「素心伝心 ―クローン文化財 失われた刻の再生」 東京藝術大学大学美術館
上野
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上野の東京藝術大学大学美術館では『シルクロード特別企画展 「素心伝心
―クローン文化財 失われた刻の再生」が開かれています。
会期は10月26日(木)までです。

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クローン文化財とは東京藝術大学の開発した、芸術と科学技術の融合による
高度な複製技術によって複製された文化財のことで、保存と公開を両立させる
ことを可能にしています。

展覧会では、シルクロード伝いに花開いた仏教文化による仏像、壁画などを
復元、展示しています。
並河萬里の撮影した、シルクロードの遺跡の写真も併せて展示されています。
展覧会名の「素心伝心」とは、人が生まれながら持っている濁りなき心(仏性)が
シルクロードを通って伝わって行くという意味でしょうか。

会場は並河萬里の写真以外は撮影可能です。


法隆寺金堂

最初の展示は、復元された法隆寺金堂の釈迦三尊像と外陣壁画です。
室内には良い香りが漂い、法隆寺の僧による読経の声が流れています。
プロジェクターで写されているのは法華経で、大きな音を立てると、
しばらく文字が溶けるように消えます。

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釈迦三尊は三次元計測を行なって3Dプリンターで型を作り、銅器生産の盛んな
高岡で鋳造し、表面を磨き、彩色しています。
両脇侍はそれぞれの天衣の長さが左右で異なり、長い方が外側になる方が
バランスが良いことから、現状と左右を入れ替えて配置してあります。
また、釈迦像には白毫と一部欠けていた螺髪を付け、大光背の縁に小孔が
開いていることから、当初は飛天が付いていたと考えられるので、
今回は飛天を加えています。

外陣壁画は1949年に模写作業中の失火により失われてしまいましたが、
写真を基に1967年から安田靫彦、前田青邨、橋本明治、吉岡堅二を中心
14名の日本画家によって復元模写が行なわれ、68年に完成しています。

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北朝鮮・高句麗古墳群江西大墓

玄室内部の花崗岩に描かれた四神図の復元です。
高句麗最末期の古墳で、それ以前の時代には描かれていた星座や
人物像は省かれ、四神図のみという、シンプルな形になっているそうです。

2006年の現地調査で得られた色情報と質感情報を基に、模写や写真資料を用いて
玄室ごと復元しています。

東 青龍
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西 白虎
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南 朱雀 2頭のうち、右側
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北 玄武
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中国・敦煌莫高窟第57窟

現在は非公開となっている第57窟の再現です。
印刷された画像を砂、粘土、藁、敦煌の土を混ぜて塗り付けた壁面に貼り付け、
顔料で彩色しています。
本来は6体ありますが、主に清時代の修復がみられるため、今回は中央の
釈迦如来像と一番手前の菩薩像の2体を当初の形に推定復元しています。
釈迦如来像は敦煌研究院美術研究所、菩薩像は東京藝術大学が模造し、
それを計測して3D切削機で成形し、彩色しています。
莫高窟は東に向いており、朝日の入る時、石窟の中は輝いていたと思われます。

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南壁面
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麗しいお顔の菩薩像は金色の冠や瓔珞(首飾り)を着けています。

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参考 莫高窟第57窟西壁仏龕
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中国・新疆ウイグル自治区キジル石窟第212窟

タリム盆地の北側にあった亀茲国は仏教国で、キジル石窟(キジル石窟寺院)を
残しています。
石窟にあった壁画の多くはドイツ探検隊によって剥ぎ取られ、持ち去られましたが、
一部は第2次世界大戦のベルリン空襲で失われてしまいました。
航海者窟と呼ばれる第212窟の側壁にも2つの壁画がありましたが、マイトラカニヤカ・
アヴァダーナという名の壁画は持ち去られ、ベルリンで失われています。
残された資料を基に、この壁画と、石窟に残った壁画、シュローナコーティカルナ・
アヴァダーナが復元されています。

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マイトラカニヤカ・アヴァダーナ
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シュローナコーティカルナ・アヴァダーナ
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マイトラカニヤカ・アヴァダーナのお話は以下の通りです。
マイトラカニヤカは航海に出たいと思い、止める母親を振り切って家を出ます。
海で嵐に遭って難破し、マイトラカニヤカだけが助かります。
やがて4人の美女のいる城に辿り着いて歓待され、そこを出ると8人の美女のいる城、
さらに16人、32人の美女のいる城に迎えられます。
それも過ぎると、今度は鉄の門があり、入ってみると男がいて、回転する鉄の車輪が
男の頭を斬り続けています。
驚いて訳を訊くと、男は過去に母親に暴力を振るったため、このような罰を受けている
のだということです。
マイトラカニヤカも家を出ようとして母親を邪険に扱っていたので、今度は車輪が
マイトラカニヤカの頭に移り、次の人物がやって来るまで回り続けるというお話です。
これは、以前に母親に孝行した善行への報いとして美女が与えられ、母を捨てた
悪行には鉄の車輪が与えられ、善悪は相殺されないという、上座部仏教の思想による
因縁話だそうです。

海で難破し、船もバラバラになっています。
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痩せこけた男が鉄の車輪の罰を受け、その車輪が右のマイトラカニヤカに
移っています。
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タジキスタン・ペンジケント遺跡
タジキスタン国立古代博物館の所蔵する、発掘区VI 広間1壁画の「ハープを奏でる
女性像」と「戦闘図」の再現です。
ペンジケントはタジキスタンの西端にあり、ウズベキスタンのサマルカンドに近く、
5世紀から8世紀にかけてソグド人の都市がありました。
ソグド人はシルクロードを往来したイラン系の商業民族で、唐の玄宗皇帝の時に
反乱を起こした安禄山もソグド人です。

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ミャンマー・バガン遺跡

ミャンマーのバガン遺跡は11~13世紀に栄えたバガン王朝の遺跡で、壁画や天井画の
多くは保存のため、公開が難しくなっています。
そこで、12世紀に描かれたミンカバー・グビャウクジー寺院の再現壁画が制作されました。
舞踊の様子などが描かれ、当時の文化水準の高さを示しています。

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アフガニスタン・バーミヤン東⼤仏天井壁画

バーミヤンの東大仏の天井部分に描かれていた壁画、「天翔る太陽神」は2001年に
タリバンによって東大仏とともに爆破されています。
その壁画を、写真資料を基に原寸大で和紙に印刷し、実物と同じ形に再現された
天井に貼り、岩絵具で彩色して復元しています。

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槍を持ち、光背を負った太陽神を中心に、風神、翼を持つ飛天、4頭の馬の牽く
馬車などが描かれ、アフガニスタン特産のラピスラズリの青が空間を埋めています。
太陽神はギリシャの太陽神ヘリオス、イランのミスラなどの影響を受けているそうです。

壁の側面には僧に導かれた大仏の寄進者も描かれています。

大仏の制作はバーミヤンに始まっており、巨像を制作するというギリシャ文化の
影響ではないかということで、バーミヤンが東西文化の合流する場所だったことを
示しています。

展示室の壁には大仏の頭の位置から見たバーミヤンの雄大な景色の動画が
映されています。

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遠く白雪をいただいたヒンドゥークシュの峰々の上を雲が流れて行き、室内には
甘い香りが漂い、千住明さん作曲の音楽が流れています。
失われた大仏はこの風景を眺めておられたのかと思うと、ある種特別な感情が
湧いてきます。


文化財は戦争や紛争、事故、環境変化などによって失われてしまいがちですが、
このようなクローン文化財を制作する技術が大変貴重であることがよく分かります。

実物大の復元というのは、実際に見ると実に見事で、まるで自分が遠く敦煌莫高窟や
バーミヤンにいるような気持になります。
音楽と香りに包まれた浄土の世界に浸っていると、濁世に戻りたくなくなります。
仏教文化やシルクロードに興味のある方には特にお薦めする展覧会です。

法隆寺釈迦三尊の脇侍の顔に自分の顔を映し出す装置もあります。
アルカイックスマイルを浮かべられてみてはいかがでしょうか。

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展覧会のHPです。


次回の特別展は、東京藝術大学創立130周年記念特別展、「皇室の彩(いろどり) 
百年前の文化プロジェクト」です。
会期は10月28日(土)から11月26日(日)までです。

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【2017/09/26 19:56】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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