「英国の夢 ラファエル前派展」 渋谷 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
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渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「英国の夢 ラファエル前派展」が
開かれています。
会期は2016年3月6日(日)までで、1月1日(金・祝)と1月25日(月)は休館日です。

ラファエル001


イギリスのリバプールにある3つの国立美術館の所蔵する、ラファエル前派と
その後継者たちの作品、65点が展示されています。
リバプールは貿易都市として栄えた街で、富裕な市民の購入した絵画が
美術館のコレクションの基礎となったそうです。

ラファエル前派は、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-1882)、
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)、ウィリアム・ホルマン・ハント
(1827-1910)が1848年に結成した絵画結社です。
アカデミズムの基準と見做されていたラファエロより以前に戻るという意味で、
聖書や中世の文学を題材としながら、伝統的な図像にはこだわらない、
独自の写実的な表現を目指しています。
アカデミズムへの反発という点では、同時代の印象派と似ていますが、
印象派が視ることにこだわったのに対し、ラファエル前派は文学性・象徴性を
重視しています。
後の象徴主義絵画の先駆けとなっていますが、ラファエル前派自身は
考え方の違いや女性関係などから短期間で解散しています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「いにしえの夢─浅瀬を渡るイサンブラス卿」 
 1856-57年 油彩・カンヴァス

ラファエル006

大きな作品で、会場の最初に展示されています。
子どもを乗せて川を渡る甲冑姿の老騎士を描いていて、夕暮れの雰囲気も
表れています。
ただ、3人を乗せていることもあって、馬体が大きくなったのが大変不評だったそうです。
作品を見ると、馬を小さく描き直した跡も残っています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「春(林檎の花咲く頃)」 1859年 油彩・カンヴァス
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大きな作品で、ミレイの妻、エフィー・グレイの妹たちがモデルで、ミレイが
スコットランドのエフィーの実家で暮らしていた頃の作品です。
林檎園での優雅なくつろぎの情景ですが、右端には死を象徴する大鎌が
描かれていて、寓意画のようなところもあります。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「ブラック・ブランズウィッカーの兵士」 
 1860年 油彩・カンヴァス

ラファエル002

ミレイの代表作で、1815年にワーテルローの戦いの前哨戦であるカトル・ブラの戦いに
赴こうとするプロイセンの騎兵と恋人を押し留めようとする女性です。
ブラック・ブランズウィッカーはナポレオン軍と戦うため、プロイセンで編成された
義勇軍で、黑い制服が特徴です。
壁にはダヴィッドの「アルプスを越えるナポレオン」が飾ってあって、状況を暗示し、
忠実な犬もすがり付いています。
ブラック・ブランズウィッカーはイギリス軍に参加していたので、イギリスでも
馴染みのある画題だったのでしょう。
感傷的なテーマを扱い、黑と白の対称が印象的で、衣服の表現も見事なことから、
大きな評判を得た作品だそうです。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「シビラ・パルミフェラ」 
 1865-70年 油彩・カンヴァス

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ヤシの巫女という意味で、ヤシは美の勝利を表すそうです。
左に描かれているのは愛を象徴する目隠しされたクピド(キューピッド)と薔薇、
右は死の象徴のドクロとポピーです。

アーサー・ヒューズ 「聖杯を探すガラハッド卿」 
 1870年に最初の出 品油彩・カンヴァス

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ガラハッドはアーサー王に仕えた円卓の騎士の一人で、聖杯を探し当てています。
白馬にまたがり、槍を立て、石橋を渡ろうとしているところで、空から天使たちが
激励しています。
アーサー・ヒューズ(1831-1915)はジョン・エヴァレット・ミレイなど、ラファエル前派の
影響を強く受けた画家です。

エドワード・ジョン・ポインター 「テラスにて」 1889年に最初の出品 油彩・パネル
ラファエル011

古代の情景で、女性が団扇に乗った虫で遊んでいます。
団扇も虫もイギリスからは遠い南を想像させます。
階段の柱頭にはパルメット文様が彫ってあり、遠くの島はナポリ湾のカプリ島を
暗示しているそうです。

エドワード・ジョン・ポインター(1836-1919)は歴史画を得意にした画家で、
ジョン・エヴァレット・ミレイの後任として、ロイヤル・アカデミーの
会長も勤めています。

アルバート・ジョゼフ・ムーア 「夏の夜」 1890年に最初の出品 油彩・カンヴァス
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部分
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大きな作品で、夜の海には月の光が映り、漁り火のような灯も見えます。
花綱の吊られた室内には古代ギリシャ彫刻のような女性が4人、思い思いの姿で
並んでいます。
ともかく美しい画面を創ろうという、唯美主義の極みのような作品です。

アルバート・ジョゼフ・ムーア(1841-1893)はギリシャ彫刻に学んで、
古代風の衣装の女性を装飾的に描いています。
作品から物語性を除き、絵としての形式美を追求しています。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ 「フラジオレットを吹く天使」
 1878年 水彩、グワッシュ、金彩・紙

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フラジオレットはフルートの一種の古楽器で、現在はほとんど使われていません。
天使の羽根は頭の回りに装飾的な渦を巻くように描かれています。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)はウィリアム・モリスの
友人で、ロセッティに絵を学んでいます。
職人の子としては珍しくオクスフォード大学に入学し、始めは聖職者になる
つもりでしたが、そこで、後に詩人・デザイナーになるウィリアム・モリス(1834-96)と
友人になり、ロセッティや美術評論家のジョン・ラスキン(1819-1900)の影響を受け、
芸術家への道を選んでいます。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ 「スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)」 
 1891年 水彩、グワッシュ・紙

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部分
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大きな作品で、旧約聖書の雅歌の一節を主題にしています。
白百合は純潔を表し、二人の女性が象徴する北風と南風が風を起こす中を、
レバノンの花嫁が歩んでいます。
バーン=ジョーンズらしい落着いた色彩による、すらりとした姿の女性像です。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「エコーとナルキッソス」 
 1903年 油彩・カンヴァス

ラファエル013

ギリシャ神話の中の不毛な愛を象徴するお話で、美少年ナルキッソスは水に映る
自分の姿に恋をして、やがて死んでしまい、水仙に姿を変えます。
エコーはナルキッソスに恋しますが、木霊のように相手の言葉を繰り返すだけで、
自分から話しかけることは出来ません。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)はイギリスの古典主義の
画家ですが、ラファエル前派にも近い雰囲気を持っています。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「デカメロン」 1916年 油彩・カンヴァス
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中世風の装束の女性たちが庭で男性の語る物語を聴いています。
ボッカチョの「デカメロン」を題にしていますが、「デカメロン」の特定の場面を
想定している訳では無いそうです。


他にローレンス・アルマ=タデマ、フレデリック・レイトンなどの作品も展示されていて、
分かりやすく、見応えのある展覧会です。
会場の中のベンチのカバーもラファエル前派と関係の深いウィリアム・モリスの
デザインを使っていました。


2014年に三菱一号館美術館で開かれた、「ザ・ビューティフル―
英国の唯美主義1860-1900」展の記事
です。


2014年に森アーツセンターギャラリーで開かれた「ラファエル前派展 
英国ヴィクトリア朝の夢」の記事
です。


2012年に三菱一号館美術館で開かれた「バーン=ジョーンズ展―
装飾と象徴」の記事
です。


2011年に目黒区美術館で開かれた「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展の記事です。


展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」展です。
会期は2016年3月19日(土)から6月5日(日)までです。

国芳001


blogを始めて9年経ちました。
今年もまた多くの方に見ていただき、コメント、拍手なども
沢山いただき有難うございました。
非公開コメントの方には直接お礼申し上げられませんでしたが、
うれしく読ませていただきました。
2016年も多くの展覧会に出かけ、カフェなどにも立ち寄って、
記事を書きたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

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【2015/12/31 19:34】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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