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「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」 渋谷区松濤美術館
渋谷
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渋谷区松濤美術館では特別展、「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」が開かれています。
会期は2019年1月31日(火)までです。

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西洋美術でよく描かれてきた「廃墟」について特集した展示です。

シャルル・コルネリス・ド・ホーホ 「廃墟の風景と人物」
 17世紀 油彩、板 東京富士美術館

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小さな作品で、廃墟の前に2人の人物が佇んでいます。
シャルル・コルネリス・ド・ホーホ(1590頃―1638)はオランダの画家で、
廃墟画で名を成しますが、経歴はほとんど分かっていないそうです。

18~19世紀の西洋では廃墟趣味が興ります。
これはポンペイやヘルクラネウムの発掘により古代への興味が増したこと、
イギリスの貴族の子弟がヨーロッパ旅行を行なうグランド・ツアーが盛んになり、
土産として廃墟を描いた絵画の需要が高まったことなどによるそうです。
繁栄も長くは続かないという、諫めの意味も込めてあります。
建築版のメメント・モリ(死を想え)ということでしょうか。

アシル=エトナ・ミシャロン 「廃墟となった墓を見つめる羊飼い」 
1816年 ペン、水彩、紙 静岡県立美術館

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理想郷の風景の中で、壊れた墓石を2人の羊飼いが眺めています。
ニコラ・プッサンの「アルカディアの牧人たち」(1638―1640)も同じようなテーマを
描いています。
アシル=エトナ・ミシャロン(1796-1822)はパリ生まれで、ローマ賞を受賞して
イタリアに留学しています。
コロ―の師ともなっていますが、25歳で早世しています。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「「ローマの景観」より:通称ミネルヴァ・メディカ神殿」 
1764年頃 エッチング、エングレーヴィング 国立西洋美術館

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ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720-1778)はイタリアの版画家、建築家で、
ローマの景観を描いた版画で有名です.。
ピラネージは廃墟画の需要に応えて、1747年頃から生涯にわたって「ローマの景観」の
制作を続けています。

ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」 
 1763年 ペン、水彩、紙 ヤマザキマザック美術館

パンフレットに使われている作品です。
想像上の風景で、列柱に支えられた天井は抜け、空が見えており、奥の方に
パンテオンが見えます。
ユベール・ロベール(1733-1808)はフランスの風景画家で、荒廃した古代神殿や
モニュメントのある風景を描いて、「廃墟のロベール」と呼ばれました


20世紀のシュルレアリスムにも古代の廃墟が登場します。
以前の廃墟趣味には古代への憧憬があるのに対し、シュルレアリスムでは
非現実的な情景として使われています。

ポール・デルヴオー 「水のニンフ」(セイレン)」 
  1937年 油彩・カンヴァス 姫路市立美術館

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ポール・デルヴオー(1897-1994)はベルギーのシュルレアリスムの画家で、
ギリシャ神殿のような建物などを背景にした女性像をよく描いています。

ポール・デルヴォー 「海は近い」 1965年  油彩・カンヴァス 姫路市立美術館
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月明りの下のギリシャ神殿には裸の女性が横たわる、幻想的な情景です。


日本の建築は木造なので、廃墟の形で残ることは無く、廃墟趣味や廃墟画は
ありませんでしたが、明治になり西洋の絵画を学ぶようになると廃墟が
題材になることを知ります。

藤島武二 「ポンペイの廃墟」  1908年頃 油彩、板 茨城県近代美術館
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藤島武二(1867-1943)は1905年から4年間、フランス、イタリアに留学しています。
小さな作品で、その折に描かれています。

澤部清五郎 「群羊図(伊太利アッシジ附近)」
 19316年 コンテ、膠彩、絹布、軸装 星野画廊

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丘の上のロッカ・マッジョーレ(大城塞)を描いています。
掛軸で、近景、中景、遠景が揃っていますが、洋画の技法も入っています。
澤部清五郎(1884-1964)は西陣生まれで、日本画と洋画を学び、
後に川島織物の下絵も描いています。

榑松正利 「夢」 1940年 油彩、カンヴァス 練馬区立美術館
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榑松正利(くれまつまさとし、1916-2008)が東京美術学校を卒業した年の作品です。
太平洋戦争開戦の前年の作品で、時代を反映してか、不穏な雰囲気があります。

不染鉄 「廃船」 1969年頃 紙本着色 京都国立近代美術館
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民家の並ぶ向こうに鋼鉄製の廃船が置かれていて、民家の一角には炎も上がっています。
不染鉄にしては珍しい、異様な雰囲気の作品で、太平洋戦争で沈められた多くの船舶の
記憶によるものではないかとも言われています。

大岩オスカール 「動物園」 1997年 油彩、カンヴァス 東京都現代美術館寄託
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大岩オスカールさん(1965-)はサンパウロ生まれの日系ニ世で、1991年から
東京で活動し、2002年からはニューヨークで活動しています。
大きな作品で、再開発される都市の情景に発想を得ており、これは北千住の
空き地の景色が基になっているそうです。

元田久治 「Indication: Shibuya Center Town」 2005年 リトグラフ 作家蔵
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元田久治さん(1973-)は現代の都市が廃墟となって朽ちていく様を細密な描法で
描いています。

現代の日本の廃墟画は都市の再開発や戦災、自然災害の記憶を背景にしているようで、
現実感と切実さがあり、心に響きます。


人気のある展覧会で、かなりの来館者がありました。

展覧会のHPです。

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【2018/12/25 20:06】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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