「生誕140年 吉田博展 山と水の風景」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
新宿
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新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館では、「生誕140年 吉田博展 山と水の風景」が
開かれています。
会期は8月27日(日)までです。

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吉田博(1876‐1950)は福岡県久留米市出身の洋画家で、欧米を中心に海外渡航を重ね、
山岳などの風景を水彩、油彩、木版により多数制作しています。
太平洋画会の設立者の一人であり、海外での人気の高い画家となっています。
展覧会では約200点の作品が展示されますが、7月30日までの前期と8月1日からの後期で、
かなりの展示替があります。

吉田博は旧久留米藩士の子として久留米市に生まれ、絵の才能を見込まれて、
小山正太郎の画塾、不同舎に入っています。
塾では「絵の鬼」と呼ばれるほど修練を重ねていたということです。
不同舎には同じ久留米藩士の子、青木繁と坂本繁二郎も入っています。

「冬木立」 明治27‐32年(1894‐99) 水彩、紙 横浜美術館
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ていねいな写実で、奥行きのある画面になっています。

1899年に中川八郎とともに渡米し、水彩画が思わぬ高い評価を受け、
展覧会で多額の売却益を得て、ヨーロッパ各国も巡っています。
吉田博の海外との関係はこの時に始まっています。

明治35年(1902)には満谷国四郎(1874-1936)らと太平洋画会(現在の太平洋美術会)を
設立しています。
太平洋画会は明治美術会の後進となる団体で、外光派の白馬会に対抗する勢力となります。
明治美術会は日本最初の洋画の美術団体ですが、新しく黒田清輝らの設立した
白馬会との比較で、旧派と呼ばれ、勢いを失っています。
したがって吉田は黒田清輝と仲が悪く、喧嘩をして黒田を殴ったという逸話もあるそうです。

「ヴェニスの運河」 明治39年(1906) 油彩、カンバス 個人蔵
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吉田博は油彩も手掛けています。
2度目の海外渡航による作品で、夏目漱石の「三四郎」にも、この絵と思われる作品の
展示された展覧会に行く三四郎と美穪子の場面が書かれています。

「穂高山」 大正期 油彩、カンバス 個人蔵
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吉田博は山岳を好んで描いていますが、写実を重視し、必ず現場に行って写生をしています。
光の推移、雲の動きなど、実際に見た者でしか描けない迫真性があります。

「雲海に入る日」 大正11年(1922) 油彩、カンバス 個人蔵
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雲海より上の場所からの眺めで、高山を登らないと得られない光景です。

吉田博は大正9年(1920)に新版画の版元、渡辺庄三郎と出会い、木版画を
手掛けるようになります。
新版画とは明治以降の新しい感覚の版画のことで、渡辺庄三郎は伊東深水や
川瀬巴水の原画による木版画を売り出しています。
吉田博は伊東深水や川瀬巴水の作品も飽き足らなく思っていたということで、
より精緻な木版画を追及します。
作品によっては90回も刷りを重ねるという、手間をかけた綿密な制作方法により、
微妙な色調の変化まで表現しています。

「日本アルプス十二題 劔山の朝」 大正15年(1926) 木版、紙 個人蔵
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劔山とは北アルプスの剱岳のことです。
朝日が山頂を照らし出す瞬間を捉えていて、実際に見た感動を描いています。

「瀬戸内海集 帆船 朝」 大正15年(1926) 木版、紙 個人蔵
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吉田博は同じ版木で色を変える、別刷という技法を始めています。
朝日の昇る時間を描いていて、同じ版木で昼と夕方もつくっています。
モネが「積みわら」や「ルーアン大聖堂」の連作で時間の推移を描いたのと似ています。

「渓流」 昭和3年(1928) 木版、紙 千葉市美術館
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水の流れが見事に表現されています。
自ら版木を彫った力作で、歯を食いしばって作業したため、歯を傷めてしまったそうです。

「印度と東南アジア フワテプールシクリ」 昭和6年(1931) 木版、紙 個人蔵
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フワテプールシクリ(ファテープル・シークリー)はインドのムガール帝国時代の都市です。
モスクと思われる建物の中の人物を逆光の中に浮かび上がらせています。
明るい中庭、床の照り返しなど、光の表現が巧みで、異国情緒を醸し出しています。

吉田博の作品は綿密な写実と情感が一体となっていて、親しみやすさがあります。
常に、世界の中での日本版画を意識していたということで、

戦時中に描いた、油彩の戦争画も展示されています。
爆撃や空中戦を上空からの視点で描いていて、自身が飛行機に乗って見た光景を
基にしていると思われます。
川端龍子や小磯良平の戦争画にも、上空から地上を見た景色の新鮮さに触発されたと
思われる作品があります。

戦争が終わると、海外で評判の高かった吉田博の家には進駐軍の関係者が
多く集まったということです。
現在でも海外での人気は高く、居室のダイアナ妃を撮った写真にも壁に飾った
吉田博の作品が映っています。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「生誕120年 東郷青児展 抒情と美のひみつ」です。
会期は9月16日(土)から11月12日(日)までです。

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【2017/07/25 19:36】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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