「奥村土牛-画業ひとすじ100年のあゆみ-」展 広尾 山種美術館 千鳥ヶ淵の桜
恵比寿
chariot

山種美術館では、開館50周年記念特別展として、「奥村土牛-画業ひとすじ
100年のあゆみ-」展が開かれています。
期間は5月22日(日)までです。

奥村001


山種美術館の所蔵する作品を中心にした、奥村土牛(1889~1990、101歳没)の
初期から晩年にかけての長い画業をたどる展覧会で、約70点が展示されています。

奥村土牛は東京出身で、1905年に16歳で梶田半古の塾に入り、塾頭の小林古径の指導を
受けています。
その紹介で、1926年から速水御舟の研究会にも参加しています。
1927年の院展に初入選したのが38歳の時なので、確かに牛の歩みです。

土牛の号は父の付けたもので、漢詩の詩句、「土牛石田を耕す」から採られ、
土で作ったような脆い牛でも、たゆまずに耕していけば、やがて石ばかりの土地も
立派な水田になるという意味です。

「麻布南部坂」 1925年 個人蔵
奥村003

南部坂は港区に2つありますが、こちらは赤坂二丁目と六本木二丁目の
境にある坂で、石垣の右側は現在、米国大使館宿舎になっています。
奥に霊南坂教会の見える構図が面白くて描いたそうです。
岸田劉生の「道路と土手と塀」の影響がみられる作品です。

「胡瓜畑」 1927年 東京国立近代美術館
奥村002

4月17日(金)までの展示です。
院展初入選の作品で、等々力の胡瓜畑で写生を重ねています。
小さな胡瓜や花が細密に描かれ、竹の節も濃淡を使って表されています。

「雨趣」 1928年
前田001

麻布谷町(今の六本木1丁目)の雨の日の眺めです。
谷あいに並ぶ木造家屋の上に降る雨が、細かく一本一本描かれています。
厳密な写実を行なう速水御舟の影響でしょう。
院展では、ここまで雨を細かく描くことはないだろうと批評されています。

「兎」 1947年頃
ど003

奥村土牛らしい、耳を立ててきりりとした描きぶりですが、丸い姿に愛らしさがあります。
赤い芥子の花との取り合わせも効いています。

「舞妓」 1954年
奥村004

奥村土牛らしい簡潔な線と構図による、美人画とは違った、端正な姿です。
色数を抑えた上品な色遣いで、黒振袖の裾模様は、金泥で俵屋宗達風の鶴、
帯の模様も金泥の笹です。
口紅、かんざし、帯揚げの赤がアクセントになっています。
おちょぼ口と、やや上目遣いの目が表情を初々しく見せています。

「水蓮」 1955年
土牛4-3-2010_004

蓮と魚を描いた鉢に浮かぶ水蓮という取り合わせはユーモラスです。
水蓮の花弁の、濃淡を付けた彩色には味わいがあります。
奥村土牛の描く動物や草花には、対象への優しい眼差しを感じます。

「浄心」 1957年
中尊寺の一字金輪座像です。
秘仏ですが、特別に許可を得て、拝観と写生を繰り返しています。
仏画らしい、緊張感のある線描を使っていますが、その顔には生きた表情が
浮かんでいます。
この年に亡くなった、師の小林古径を想っての作で、自身の「心の奥にある仏像」を
描こうとしたとのことです。

「城」 1955年
山種005

線を使わず、対象を図形として捉え、画面を大胆に分割するという作風は、
姫路城を描いたこの作品に始まるといいます。
天守閣を下から見上げた構図ですが、画面の下側に大きく白壁の面を取り、
その上に屋根の構造物の重なりを黒く太い線で積み上げて描いています。
この作風を確立したのが普通の人間なら引退している60歳過ぎてから、
という気の長さにも驚きます。
セザンヌの影響を受けたということですが、たしかに華やかさを求めない、
量感のある、がっちりした構成はセザンヌに通じます。
奥村土牛は、小林古径が買ってくれたセザンヌの画集によりセザンヌ好きになり、
模写もしています。

「鳴門」 1959年
土牛4-3-2010_005

遠くの島影に黄土色が少し使われている他は、緑青の緑と胡粉の白のみで
構成されています。
塗りを何度も重ね、近景の動と遠景の静が一体となった、量感のある、
重厚な作品です。
塗り重ねによる堅牢な画面造りは、奥村土牛の特徴です。
連絡船に乗っていて、たまたま渦潮に出会い、当時の小さな船の上から、
奥さんに帯を掴んでもらって渦潮を覗き込んで写生したということです。

「茶室」 1963年
土牛4-3-2010_003

大徳寺真珠庵の茶室です。
「狭い空間に組立てられた直線の構成の美しさ」に感嘆して描かれた
とのことです。
四角形で区切った巧妙な構成で、窓の向こうの空間も見せて、
奥行きを感じさせます。
柱や壁は重ね塗りによって味わいを出し、障子に差す柔らかな光は
画面を明るくしています。
特に、右側の仕切り壁の古寂びた色合いは趣きがあります。

「鹿」 1968年
k010.jpg

簡潔な描写で、鹿の体のしなやかさと命の張りを捉えています。
奥村土牛らしい造形的な描き方です。

「朝市の女」 1969年
白いシャツ、藍の絣のもんぺ姿で笠を被った日焼けした若い女性が魚を並べて
売っています。
輪島の朝市での写生を基にした作品で、同じ色の衣装と笠を買って帰り、
三男の奥さんに着せて描いています。
魚は築地に奥さんと一緒に買いに行って、それを写したとのことです。
一見すると、地味な色彩の簡素な絵ですが、作品を仕上げるまでの努力は
大変なものであることが分かります。

「醍醐」 1972年
百003

奈良の薬師寺で行なわれた、小林古径の七回忌の法要の帰りに見た、
醍醐寺三宝院の枝垂桜に感激し、その後10年越しで完成させた作品です。
静かに咲いて静かに散る桜の姿と、亡き小林古径の姿を重ね合わせて
描いたとのことです。
幹と支柱の縦線、土塀の横線を基本にして、幹を真中に据え、画面上を
桜で埋め尽くし、土塀の連なりで奥行きを見せています。
花弁の重なりは濃く薄く描かれて、立体感があり、塗りを重ねた幹の色は
桜の経てきた年月を感じさせます。

「吉野」 1977年
冨士008

霞の中に広がる、花の吉野です。
緑から青へと変わる色彩と山の間の霞によって、遠近感を出しています。
手前から奥へと三角形を重ね、桜の木も三角形にした理知的な構成の画面ですが、
描いていて、「歴史画を描いているようで、目頭が熱くなった」とのことです。
歴史画を描かなかった奥村土牛ですが、戦前生まれの人だけに、南朝の歴史への思いは
深かったのでしょう。

「海」 1981年
92歳の作で、90歳以降では最大の作品です。
一面の青い海と、手前の茶色の岩場です。
輝きを出すため、プラチナ箔を貼った上に描いてあり、箔の四角形が浮いて見え、
装飾的な効果を出しています。
東京生まれながら海が好きだった奥村土牛は、「これ程思い出楽しく描いた絵は
ない」と言っています。

奥村土牛は、自分の作品について訊かれても、気に入った絵は一つも無いと
答えています。
「芸術には完成はない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである」とも
述べています。

前田青邨 「土牛君の像」 1927年 東京国立近代美術館
4月17日(金)までの展示です。
岩のような厳しい顔立ちをした奥村土牛という人物を、鋭い線描で描き出しています。


山種美術館では奥村土牛の作品はよく観る機会がありますが、今回は初期の作品も多く、
長い画業の全体を見渡せる、充実した展覧会です。

山種美術館のHPです。


次回の展覧会は開館50周年記念特別展、「Seed 山種美術館アワード2016」展です。
会期は5月31日(火)から6月26日(日)までです。


千鳥ヶ淵の桜です。

さ

さIMG_0008 - コピー


九段の靖国神社です。

さIMG_0013


こちらは東京大学病院横の講安寺の枝垂れ桜です。

さIMG_0017

関連記事
スポンサーサイト

【2016/04/02 19:38】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
  • こんばんは。
  • コメントありがとうございます。
    嬉しく拝見しました。
    奥村土牛は日本画家ですがセザンヌの影響を受けていて、近代的な感覚があります。
    何回も塗りを重ねた色彩には深みがあり、私の好きな画家です。

    【2016/04/03 20:06】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • いつも美しいブログを、楽しく拝見させていただいております。「奥村土牛」と言う画家を恥ずかしいですけれど知りませんでした。

    たおやかで優しい絵ですね、魅了されました。素敵な絵画展の様子をありがとうございました。

    【2016/04/03 11:37】 url[りりあん #-] [ 編集]
    please comment















    管理者にだけ表示を許可する

    trackback
    trackback url ↓
    http://nekoarena.blog31.fc2.com/tb.php/2955-1aaf43ce

    プロフィール

    chariot

    Author:chariot
    東京のビルの多い街で暮らしています。

    最近の記事

    最近のコメント

    最近のトラックバック

    カテゴリー

    ブログ内検索

    月別アーカイブ

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    RSSフィード


    | ホーム |