「オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき」 ブロガー内覧会 三菱一号館美術館
東京
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丸の内の三菱一号館美術館で2月9日に開かれた、青い日記帳×「オルセーのナビ派展
美の預言者たち ―ささやきとざわめき」ブロガー特別内覧会に行ってきました。
展覧会の会期は5月21日(日)までです。

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展覧会では油彩など約60点と素描約10点が展示されています。
写真は特別の許可を得て撮影しています。

「弐代目・青い日記帳」主催のTakさん(左)がモデレーターで、先ず高橋明也館長(右)の解説を
伺いました。

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高橋館長によれば、この展覧会は、ナビ派の研究家である、オルセー美術館のギ・コジュヴァル館長の
総監修によるもので、現在のオルセー美術館のナビ派コレクションの多くはコジュヴァル館長が
蒐集したそうです。
ナビ派は最近注目されるようになったグループで、フランスでもコジュヴァル館長が尽力するまでは
目立たない存在で、日本でもナビ派の展覧会は今回が初めてということです。
従来の西洋画の立体性を否定し、平面性を強調し、光沢の無い画面を好んだナビ派の絵画は
日本人好みとも言えるとのことです。


ポール・セリュジエ 「護符(タリスマン)、愛の森を流れるアヴェン川」 1888年
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ナビ派のきっかけはポール・セリュジエ(1864-1927)が、ブルターニュ半島の
ポン=タヴェンに滞在していたゴーギャンの指導で1枚の風景画を描いたことです。
ゴーギャンは、写実的な色彩ではなく、使いたい色彩を自由に使うことを奨め、
この助言に従って、描いたのがこの「護符(タリスマン)」です。
アカデミ―・ジュリアンの学生監だったセリュジエの持ち帰ったこの作品に触発されて、
モーリス・ドニ、ボナール、ヴュイヤール、ポール・ランソンたちによって結成された
絵画グループがナビ派です。
ナビとはヘブライ語で預言者の意味で、作品の題名はナビ派の護符という意味を
持たせたものです。
小品ですが、自然とは異なる色彩の色面を並べ、平面的で、半抽象画といった感じです。
写実から離れるので、ナビ派は象徴的で、装飾的な傾向が強くなります。

左 ポール・ゴーギャン 「扇のある静物」 1889年頃
右 エミール・ベルナール 「炻器瓶とりんご」 1887年

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ポン=タヴェンでゴーギャンとエミール・ベルナール(1868 -1941)は知り合い、
太い輪郭線と平面的な色遣いを用いるクロワニズムと、その技法により
象徴的な主題を描くという、総合主義を打ち出しています。

ポール・セリュジエ 「にわか雨」 1893年
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ブルターニュのユエルゴアの町を描いています。
広重の「東海道五拾三次」の「蒲原 夜之雪」を思わせる風情です。
ナビ派は浮世絵の影響を強く受けています。

モーリス・ドニ 「ミューズたち」 1893年
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ナビ派の理論家、モーリス・ドニ(1870-1943)の作品です。
木立の中を6人のミューズ(ギリシャ神話の女神)が散策し、手前には
3人のミューズが座っています。
手前の2人のモデルは最初の妻となるマルトです。
ミューズは9人姉妹の筈ですが、画面真ん中奥に10人目の女性が小さく描かれています。
高さ約170cmの大作で、秋を思わせる茶系の色にまとめられ、平面的で装飾的、
落葉の散った地面も絨毯のようです。

ドニは絵画について、「ある一定の秩序で集められた色彩によっておおわれた
平坦な面」という、有名な言葉を遺しています。
この言葉はそのまま抽象画にも当てはまります。

モーリス・ドニ 「鳩のいる屏風」 1896年頃
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「愛と純潔の賛美」をテーマにしているとのことで、花が咲き乱れ、鳩が噴水の水を
飲んでいます。
フェンスの折れ具合は屏風の折れ目に合わせてあり、屏風の特性を考えてあります。
ドニは生前この屏風を公開せず、アトリエに置いてたそうです。

左 ヨージェフ・リップル=ローナイ 「花を持つ女性」 1891年
右 モーリス・ドニ 「婚約者マルト」 1891年
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「花を持つ女性」はパステル画で、日本画のようなあっさりした趣きがあります。
ヨージェフ・リップル=ローナイ(1861-1927)はハンガリー出身で、ナビ派に加わっています。
「婚約者マルト」もパステル画で、マルトの若い顔立ちを描いています。 

左 モーリス・ドニ 「窓辺の母子像」 1899年
右 モーリス・ドニ 「メルリオ一家」 1897年
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家族思いだったドニをはじめ、ナビ派の画家は子どもをよく描いています。
アンドレ・メルリオは批評家で、ドニがナビ派の人たちを描いた「セザンヌ礼賛」にも
描かれています。

ピエール・ボナール 「格子柄のブラウス」 1892年
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2010年に国立新美術館で開かれた、『オルセー美術館展「ポスト印象派」』に
出展された時のチラシの画像です。
ピエール・ボナール(1867-1947)は、日本美術の影響を受けているナビ派の中でも
取り分けそれが強く、「日本的なナビ」と呼ばれたそうです。
服の格子柄が平面的に描かれ、浮世絵などの影響が分かります。

アリスティード・マイヨール 「女性の横顔」 1896年頃
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アリスティード・マイヨール(1861-1944)は彫刻家として有名ですが、視力が弱って
彫刻に転向するまでは画家として活動していました。
大きく空間を開けた、デザイン的で斬新な図柄です。
展示されているマイヨールはこの1点のみですが、興味深い作品です。

左 ポール・セリュジエ 「ナビに扮したポール・ランソン」 1890年
右 ポール・ランソン 「水浴」 1906年頃
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ポール・ランソン(1864-1909)はアカデミー・ジュリアンで学び、ナビ派に参加しています。
ナビ派のメンバーはよくランソンのアトリエに集っていたということです。
「水浴」という画題は、古典絵画に拠っていますが、食虫植物や真っ赤な葉の植物が見え、
水紋は乱れ、幻想的な情景で、アンリ・ルソーの「蛇使いの女」(1907)とも似ています。

左 ケル=グザヴィエ・ルーセル 「人生の季節」 1892-95年
右 ケル=グザヴィエ・ルーセル 「テラス」 1892年頃

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静かで象徴的な作品です。
ケル=グザヴィエ・ルーセル(1867〜1944)はエドゥアール・ヴュイヤールとは
アカデミ―・ジュリアンの同窓で、後にヴュイヤールの姉と結婚しています。

エドゥアール・ヴュイヤール 「八角形の自画像」 1890年頃
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エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)は室内の情景を好んで描き、
自らアンティミスト(親密派)と名乗っています。
この作品は色遣いが大胆で、色面も単純化されています。

左 エドゥアール・ヴュイヤール 「ベッドにて」 1891年
右 ジョルジュ・ラコンプ 「イシス」 1895年
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「ベッドにて」は極端に単純化された画面で、色の数も少なく、かえって印象の強い作品です。
眠りというものに意味があるようで、十字架の一部も描き込まれていて、即物的な写実とは
違うものがあります。
「イシス」はエジプト神話の豊穣の女神で、原木の形を残したマホガニーに彫られ、
一部彩色もされています。
ジョルジュ・ラコンプ(1868-1916)はアカデミ―・ジュリアンに学び、ナビ派に参加し、
「彫刻家のナビ」と呼ばれています。

エドゥアール・ヴュイヤール 「エッセル家旧蔵の昼食」 1899年頃
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赤ちゃんをあやす姉のマリー、それを見つめる母、新聞を読むマリーの夫が並んでいます。
ヴュイヤールのよく描く家族の情景ですが、夫婦が離れて描かれているのは二人の間に
緊張した関係があったからだそうです。
壁紙やテーブルクロスの表現はとりわけ装飾的です。

エドゥアール・ヴュイヤール 「公園」 1894年
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品の良い明るい色調の、影の無い平面的な画面で、壁画に合った描き方です。
それぞれの画面が独立していながら、全体で一続きになっているところは、
屏風絵の技法に似ています。

ナビ派は、その装飾的で平面的な画風から、壁画を多く手掛けています。

ピエール・ボナール 「庭の女性たち」 
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チラシの画像です。
左から、白い水玉模様の服を着た女性(1890-91年)、猫と座る女性(1890-91年)、
ショルダー・ケープを着た女性(1890-91年)、格子柄の服を着た女性(1890-91年)という
題の付いたシリーズです。
高さ約160㎝、カンヴァスに貼った紙にデトランプ(テンペラ)で描かれています。
紙を使うことで、絵具の吸収を良くして、画面のツヤを消しています。
掛軸のような縦長の画面は極めて平面的、装飾的で、浮世絵などの影響が分かります。

モーリス・ドニ 「プシュケの物語」 1907年
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ロシアの実業家で美術品の収集家だったイヴァン・モロゾフのモスクワの邸宅を飾る
壁画の習作です。
ギリシャ神話の女性を題材にしていて、北のロシアとはまるで違う明るい地中海世界を
輝く色彩で表しています。
ロシアでは10年後の1917年にロシア革命が起きて、モロゾフのコレクションも
革命政府に没収されてしまいます。

フェリックス・ヴァロットン 「ボール」 1899年
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チラシの画像です。
女の子が赤いボールを追いかけて、日なたに飛び出してきた一瞬を捉えています。
向こう側では、二人の女性が立ち話をしていて、女の子との間に間には不思議な
距離感があります。
光と影、動と静の対照が鮮やかで、写真のような感覚があり、女の子の帽子と白い服、
濃い影が印象的です。
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)はスイス出身で、アカデミー・ジュリアンに学び、
ナビ派にも加入しています。

左 フェリックス・ヴァロットン 「自画像」 1897年
右 フェリックス・ヴァロットン 「アレクサンドル・ナタンソンの肖像」 1899年
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アレクサンドル・ナタンソンは、ナビ派をよく取り上げた芸術雑誌、「ラ・ルヴュ・ブランシュ」の
創刊者の一人です。
この作品は2005年にオルセー美術館が所蔵するまで、ナタンソン家が所蔵していたそうです。
ナタンソン家はユダヤ系ということですが、フランスがナチスドイツに占領された時代に
財産没収に遭わなかったのでしょうか。

左 フェリックス・ヴァロットン 「髪を整える女性」 1900年
右 フェリックス・ヴァロットン 「室内、戸棚を探る青い服の女性」 1903年
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ヴァロットンの作品はどこか醒めたところのある、不思議な雰囲気を持っています。
右の絵は後ろ向き女性を後ろから描いるところはハンマースホイに似ていますが、
ハンマースホイの静かさとは違います。

右 フェリックス・ヴァロットン 「化粧台の前のミシア」 1898年
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ミシアは「ラ・ルヴュ・ブランシュ」の主宰者タデ・ナタンソンの妻ミシアで、彼女の文芸サロンには
ロートレックも出入りし、ミシアをモデルにした表紙絵も描いています。


ナビ派のメンバーのそれぞれの個性も分かり、日本絵画との親和性も面白く、充実した展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「レオナルド×ミケランジェロ展」です。
会期は6月17日(土)から9月24日(日)までです。

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