐれなくなったシャルフベックは、1944年にスウェーデンのヘルシンキ近郊、
サルトショーバーデンの療養ホテルに入ります。
第二次世界大戦でフィンランドがソ連と戦っていた時期に当たります。

「黒いりんごのある静物」 1944年 ディドリクセン美術館
シャルフベック005

最晩年の静物画です。
腐って黑くなったりんごも描いていて、死というものを予感しているような作品です。
デュフィの晩年の、「黑い貨物船」シリーズを思い出します。

「自画像、光と影」 1945年 ユレンベリ美術館
シャルフベック004

壮年期の明るい自画像とはまるで違って、骸骨のような自画像を描いています。

1946年にサルトショーバーデンで83歳で亡くなっています。


シャルフベックは身体的障害、女子教育への壁、2度の失恋、母親の介護、2度の大戦など、
さまざまな問題や困難の中で、一途に描き続けています。
作品は、当時の美術の潮流を捉えてはいますが、派手さを追わず、禁欲的です。
北欧の画家の特徴なのでしょうか。

展覧会のHPです。

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【2015/06/08 19:30】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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