「生誕150年 黒田清輝展」 上野 東京国立博物館
上野
chariot

上野の東京国立博物館では、「生誕150年 黒田清輝展」が開かれています。
会期は5月15日(日)までです。

黒田001


明治の日本の洋画界を指導した黒田清輝(1866-1924)の生誕150年を記念し、
黒田の作品約200件の他、黒田に影響を与えたフランスの画家や、黒田と同時期の
画家の作品も展示された、回顧展です。

黒田清輝は1884年に法律を学ぶためフランスに渡りますが、山本芳翠らに奨められ、
自身が好きだったこともあり、画家に転向しています。

山本芳翠の「猛虎一声」(1895、東京藝術大学)も展示されています。

第1章 1884~1893 フランスで画家になる-画家修業の時代

黒田は外光派の画家、ラファエル・コランに師事します。
外光派とは従来のアカデミズムの中に印象派の明るさを取り入れた画家を指します。

ラファエル・コラン 「フロレアル(花月)」 1886年 オルセー美術館
黒田011

写実的で明るい画風ですが、印象派のように屋外で描いているのでは無く、
人物が背景から浮いている感じもします。

また、バルビゾン派、印象派やシャヴァンヌにも関心を示しています。

ジャン=フランソワ・ミレー 「羊飼いの少女」 1863年頃 
 フランス、 オルセー美術館(アラス美術館寄託)

黒田002

黒田清輝 「祈祷」 1889(明治22)年 東京国立博物館
黒田003

少女をバルビゾン派風に描いています。

クロード・モネ 「サンジェルマンの森の下草」 1882年 
 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)

黒田004

黒田清輝 「落葉」 1891(明治24)年 東京近代美術館
黒田005

日光を強調した、印象派のような明るい作品です。

ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」 
 油彩・鉛筆・カンヴァス 1875年頃 島根県立美術館

シ009

シ010

パリのパンテオンの装飾壁画の縮小版です。
聖ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人で、451年のフン族の攻撃から
パリを守ったとされています。

「読書」 1891(明治24)年 東京国立博物館
黒田001

フランス留学中の作品です。
黒田は1890年にグレー=シュル=ロワに移り住んでいます。
モデルは下宿先の肉屋の娘さんのマリア・ビヨーで、黒田とは親密な関係にあったそうです。
閉めた鎧戸からの逆光の中で描いていて、光の当たる女性の顔や首筋が輝いています。
服の色もマリア像のように赤と青でまとめ、西洋古典画も吸収したことを示しています。
この作品は師のラファエル・コランに賞賛され、サロンにも入選して、フランス画壇への
デビュー作となっています。

「マンドリンを持てる女」 1891(明治24)年 東京国立博物館
黒田002

「読書」と同じ頃にフランスで描かれた作品で、こちらはサロンでは落選しています。
このような感傷的な雰囲気の絵は弟分の藤島武二がよく描くことになります。

「婦人像(厨房)」 1892(明治25)年 東京藝術大学
美術009

こちらもマリア・ビヨーをモデルにしています。
色彩は明るいのですが、冬の情景なので、冷たい空気も感じます。
黒田は、「どこに出しても恥ずかしくない作品」と述べています。

「菊花と西洋婦人」 1892(明治25)年 個人蔵
黒田006

壷に活けた菊には量感と勢いがあり、色彩も華やかです。
横に描かれている女性はマリアと姉とのことです。


第2章 1893-1907 日本洋画の模索-白馬会の時代 

「舞妓」1893(明治26)年 東京国立博物館 重要文化財
黒田003

帰国後に最初に仕上げた作品で、初めて京都を訪れた時に描かれています。
モデルは舞妓の「小ゑん」で、女中は「まめどん」と呼ばれていたそうです。
青を基調にしていて、この作品も逆光を使い、鴨川に反射する光も取り入れています。
全体に印象の強い作品で、頬に光の当たった小ゑんの表情には張りがあり、
活き活きとしています。
速水御舟が1920年に描いた「京の舞妓」も出窓に腰掛ける舞妓という構図を使っています。
舞妓は日本画ではよく題材になりますが、日本画では外光を描くことはなく、
この絵のような量感はありません。

まめどんは半身が画面の枠で切れていますが、これは印象派の手法によるそうです。
もっとも印象派も広重などの浮世絵からこの手法を学んでいます。
黒田は1890年代はよく舞妓をモティーフにしたそうですが、東海道線の全線開通が1889年で、
神戸まで20時間以上かかったそうですから、京都に行くのも今ほど簡単ではない時代です。

「湖畔」1897(明治30)年 東京国立博物館 重要文化財
黒田005

後の夫人・照子と箱根に避暑に行った折、芦ノ湖畔にたたずむ照子の姿を見て、
制作を思い付いています。
萩を描いた団扇を手に湖を眺める照子は、鼻も高くしっかりとした面立ちをしています。
淡い色彩でまとめられ、同じ着物姿の女性でも、「舞妓」とはかなり異なった印象です。

「木かげ」1898(明治31)年 公益財団法人ウッドワン美術館
黒田007

逗子の旅館、養神亭に滞在中の作品で、モデルは柳屋の「つうちゃん」です。
「つうちゃん」グミの枝に手を伸ばし、横には白百合の花と麦藁帽子が置かれています。
日の光の中でグミの赤と白百合の白を対比させた、明るい、印象派風の作品ですが、
「つうちゃん」の姿勢が不安定なことが気になります。

「昔語り下絵(構図II)」 1896(明治29)年 東京国立博物館
黒田004

京都旅行の折、清閑寺の僧の語る平家物語の小督の哀話に感銘を受け、制作した作品です。
路傍で僧が語っているのは、源仲国が小督に聞かせようと笛を吹いている場面です。
悲恋の物語を聴く夫婦者か恋仲の二人、しゃがんで煙管を吹かす女、若い娘などが描かれ、
明治の風俗画ともなっています。
他にも多くの下絵が展示されていて、制作に多くの時間と労力をかけ、努力していたことが
分かります。
完成作は住友家の須磨別邸に飾られていましたが、残念なことに1945年の神戸大空襲で、
同じ黒田の「朝妝」とともに焼失しています。

黒田清輝は歴史や宗教、思想などを群像表現によって表す、いわゆる構想画を目指していて、
「昔語り」はその試みの一つです。
黒田自身は自分の構想画はまだ中途であると認識していたそうですが、東京美術学校で
教授の黒田に反発していた青木繁の「海の幸」などは黒田の構想画の流れを継いでい
るとも言えます。

「智・感・情」 1899(明治32)年 東京国立博物館 重要文化財
ヌ003

「智・感・情」のうち「情」
ヌ002

まだ芸術としての裸体に馴染みの無かった明治時代に、啓蒙のために描いた
作品とのことで、明治時代の日本人とは思えないような理想化された体型に
引き伸ばしてあります。
西洋の三美神を思わせる構成ですが、金地を背景にして輪郭線を使い、
体の外には影も無く、日本画の仏画に似ています。


第3章 1907~1924 日本洋画のアカデミズム形成-文展・帝展の時代

黒田は1896年の東京美術学校の西洋画科の新設時には教官となり、1907年に開設された
文展(現在の日展の前身)の審査委員を務め、1920年には帝室技芸員に選ばれ、
1920年には貴族院議員にもなるなど、美術界を指導する多忙な日々を送ることになります。

「野辺」 1907(明治40)年 ポーラ美術館
黒田008

師のラファエル・コラン風の清らかな雰囲気の作品です。

「鉄砲百合」 1909(明治42)年 石橋財団石橋美術館
黒田009

黒田は花の絵を好み、よく描いています。
黒田は本格的な絵画として「構想画」に取組んでいますが、自身が「スケッチ」と称した
このような絵の方が肩が凝らず、気楽に観ていられます。

「梅林」 1924(大正13)年 東京国立博物館
黒田010

絶筆で、前年に狭心症を発病して療養中に早春の庭を描いた作品です。
体力の衰えもあってか、粗く大まかな筆遣いですが、かえって迫力があります。


西洋絵画を日本に移植し、それを育てるという使命を担わされた黒田清輝は
裸体画に対する無理解に遭ったり、美術行政の立場に立たされたりと、
あれこれ大変だったことが分かります。
先駆者としての黒田の宿命なのでしょうが、画家としての個性を出し切る前に
力を使い果たして画業を終えてしまったようにも思えます。

展覧会のHPです。


東京国立博物館に隣接する黒田記念館は、黒田清輝の、遺産の一部を美術奨励事業に
充てるようにとの遺言により設立された施設で、1928年に竣工し、2015年にリニューアル
オープンしています。

くIMG_0143

くIMG_0147

黒田記念館のHPです。

関連記事

【2016/04/16 18:52】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
  • こんにちは
  • 「湖畔」は教科書で見慣れていますが、実物を見ると細かいところまで分かって、やはり良い絵だなと思います。
    いわゆる名画と言われて有名な絵はかえって先入観があるのが難しいところです。

    【2016/04/17 08:18】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • ええ画やー
  •  「サンジェルマンの森の下草」さすがはモネさん、ええ画やなぁ。「野辺」ええ娘さんや、惚れてまうやろがぁ。「湖畔」は、以前つちのこでおちょくってしまった記憶ががが。いや、良い絵の証拠ですよ、うん。

    【2016/04/16 23:27】 url[miss.key #eRuZ.D2c] [ 編集]
    please comment















    管理者にだけ表示を許可する

    trackback
    trackback url ↓
    http://nekoarena.blog31.fc2.com/tb.php/2967-49d0cc3d

    プロフィール

    chariot

    Author:chariot
    東京のビルの多い街で暮らしています。

    最近の記事

    最近のコメント

    最近のトラックバック

    カテゴリー

    ブログ内検索

    月別アーカイブ

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    RSSフィード


    | ホーム |