「原安三郎コレクション 広重ビビッド」展 六本木 サントリー美術館
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館では、「原安三郎コレクション 広重ビビッド」展が開かれています。
会期は6月12日(日)まで、休館日は火曜日です。

広重001


実業家の原安三郎(1884-1982)の蒐集した浮世絵コレクションのうち、歌川広重の
「六十余州名所図会」と「名所江戸百景」を全点、公開する展覧会です。
どちらも初刷り(しょずり)と呼ばれる早い版のもので、彫りも鋭く、色彩も鮮やかです。
作品の多くには、その場所の現在の写真も添えて展示されているので、現在とどれほど
同じか違うか見比べることが出来ます。

「六十余州名所図会」は広重晩年のシリーズで、北は陸奥松島から南は薩摩坊ノ浦まで
68か国、69枚を描いています。
「東海道五十三次」の横長の画面に対し、こちらは縦長の画面を用いています。
「東海道五十三次」とは違って、広重はすべての場所には行っておらず、
既存の絵などを参考にしたと思われます。
始まりは「山城 あらし山渡月橋」の桜、2枚目は「大和 立田山龍田川」の紅葉、
最後は「対馬 海岸夕晴」です。
江戸は賑やかな浅草市が選ばれています。

「六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波」
歌川広重 大判錦絵 安政2年(1855)

広重004

会場の最初に展示されています。
シリーズの中でも際立って躍動的な場面で、海の藍色に濃淡を付けて、
波のうねりを表しています。
波頭の構図は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」(1831年頃)を思わせます。

「六十余州名所図会 美作 山伏谷」
歌川広重 大判錦絵 嘉永6年(1853)

広重008

現在の美作(みまさか、岡山県北東部)の情景です。
激しく吹き付ける雨風を太い曲線で表していて、笠を飛ばされた人も見えます。


「名所江戸百景」は歌川広重最晩年の作品で、江戸各所の景色を118枚に
仕立てています。
こちらも画面は縦長で、高い所からの眺めや、極端な遠近法を用いた、
斬新な構図が特徴です。
広重は元々、定火消同心の安藤重右衛門だったので、火の見櫓からの景色を
見慣れていたのではないかとのことです。
安政2年(1855)に起きて、江戸に大きな被害を与えた安政江戸地震の直後の
刊行ですが、被災前の平和な江戸を描いています。

「名所江戸百景 日本橋雪晴」
歌川広重 大判錦絵 安政3年(1856)

広重002

シリーズの最初の絵です。
年の始めでしょうか、雪の降った後の日本橋を魚河岸の方から眺めています。
白雪をいただいた富士山や江戸城も見える、さわやかな景色です。
同じ場所を橋向こうの高札場から見た情景が有名な「東海道五十三次日本橋」です。
「東海道五十三次日本橋」にも火の見櫓が描き込まれています。

「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」
歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857)

広重011

亀戸梅屋舗は臥龍梅という梅の名所でした。
目の前に梅の木を置き、遠くにそぞろ歩きをする人たちを配した、極端な遠近法に
よる作品で、ゴッホがこの絵を模写しています。

「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857)

広重005

新大橋(大橋)を西側から見た図です。
川向こうに幕府の御船蔵があり、安宅船(戦艦)を収容していたので、「あたけ」の
地名が付いています。
びっしり並んだ細い線で雨を表し、あてなしぼかしという摺りの技法を使って、
むらむらとした雨雲を表現しています。
彫りや摺りの技術と一体になった作品です。
ゴッホはこの絵も模写しています。

「名所江戸百景 駒形堂吾妻橋」
歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857)

広重003

駒形堂は隅田川沿いにある、馬頭観音を祀ったお堂です。
平安時代の天慶5年(942)に平公雅によって建立され、現在も場所を変え
て建っています。
木目を活かして五月雨を表し、雲はあてなしぼかしを使っています。
右側に貯木場の材木、小間物屋の紅旗、左奥に吾妻橋が見えます。

 君はいま駒形あたりほととぎす  高尾太夫

「名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火」
歌川広重 大判錦絵 安政4年(1857)

広重007

シリーズ最後の絵です。
王子稲荷神社は東国三十三国稲荷総司とされ、落語の「王子の狐」でも有名です。
大晦日には関東各地の狐が榎の下に集まり、榎を跳び越える高さによって官位を定め、
装束を改めて元日に王子稲荷神社に参詣し、それが狐火となって見えるとされていました。
実景を描いた江戸百景の中では唯一、幻想的で珍しい作品です。


葛飾北斎の「千絵(ちえ)の海」シリーズ、全10点も展示されています。
大判の半分の大きさの中判を使って水辺の光景を描いていて、現存数の少ない、
珍しい作品です。
甲州の火振り漁(松明の火で鮎をおびき寄せる漁)、利根川の四つ手網漁、
登戸の潮干狩り、などがあります。
働く人々が描かれていることから原安三郎はこのシリーズを好んでいたそうです。

「千絵の海 五島鯨突」
葛飾北斎 中判錦絵 天保3年(1832)頃

広重010

長崎県の五島列島沖で行われた鯨漁で、小舟で鯨を取り囲んで銛を打ち込む、
勇壮な漁法です。


歌川国芳の作品も展示されています。

「近江の国の勇婦お兼」 
歌川国芳 天保2-3年(1831-32)頃

広重009

鎌倉時代、近江国海津宿の怪力の遊女お兼が暴れ馬の引き綱を
下駄で踏み付けて取り押さえている場面です。
国芳は輸入された銅版画などを通じて西洋画を研究していて、
馬の陰影の付け方などに西洋画の影響が見られます。


この展覧会は「六十余州名所図会」「名所江戸百景」「千絵の海」という、
すべて揃った3つの揃物(シリーズ)を一度に観られる貴重な機会で、
「広重ビビッド」の題名通り、初刷りの鮮やかさを堪能できます。

混雑が予想されるので、10時の開館と同時に入り、入口近くに留まらず、
奥の方の作品を先に観てしまうことをお奨めします。

展覧会のHPです。

サントリー美術館では2012年に、「広重・東海道五拾三次―保永堂版・隷書版を中心に―」展が
開かれていました。

「広重・東海道五拾三次」展の記事です。


次回の展覧会は、「オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ」展です。
会期は6月29日(水)から8月28日(日)までです。

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【2016/05/10 19:48】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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