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「プーシキン美術館展──旅するフランス風景画」 東京都美術館
上野
chariot

東京都美術館では「プーシキン美術館展──旅するフランス風景画」が開かれています。
会期は7月8日(日)までです。

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ロシアのプーシキン美術館の所蔵する17世紀から20世紀の風景画を中心に、
65点が展示されています。

プーシキン美術館は1912年に「モスクワ大学附属アレクサンドル3世美術館」
として開館し、ロシア革命を機に、「モスクワ美術館」となり、さらに1937年に
アレクサンドル・プーシキンの没後100年を記念して今の名前になりました。
特に近代フランス絵画のコレクションで知られています。

第1章 近代風景画の源流

クロード・ロラン 「エウロペの掠奪」 1655年
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エウロペはギリシャ神話に登場する人物で、白い雄牛に変身したゼウスに
誘拐されています。
まだ風景画が絵画のジャンルとして確立していなかった時代なので、
神話をテーマにしていますが、描きたかったのは海辺の風景で、
海は波立ち、遠くの山や海の向こうの島は淡く霞んでいます。

ユベール・ロベール 「水に囲まれた神殿」 1780年代
プーシキンimg322 (9)

ユベール・ロベール(1733-1808)はフランスの風景画家で、荒廃した古代神殿や
モニュメントのある風景をよく描いて、「廃墟のロベール」と呼ばれました。

ユベール・ロベールはルーヴル宮殿内にアトリエと住居を与えられ、王室の絵画
コレクションの管理にも当たっていましたが、1789年に始まったフランス革命に
巻き込まれ、1793年から94年まで投獄されています。
自分が牢獄から解放された時を思い出したような、籠の小鳥が解放される場面を
描いた、「ついに開いた牢屋から(春の祭日)」(1794)も展示されています。

2012年に国立西洋美術館で開かれた、「ユベール・ロベール-時間の庭-」展の記事です。


第2章 自然への賛美

ジュール・コワニエ/ジャック・レイモン・ブラスカサット 
「牛のいる風景」 19世紀前半

プーシキンimg322 (3)

ジュール・コワニエ(1798-1860)は風景画に優れ、この作品では動物画の得意な
ジャック・レイモン・ブラスカサット(1804 – 1867)と共同制作しています。
クロード・ロランがよく人物を他の画家に描いてもらっていたのと似ています。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「夕暮れ」 1860-70年
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夕日を背にした木々がシルエットのように浮かび、小さく人物も見えて、
コロ―独特の詩情あふれる情景です。

ギュスターヴ・クールベ 「山の小屋」 1874年頃
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ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)は1870年のパリ・コミューンの蜂起に
参加した罪に問われ、1873年にスイスに亡命し、同地で亡くなっています。
そこで描かれた作品で、白雪をいただいたアルプスを背にした民家の煙突からは
煙が上がり、洗濯物が干してあります。
がっちりとした、存在感のある光景です。

第3章 大都市パリの風景画

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰」 1876年
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ムーラン・ド・ラ・ギャレットはモンマルトルのダンスホールで、ルノワールの大作、
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」でも有名です。
木漏れ日の中の語らいの場面で、描かれている女性は、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの
舞踏会」にも描かれていたジャンヌとエステルでしょうか。

ジャン=フランソワ・ラファエリ 「サン=ミシェル大通り」 1890年代
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エドモンロスタン広場からスフロ通りを見た眺めで、奥にあるのはパンテオンです。
ジャン=フランソワ・ラファエリ(1850-1924)はドガの推薦で第5回と第6回の印象派展に
出品していますが、作風が写実的なため、印象派展の趣旨に合わないとして
モネはこれに反対し、ドガと仲違いしています。
たしかに印象派の画風とは違いますが、色調も落着き、雰囲気のある作品です。

アルベール・マルケ 「パリのサン=ミシェル橋」 1908年頃
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サン=ミシェル橋はシテ島に掛かる橋の一つで、マルケは1908年から11年まで
同じ部屋からこの橋を描いていたそうです。
同じ場所の冬景色を描いた作品も展示されています。


第4章 パリ近郊―身近な自然へのまなざし

クロード・モネ 「草上の昼食」 1866年
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130㎝×181㎝の作品で、モネが1865-66年に描いた、縦4m以上もある大作を
基にしています。
パリ南東のシャイイ・アン・ビエールで描いていて、友人たちをモデルにしている
とのことで、手前の足の長い男性はバジールでしょうか。
マネの「草上の昼食」に触発された作品で、まだ印象派の画風ではありませんが、
明るい木漏れ日を強調し、女性のドレスや敷いた布の白色も際立っています。
木の幹にハート形の落書きが彫られているのも面白いところです。
大作の方は、家賃が払えなかったモネが代わりに大家に渡してしまい、
後に買い戻した時は損傷が激しく、一部を切り離しています。

(参考)
クロード・モネ  「草上の昼食」  1865-66年
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この作品は2014年に国立新美術館で開かれた、「オルセー美術館展 印象派の誕生
―描くことの自由―」に展示されていました。

クロード・モネ 「陽だまりのライラック」 1872-73年
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パリ郊外のアルジャントゥイユに居た時の作品で、第1回印象派展の開かれた
1874年の直前にあたります。
妻のカミーユと長男の乳母が木陰で憩っているところですが、木漏れ日も
ぽつぽつとした筆遣いで花が散っているように描かれ、印象派の手法が
始まっています。

クロード・モネ 「白い睡蓮」 1899年
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モネは1883年にジヴェルニーに移り、1893年には池のある土地を購入して、
太鼓橋を作ったりしています。
その庭を題材にした初期の作品で、太鼓橋と睡蓮を白を基調にして描いています。

アンリ・マティス 「ブーローニュの森」 1902年
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ブーローニュの森はパリ中心の西側にある森です。
マティスがフォーヴィズムを始める前の作品ですが、力強い筆遣いです。


第5章 南へ—新たな光と風景

ポール・セザンヌ 「サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め」 1882-85年
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パリに出て印象派展にも出展していたセザンヌはやがて故郷の南仏
エクス=アン=プロヴァンスに戻り、サント=ヴィクトワール山を何度も描いています。
色面分割が明快です

ポール・セザンヌ 「サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め」 1905-06年
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1906年に亡くなったセザンヌの最晩年の作で、青、緑、オレンジの色彩が溶け合っています。

ピエール・ボナール 「夏、ダンス」 1912年
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この展覧会で一番印象に残った作品です。
縦202㎝、横254㎝の大作で、庭で踊る子どもたちと、後に妻となるマルトが
描かれています。
ボナールは1912年に、尊敬するモネの居るジヴェルニーの隣のヴェルノンに
転居しています。
そこでの景色でしょうか、画面全体が温かく柔らかな色彩に包まれています。

アンドレ・ドラン 「港に並ぶヨット」 1905年
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ドランは1905年にマティスと共に南仏のコリウールを訪れ、港の絵を描いています。
思い切り赤や青を強調した色遣いで、ヨットの帆の白が水面に映えています。
この年、パリのサロンドートンヌでマティスやドランたちの作品が展示され、
フォーヴィズム(野獣派)という言葉が生まれています。


第6章 海を渡って/想像の世界

アンリ・ルソー 「馬を襲うジャガー」 1910年
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アンリ・ルソー(1844 - 1910)の亡くなった年の作品で、南国の生い茂る草木の中で、
ジャガーが白馬に飛びかかり、白馬も負けじとジャガーに喰い付いています。
怖ろしい光景のはずですが、不思議で幻想的な雰囲気があります。
ルソーには南国に行った経験は無く、植物園での写生を基に想像で描いていたそうです。


風景画を中心にして、フランスの17世紀からバルビゾン派、印象派、ポスト印象派、
フォーヴィズムなど、満遍なく作品が揃い、充実した展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2018/05/08 19:50】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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