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私の「伊勢物語展」
伊勢物語
chariot

私の観た、「伊勢物語」を描いた絵画作品を集めてみました。
「伊勢物語」は平安時代初期の歌物語で、藤原定家本によれば全125段あり、
「昔、男ありけり」で始まる章が多くあります。
作者は不明ですが、主人公のモデルの一人は在原業平(825-880)とされていて、
多くは恋物語です。

第1段 初冠

「伊勢物語」 巻第1 住吉如慶 江戸時代 17世紀 東京国立博物館蔵
春日009

伊勢物語の第1段、「初冠(ういこうぶり)」の場面です。
奈良の春日の里に狩に出かけた男が美しい姉妹を垣間見し、狩衣の裾を切り
歌を書き付けて送ります。

  春日野のわかむらさきのすりごろもしのぶの乱れかぎりしられず


第9段 東下りより八橋

「伊勢物語八橋図」 尾形光琳 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵
 光008

三河の国の八橋というところで、かきつばたの咲いているのを見て、在原業平とされる
人物が「か き つ ば た」を詠み込んだ和歌を詠じている場面です。

  から衣 着つつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

食事の膳を前に置いた男たちの眺めているのは、咲き乱れるかきつばたの群れでしょう。
八橋の橋板も見えます。


第9段 東下りより蔦の細道

「蔦の細道図屏風」 伝俵屋宗達筆・烏丸光広賛 
6曲1双 江戸時代 17世紀 相国寺 重要文化財

燕子花003

左隻
燕子花004

右隻
燕子花005

伊勢物語の駿河の宇津ノ谷峠の場面です。
蔦の茂る細道で在原業平が知り合いの修行者に出会い、都に残した女への手紙を
言づてます。

  駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢わぬなりけり

人物は描かず、金箔地を緑色の土坡で区切り、濃淡を付けた蔦の葉をあしらっています。
デザイン感覚にあふれた画面構成です。


第9段 東下りより蔦の細道

「蔦の細道図屏風」 六曲一隻 深江蘆舟筆 江戸時代・18世紀 クリーブランド美術館
ク003

男が東下りの途中、宇津の山で知り合いの修行者に出会い、都に残した女に送る歌を
託するというお話です。
笈を背負った修行者の姿も見えます。

  駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢わぬなりけり

深江蘆舟(1699-1757)は尾形光琳に師事したとされる、琳派の画家です。


第12段 武蔵野   第23段 筒井筒より河内越

「伊勢物語図 武蔵野・河内越」 尾形光琳 江戸時代前期 MOA美術館
原img001 (4)

左の「武蔵野」は伊勢物語の、男が女を盗み出して武蔵野に逃げていくお話です。
男女が草むらで語り合い、手前では松明を手に追手が迫っています。

  むさし野はけふはなやきそ若草のつまもこもれりわれもこもれり


第14段 くたかけ

「伊勢物語 くたかけ図」 岩佐又兵衛 
 江戸時代・17世紀 出光美術館 重要美術品

源001

十四段で、陸奥の女の許に通った男が朝早く帰るので、女がそれを鶏のせいだと
思っている場面です。

  夜も明けば きつにはめなで くたかけの まだきに鳴きて せなをやりつる

  夜が明けないうちから鶏が鳴くものだから、男が帰って行ってしまう。
  この鶏のやつ、水桶に突っ込んでやる。

男が見上げる屋根の上では、鶏が自分の運命も知らずに勝ち誇ったように
鬨の声を上げています。
情景は細い線でていねいに描かれ、男の直衣も品の良い色合いです。
薄く刷いた墨の色が夜明け前の暗さを示し、柳に風も吹いて、物語より叙情的な
雰囲気になっています。


第14段 くたかけ   第23段 筒井筒より河内越

「伊勢物語」 速水御舟 双幅 1917年 ニューオータニ美術館

初期の作品で、遠景、近景を上手くあしらい、屋根の描き方などは琳派風です。

大谷5 大谷4

なお、ニューオータニ美術館は現在、閉館しています。


第23段 筒井筒

「雪月花」 上村松園 昭和12年(1937) 宮内庁三の丸尚蔵館
皇10-8-2009_003

貞明皇后(大正天皇の皇后)の用命を受けてから完成まで21年かかった作品です。
「雪」「月」「花」を題材にした三幅対です。

「花」は、伊勢物語の「筒井筒井筒にかけしまろがたけ」に因んで、
幼馴染の遊ぶ、あどけない情景です。

古典009

  筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
  くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき


第23段 筒井筒より河内越

松岡映丘  「河内越」 昭和3年(1928) 山種美術館

りん005

中村岳陵、荻生天泉、吉村忠夫、松岡映丘、川﨑小虎、尾上柴舟による
伊勢物語の合作の一部です。
男が河内にいる別の女の許に通うのを、女が送り出してから歌を詠んでいます。
 
 風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとりこゆらん

物陰に隠れてそれを聞いた男は愛しく思って、河内に行くのを止めた
というお話です。
竜田山は大和と河内の間にある山で、紅葉の名所です。
楓、萩、女郎花、桔梗の描かれた庭に秋の風が吹いています。


第23段 筒井筒より河内越

神坂雪佳 「伊勢物語図扇面(河内越)」 大正後期 細見美術館
神009

伊勢物語の一節で、男が河内にいる別の女の許に通うのを、女が平然として
送り出すので男は不審に思って、物陰に隠れて女の様子をうかがっています。
女は男を送り出してから歌を詠みます。

 風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとりこゆらん

それを聞いた男は愛しく思って、河内に行くのを止めてしまいました。


第23段 筒井筒より高安の女

「扇面散屏風」 俵屋宗達 江戸時代・17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館
皇室11-19-2009_002

絵の描かれた扇面が、八曲一双の金屏風に並んでいます。
題材は平治物語や伊勢物語で、「六波羅合戦絵巻」の場面も使われています。
左下は筒井筒の段で、女が自分でご飯をよそっているのを、
男が見て幻滅しています。
俵屋宗達に始まる琳派はよく古典を下敷きにした作品を描いています。


第23段 筒井筒

「伊勢物語絵巻 巻二」 絵・住吉如慶 詞・愛宕通福(あたごみちとみ) 
 江戸時代・17世紀 東京国立博物館


徳川4代将軍家綱の正室高厳院の御遺物として津軽家に伝来した品です。
住吉如慶(1599-1670)は住吉派の祖で、幕府の御用を多く勤めています。

筒井筒の場面
東0599

  筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに

河内越の場面
東0601

  風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとりこゆらん

高安の女の場面
東0603


第88段 月をもめでじ

「在原業平図」 岩佐又兵衛 江戸時代 17世紀 出光美術館 重要美術品
書img435 (4)

部分
書img435 (5)

書は烏丸光広(1579-1638)と推定されます。

もう若くはない男たちが集まって月を見ていた時、その中の一人が詠った歌。

 大方は月をもめてしこれそこの
 つもれは人の老いとなるもの

もういい加減、月を愛でるのは止めよう。
それが積もって、老いとなってしまうから。


第120段 筑摩の祭

「鍋冠祭図押絵貼図屏風」 久隅守景 二曲一隻 個人蔵
久隅011

滋賀県米原市の筑摩神社の鍋冠祭では、情を交わした男の数の鍋を被って
お詣りする風習がありました。
5つも鍋を被った美女と1つも被っていない女性を対比させて描いた、
何とも可笑しな絵です。

 近江なる筑摩の祭りとくせなむ つれなき人の鍋の数見む

筑摩神社の祭を早くやってほしい。
私にはつれないあなたが参詣したら、鍋の数を数えて、何人の男がいたのか
見てみたいものだ。
                             

こうやって集めてみると、第9段、東下りと第23段、筒井筒が画題として特に好まれてきた
ことが分かります。
記事をつくりながら、みやびで長閑な平安の世界を味わいました。

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【2020/05/15 20:03】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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