「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性」 白金台 東京都庭園美術館
目黒・白金台
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白金台の東京都庭園美術館では、「並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性」が
開かれています。
会期は4月9日(日)までです。

庭IMG_0479 - コピー

並河0


七宝焼きは金属の地の上に釉薬を置き、高温で焼き付ける技法で、日本では明治時代に
高度な技術による作品が制作され、盛んに輸出されています。
展覧会では当時の七宝を代表する並河靖之(1845-1927)の作品、約90点や下図が展示されています。

並河靖之は川越藩松平家家臣の子で京都に生まれ、明治になって七宝制作を始めます。

「鳳凰紋食籠」 明治6年 並河靖之七宝記念館
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並河靖之の七宝の初作です。
泥七宝と呼ばれる、濁りのある釉薬を使う古来の技法に拠っています。

やがて、技量を高め、作品は海外の万国博覧会でも評判となり、海外に盛んに輸出され、
京都の自宅には多くの外国人観光客が訪れるようになります。
工房では多くの職人を雇って、分業で作品を制作しています。
当時輸出品の乏しかった日本では工芸品輸出は貴重な外貨獲得手段の一つで、
宮川香山の真葛焼とも事情が似ています。

並河靖之の技法は色の境目に金属線を置く有線七宝で、くっきりとした輪郭線が特徴です。

「鳳凰草花図飾壺」 明治中期 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
「花蝶文飾壺(一対)」 明治中期 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

並河3

釉薬に茶金石を使う技法による作品で、茶色の部分は光を受けてきらめいています。
並河靖之の作品の9割は輸出されたので、現在も国内にはあまり残っていません。

「菊紋付蝶松唐草模様花瓶(一対)」 明治中期 総本山泉涌寺
並河4

漆黒の地にびっしりと松唐草や蝶を並べています。
並河靖之は漆黒で艶やかな黒色透明釉を生み出し、作品の特徴となっています。

並河靖之は工芸作家となる前に一時、久邇宮朝彦親王に仕えていたこともあり、
作品はよく皇室に買い上げられ、外国の賓客への贈答品や国内の下賜品として
使われています。
展覧会の開かれている庭園美術館も朝彦親王の八男、朝香宮鳩彦王の邸宅だった所です。
泉涌寺は江戸時代の歴代天皇の陵墓があり、皇室と関係の深い寺院なので
この花瓶を下賜されたのでしょうか。

「花鳥図飾壺」 明治後期 清水三年坂記念館
並河0_1

やがて、様式的な図柄だったのが、地の空間を活かした絵画的なものに変わります。
この作品も後ろの方はかなり空間を開け、景色に余情を持たせています。

右「菊唐草文細首小花瓶」 明治中期 並河靖之七宝記念館
左「桜牡丹菊蝶文細首小花瓶」 明治後期 並河靖之七宝記念館

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高さ10㎝ほどの小さな瓶です。
右の様式的な模様にくらべ、左が絵画的になっているのが分かります。

「藤草花文花瓶」 明治後期 並河靖之七宝記念館
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紫がかった黒の地に紫と白の藤の花が長く垂れた、装飾的な図柄です。

並河2

拡大すると、仕切りの線がはっきり見えます。

「菊御紋章藤文大花瓶」 明治後期-大正時代 並河靖之七宝記念館
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深く鮮やかな紺色の地に真っ直ぐ垂れた藤の花を描いています。
「藤草花文花瓶」に比べ、より絵画的で、葉の色の濃淡まで描き分け、
菊の御紋も月のように見えます。

晩年になると、絵画化はさらに進み、近江八景を題材にした作品などは風景画のようで、
仕切りの線も見えなくなっています。
従来の過度な装飾性が飽きられてきたことが、作風を変化させたと思われます。
宮川香山の真葛焼が細密な高浮彫からすっきりとした釉下彩へ技法を変えたのとも、
事情は似ています。

作風を変化させて対応しますが、高価な七宝焼きの需要はやがて衰えてきたので、
大正12年(1923)に工房の閉鎖を決めています。
その後は山科に自宅を構え、庭に大きな池を作り、たくさんの鯉を飼って、
晩年を過ごしたそうです。

一代で栄え、幕を閉じた並河靖之の七宝の技を存分に味わえる展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2017/03/02 19:40】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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