「速水御舟の全貌-日本画の破壊と創造-」展 広尾 山種美術館
恵比寿
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広尾の山種美術館では開館50周年記念特別展、「速水御舟の全貌
-日本画の破壊と創造-」展が開かれています。
会期は12月4日(日)までです。

御舟9-17-2016_007


速水御舟(1894-1935)の初期から晩年まで、約80点の作品を展示する展覧会です。

「洛北修学院村」 1918年 滋賀県立近代美術館
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初期の作品で、移り住んだ修学院村の鄙びた風景を描いています。
ミレーのバルビゾン村の風景画になぞらえて、ひそかな記念として制作したそうで、
農家の庭先の人物まで細かく描かれています。
凝り性の速水御舟はこの頃、群青に凝っていて、画面は群青色に覆われています。

「京の舞妓」 1920年 東京国立博物館
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11月22日からの展示です。
絞り染めの模様や畳の目まで描き込むという、とても細密な描き方です。
有名な作品ですが、重苦しいほどの細密さのために、当時は大変不評だったそうです。

「鍋島の皿に柘榴」 1921年
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日本画とは思えない、油彩画のような質感と立体感があります。
速水御舟の凝り性の性格が表れているようです。
愛用の皿は、見えないはずの高台も見せて描いています。

「向日葵」 1922年 霊友会妙一コレクション
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花弁の筋や葉の虫食いも描き込まれ、立体感があります。

「百舌巣」 1925年 山種美術館
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モズの雛を描いていて、宋画の雰囲気があります。
速水御舟の作品はどれも緊張感と一種の凄味をもっていますが、
それは雛の姿にも表れています。

「炎舞」 1925年  山種美術館 重要文化財
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夜の焚き火に集まる蛾の群れです。
やがて炎に焼かれてしまう蛾の舞う、一瞬の時を捉えています。
揺らぎながら燃える炎は仏画の不動の火炎に倣っていますが、暗い背景との
境はぼかされています。
煙が渦を巻いて昇り、集まった蛾は円を描いて飛び、円の中心を飛ぶ蛾は
小さく、周りの蛾は大きく描かれています。
立体感と動きのある画面です。
御舟は、背景の色について、「もう一度描けといわれても二度とは出せない色」と
述べているそうです。

「朝鮮牛図」 1926年 山種美術館
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牛の絵は日本画の画題として多くの画家に取り上げられています。
この牛は盛り上がった肩と三角形のお尻が目を惹きます。
黄土色のかたまりの中で、くっきりと描かれた目が生き生きとしています。

「翠苔緑苔」 1928年 山種美術館
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四曲一双の金箔地の屏風で、右隻に枇杷と青桐、つつじです。
枇杷の木には、まだ青い実から熟れた実まで付いていて、木の下では
黒猫が振り向いています。
隣に展示されている、24番の小下図では、つつじの場所には朝顔の鉢が
3つ置かれ、黒猫と白猫の2匹になっています。

左隻には紫陽花と2匹の白兎です。
紫陽花は咲き始めから満開まで様々に咲いています。
白兎は、向こうに黒猫がいるのも知らずに、呑気に草をかじったり、
寝ころがったりしています。

全体に、右奥から左手前に広がり、右上から左下に下がっていく構図です。
琳派風の装飾性を極め、きっちりとまとまった、近代的な作品です。
御舟の言葉、「もし無名の作家が残ったとして、この絵だけは面白い絵だと
後世言ってくれるだろう」。

「名樹散椿」 1929年  山種美術館 重要文化財
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京都の地蔵院の五色八重散り椿を描いたものです。
花びらが一枚づつ散るという、珍しい椿です。

「翠苔緑芝」と同じく、琳派の装飾的な画面ですが、印象はやや違います。
右から左に下る構図で、椿の枝はねじれながら伸び広がっています。
紅、白、斑の花を付けた枝は重みで傾き、地面には花びらが散っています。
奥にある葉、手前の葉を一枚一枚描き分け、量感と立体感があります。
背景は「撒きつぶし」という、金砂子を竹筒に入れて撒いていく方法です。
金箔のような縦横の線が無く、同じ調子の金地がびっしりと広がっています。
しんと静まった画面で、有無を言わせぬ迫力と緊迫感があります。

「埃乃土人ノ灌漑」 1931年 山種美術館 
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小品で、1930年の欧州旅行の船旅の途中で見かけた、エジプトの情景です。
2つの跳ね釣瓶を使った水汲みの様子を描いています。
人物の姿は古代のエジプト絵画風で、1人は赤い腰巻に白い鉢巻、
1人は白い腰巻に赤白の鉢巻です。
左右対称の面白い構図で、烏が1羽、のんびり止まっています。
肩の力を抜いた、楽しい絵です。

「花の傍」 1932年 株式会社歌舞伎座
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ダリアを活けたテーブルの前で和装の女性が編み物をしています。
着物やテーブルクロス、椅子の縞の線がくっきりとした印象を与えています。
画面は斜めの線を基本に構成され、着物の袖や犬の足もその線に沿っていて、
統一感と立体感があります。
構図も色彩もモダンな、とても考え抜かれた作品で、速水御舟の研究熱心さが
偲ばれます。
犬がまっすぐこちらを見ていて、観る者の存在を意識させているのも面白いところです。
1920年の「京の舞妓」に比べると、かなり洗練されています。

「牡丹花(墨牡丹)」 1934年 山種美術館
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描線を使わず、墨のにじみによって花弁を描き出しています。

「あけぼの・春の宵のうち あけぼの」 1934年 山種美術館
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淡青色または白群青色の朝鮮色紙に描かれているそうです。
小品で、薄紅の空を背景に、真横に伸びた柳の枝が上に立ち上がり、
更に滝のように垂れ下がっています。
烏が枝に止まって、その空を見上げています。
春も浅いのでしょう、柳はまだ葉を付けていません。

「あけぼの・春の宵のうち 春の宵」 1934年 山種美術館
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淡紅色の朝鮮色紙に描かれているそうです。
薄墨色の夜のなかで、斜めに伸びた満開の桜の枝から、はらはらと
花が散っています。
三日月に照らされた桜は、盛りの最後の時の妖しさを湛え、
白く浮かんでいます。


速水御舟は「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を
持つ者は更に貴い」と語り、日本画を近代絵画にしようと、さまざまの試みを行なっていましたが、
40歳という若さで亡くなっています。
もし寿命に恵まれていたらどのような作品を遺しただろうかとおもうと、惜しまれてなりません。

山種美術館のHPです。


次回の展覧会は開館50周年記念特別展、山種コレクション名品選III、「日本画の教科書 
京都編-栖鳳、松園から平八郎、竹橋へ-」展です。
会期は12月10日(土)から2017年2月5日(日)までです。

教科書11-11-2016_001

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【2016/11/22 19:32】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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