「ルーヴル美術館展 肖像芸術——人は人をどう表現してきたか」 国立新美術館
乃木坂
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国立新美術館では「ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか」が
開かれています。
会期は9月3日(月)までで、火曜日は休館日です。

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古代エジプトから19世紀まで、絵画、彫刻、工芸品など、肖像を表した作品、
約130点が展示されています。

プロローグ:マスクー肖像の起源

「棺に由来するマスク」 エジプト出土 
新王国時代、第18王朝、アメンヘテプ3世の治世(前1391-前1353)

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棺の蓋に取り付けるマスクで、目は白と黒の石、目の周りと眉は青いガラスを
嵌めています。
被葬者の生前の面影を写すのではなく、来世での理想の顔を表しているそうです。
アイシャドーは虫除けのために古代エジプトで始まったとされていて、このマスクでも
目の印象が格段に強まっています。


第1章 記憶のための肖像

墓誌としての肖像が多く展示されています。

「女性の頭部」 シリア、パルミラ出土 150-250年
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交易都市のパルミラでローマの支配時代の地下墓所にあった肖像彫刻です。
石灰石に彫られていて、ある程度量産され、葬儀屋や彫刻家の店頭で
売られていたそうです。
髪飾りなど、細かく表現されていて、元は彩色されていたらしく、瞳に青色が
かすかに残っています。

「ボスコレアーレの至宝 エンブレマの杯」 
 イタリア、ボスコレアーレ出土 35-40年頃

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直径24㎝の銀製の杯で、樽に詰められ埋められていた、109点の銀器の一つです。
男性の胸像が打ち出されていて、同時に出土した、女性を打ち出した杯とセットに
なっていて、所有者か祖先の夫婦を表した像と考えられるということです。
ポンペイを破滅させた79年のヴェスヴィオ山の噴火の際、ボスコレアーレにあって
埋没した邸宅から出土していて、火山灰におおわれる直前に埋められたようです。

「ブルボン侯爵夫人、次いでブーローニュ伯およびオーベルニュ伯夫人
ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム」 オーベルニュ地方 1510-1530年頃

ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム(1465-1511)はフランス王アンリ2世の王妃、
カトリーヌ・ド・メディシスの母方の祖母で、夫の死去により3度の結婚をしています。
ほぼ等身大の石の立像ですが、頬は削げ落ち、胸には蛆虫が湧き、お腹からは
腸が露出しています。
文字通りメメント・モリ(死を思え)を表していて、凄味があります。


第2章 権力者の顔

ローマ皇帝やフランス王、ナポレオンなどの肖像です。

「アレクサンドロス大王の肖像、通称「アザラのヘルメス柱」」 
 イタリア、ティヴォリ出土 2世紀前半
 
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古代ギリシャの彫刻家、リュシッポスの原作(前330年頃)の頭部を基にイタリアで
ヘルメス柱として制作された像で、大王の特徴の逆立った髪を表しています。
ヘルメス柱(ヘルマ)とはヘルメスなどの胸像などを乗せた角柱で、境界石などとして
使われていました。

セーヴル磁器製作所 「(ルイ=シモン・ボワゾに基づく)フランス王妃 
マリー=アントワネットの胸像」 1782年

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素焼(ビスキュイ)の磁器で、当時の流行の盛大に盛上げた髪型も忠実に表しています。
セーヴル磁器製作所はフランスを代表する磁器製作所で、1759年には王立製作所と
なっています。
マリー=アントワネットはフランス革命のため、1793年に断頭台で処刑されました。

2012年にそごう美術館で開かれた、「マリー・アントワネット物語展」の記事です。「」

アントワーヌ=ジャン・グロ 「アルコレ橋のボナパルト
(1796年11月17日)」 1796年

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ナポレオン・ボナパルトがフランス革命戦争の時、北イタリアでの
神聖ローマ帝国軍との戦いの一場面です。
27歳の将軍のナポレオンが自ら軍旗を掲げ、部下を率いて橋を渡ったという
逸話を基にしています。
ナポレオンはモデルとしてじっとしているのを嫌ったということですが、
決然と振り向く姿をうまく捉えています。
アントワーヌ=ジャン・グロ(1771-1835)は、「ナポレオンの戴冠式」を描いた
ジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)の弟子で、ナポレオンの活躍を描いた
画家として有名です。

クロード・ラメ 「戴冠式の正装のナポレオン1世」 1813年
高さ2m以上の大理石像で、ナポレオンはフランス王室ゆかりの豪華な衣装を着け、
古代ローマ風の月桂冠を被っています。
ローブにはナポレオンの紋章であるミツバチも彫り出してあります。
皇帝としての権威を示すため、リュクサンブール宮殿に置かれていたということで、
大きな立体像だけに迫力があります。

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「フランス王子、オルレアン公
フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアンの肖像」 1842年

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オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン(1810-1842)はフランス最後の王、
ルイ・フィリップの長男ですが、馬車の事故のため32歳で亡くなっています。
軍服姿のオルレアン公を、きっちりと端正な筆遣いで描いています。
ドミニク・アングル(1780-1867)はダヴィッドの弟子で、新古典主義を代表する画家と
なっています。


第3章 コードとモード

肖像画の表現にはその人の身分や状況などを表すコード(規則、約束事)がありました。
それでも、描かれる人が王侯貴族ばかりでなく、ブルジョワから一般庶民にまで
広がるようになると、そこに当時のモード(流行)も取り入れられていきます。

ヴェロネーゼ 「女性の肖像、通称「美しきナーニ」」 1560年頃
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豪華な衣装を身に着けた女性ですが、モデルが誰なのかは不明とのことです。
胸に手を置いている仕草は夫への忠実を表すので、夫人としての肖像かもしれない
とのことです。
パオロ・ヴェロネーゼ(1528-88)はルネサンス後期のヴェネツィアを代表する画家で、
艶やかな色彩が特徴です。

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 「ヴィーナスとキューピッド」 1657年頃
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明暗の対比を強調した、レンブラントらしい作品で、ギリシャローマ神話を
題材にしていますが、モデルは妻のヘンドリッキエと娘のコルネリアです。
当時のオランダ風俗を写した、母子像になっています。

フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 「第2代メングラーナ男爵、
ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネスの肖像」 1791年

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2歳8か月の時の肖像で、ピンクの帯を締め、光輪を背にした何とも可愛らしい姿です。
第2代メングラーナ男爵は後にナポレオンに対するスペイン独立戦争を戦っており、
ゴヤもこの戦争を題材にした銅版画集、「戦争の惨禍」を出しています。
この作品は後にロックフェラー2世やイヴ・サンローランとピエール・ベルジェが
所有した後、ルーヴル美術館に寄贈されています。

エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン
「エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像」 1796年

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モデルはロシア貴族の夫人で、未亡人でした。
ヴィジェ・ル・ブランは夫人の愛らしい顔立ちとともに、あまり知的ではなかったと
言われる性格まで、巧みに描き出しています。
エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン(1755-1842)はマリー・アントワネットの
お抱え画家としてフランス宮廷で活躍し、フランス革命が起きるとイタリア、オーストリア、
ロシアで亡命生活を送り、各国で高い評価を得て、作品を遺しています。
ヴィジェ・ル・ブラン自身も美人だったようで、彼女をモデルにした、オーギュスタン・
パジュー作のテラコッタ製胸像も展示されています。

2011年に三菱一号館美術館で開かれた、「マリー=アントワネットの画家 
ヴィジェ・ルブラン展」の記事
です。

フランツ・クサファー・メッサーシュミット 「性格表現の頭像」 1771-1783年の間
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鉛と錫の合金で、作者自身をモデルにして、さまざまな表情を表現した連作の一つで、
18世紀とは思えない、近代的な自我の表現です。
フランツ・クサファー・メッサーシュミット(1736〜1783)は南ドイツ出身で、ウィーンで
活躍していましたが、精神を病んだことをきっかけに、このような自己に向き合う
作品を手掛けるようになります。

フランスの画家(?) 「肖像、通称「フュズリェ爺さん」」 19世紀初頭
金モールの付いた黒い制服の老人を描いていますが、作者は不明で、モデルも守衛か
何かではないかと言われています。
全くの無名の人物を描いている訳ですが、その表情には、作ったところの無い、
生の人間が現れています。


エピローグ:アルチンボルドー肖像の遊びと変容

ジュゼッペ・アルチンボルド 「春」 1573年ジュゼッペ・アルチンボルド 《春》 1573年
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ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593)はイタリアのミラノ出身の画家で、
ティントレット やヴェロネーゼと同時期の人です。
ウィーンに出て、神聖ローマ皇帝、フェルディナント1世、マクシミリアン2世、
ルドルフ2世の3代に仕え、野菜や動物、器具などを使って人の顔を描く、
いわゆるだまし絵の作者として活躍しています。
四季の連作にはいくつかのヴァージョンがあり、2017年に国立西洋美術館で
開かれてた「アルチンボルド展」では、別のヴァージョンが展示されていました。

「アルチンボルド展」の記事です。

多彩な作品により、肖像というものの性格を考えさせられる、興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2018/06/02 19:21】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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