「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」展 上野 東京国立博物館
上野
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上野の東京国立博物館では特別展、「黄金のアフガニスタン-守りぬかれた
シルクロードの秘宝-」展が開かれています。
会期は6月19日(日)までです。

アフガニスタン001


会場の表慶館です。

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アフガニスタン国立博物館に収蔵されていた古代アフガニスタンの遺物は1979年の
ソ連軍侵攻とそれに続く内戦でほとんどが失われてしまったと思われていました。
ところが1989特に貴重な工芸品は博物館員たちにより大統領府にある中央銀行の
地下金庫に秘かに運び入れられ、2004年まで大切に保管されていたのでした。

「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」は、再開された
アフガニスタン国立博物館入口に置かれたメッセージです。

展覧会では、4つの遺跡から出土した貴重な文物の一部が展示されています。

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テペ・フロール遺跡

アフガニスタン北東部にある、紀元前2100~紀元前2000年頃の遺跡です。
ラピスラズリの産地に近く、メソポタミア文明とインダス文明をつなぐ地点で
あったと考えられています。

「幾何学文脚付杯」 金 紀元前2100~紀元前2000年頃
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幾何学模様の彫られたゴブレットで、脚の部分は失われています。


アイ・ハヌム遺跡

テペ・フロールの更に北、タジキスタンとの国境近くにある、前3世紀~前2世紀の
遺跡です。
アレクサンドロス大王の東征の後、建設されたギリシャ都市で、神殿、宮殿、体育場
、半円形劇場などを備えていました。

「キュベーレ女神円盤」 銀、鍍金 前3世紀
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2頭のライオンの挽くペルシャ風の戦車に乗っているのは、キュベーレ女神と
ギリシャの勝利の女神、ニケです。
空にはギリシャの太陽神、ヘリオスが噛んでいます。
キュベーレ女神はアナトリア(現在のトルコ)で信仰され、ギリシャ、ローマにも
伝わった、大地の女神です。
左右の人物は東洋風で、西と東の文化の混じり合ったヘレニズムを表しています。

ギリシャ語刻銘付石碑台座 石灰岩 前3世紀初め 
四角い台座で、ギリシャ文字が彫られています。
その中には、デルフォイの神殿の神託の一部もあります。

 幼きものは行儀よきものとなり
 青年とならば自制知るものとなり
 壮年とならば正義知るものとなり
 老年とならば良き助言者となれ
されば汝、悔いなき死を得ん
(前田耕作訳を参考) 

味わい深い処世訓で、孔子の言葉にも似ています。


ティリヤ・テペ遺跡

北部にある、紀元前1世紀~紀元後1世紀の遺跡で、地元のウズベク語で
「黄金の丘」という意味です。
ゾロアスター教の神殿だった場所に設けられた6基の墓に、女性6人、男性1人が
数多くの黄金の装飾品と共に埋葬されていました。
展示室ではそれぞれの墓の出土状況を表した図と共に展示されています。

「牡羊像」 金 1世紀第2四半期
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羊の一種、ムフロンの小さな像ですが、角の縞、目玉、毛並み、関節、蹄まで精巧に
表現されています。

「アフロディーテ飾板」 金、トルコ石 1世紀第2四半期
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ギリシャ神話の美の女神で、ローマ神話のヴィーナスに相当します。
姿はギリシャ風ですが、翼を持ち、腕輪をして、顔立ちもインド風で、額には
インド風の印もあります。
ガンダーラ仏の顔立ちがギリシャ風なのと逆の形です。
アフロディーテ飾板は2人の女性の墓から発見され、胸元に置かれていました。

「冠」 金、トルコ石 1世紀第2四半期
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女性の墓から出土した、木の葉を付けた樹木のような冠です。
頭を動かすとキラキラ輝いたことでしょう。
似たデザインの冠は朝鮮半島や奈良県の藤の木古墳からも出土しています。

「ドラゴン人物文ペンダント」 
 金、トルコ石、ラピスラズリ、ガーネット、カーネリアン、真珠 1世紀第2四半期

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金や宝石をふんだんに使った、豪華な装飾品です。
左右対称形で、遊牧民の服装をした人物が翼のある怪獣を掴んでいます。
人物の額にはインド風の印があります。

「インド・メダイヨン」 金 1世紀第2四半期
表にはライオン、裏には車輪を転がす人物が彫られています。
刻まれた文字から、仏教の広まり(転法輪)を表していることが分かります。
人物は仏陀を表した最古の姿かも知れないということです。
ティリヤ・テペでは仏教に関連する遺物はこれ1つのみです。


べグラム

カブールの北約70㎞にある、1~3世紀に中央アジアから北インドを支配した
クシャーン朝の夏の都です。
入口をレンガでふさいだ2つの部屋から、多数の工芸品が発見されました。

「マカラの上に立つ女性像」 象牙 1世紀
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高さ45㎝の象牙の彫刻で、インドの怪魚マカラの上に立つインド風の女性です。
べグラムでは数百点の象牙製品が出土しています。

「脚付彩絵杯」 ガラス 1世紀
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透明なガラスに鮮やかな色彩でギリシャ・ローマ風の男女が描かれています。
エナメルで絵付けをする技法はエジプトで始まり、地中海世界に広まっています。


アフガニスタン流出文化財

内戦などの混乱の中で略奪され、国外に流出した文物の一部は日本にも流入しています。
そこで、「流出文化財保護日本委員会」を設立し、寄贈を受けた文化財102点を
アフガニスタンに返還するということです。
展覧会ではそのうちの15件が出展されています。


現在では辺境の地と思われがちなアフガニスタンが、かつてはシルクロードの中継地として、
東西の文化が盛んに交流した場所であったことを示す、とても興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2016/05/17 19:55】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • アフガニスタンにこれだけ素晴らしい文化財があるとは、行ってみるまで知りませんでした。
    現状では難しいことですが、何とか早く平和になってほしいものです。

    【2016/05/17 23:34】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  •  こんなに素晴らしい文化材を持ちながら、日々争いに明け暮れるなんて、なんて勿体無い事でしょうね。むかしむかしはアフガニスタンて豊かな国だったんだと思うんですよね。それが今では禿山岩砂漠。人の心も荒れ放題。はるか彼方まで荒廃の原野。原因はアメリカやイギリス、ソ連にあるにしても、今を生きるのは彼ら本人なんだろうに。

    【2016/05/17 21:47】 url[miss.key #eRuZ.D2c] [ 編集]
    please comment















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