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私の「英一蝶展」
英一蝶
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今まで観た、私の好きな江戸時代の絵師、英一蝶の絵を集めて、私の「英一蝶展」を
開いてみました。

英一蝶(はなぶさ いっちょう)(1652~1724)は、伊勢亀山藩の藩医の子で、
江戸詰めとなった一家は江戸に移っています。
絵の才能を認められ、藩主の命で一時、狩野派に入門しています。
その後は町絵師として活躍し、俳諧も好み、松尾芭蕉や宝井其角と交流しています。

作風は軽妙洒脱で、古典のパロディーや風俗画、さらに仏画も手掛ける幅の広さです。


英一蝶は徳川綱吉の元禄時代に、伊豆の三宅島に12年も島流しにされたことがあります。
理由は、現在でも分かっていません。
当時の風紀の乱れに対する幕府の対策の一つとして、吉原でも人気者で、大名たちとも
賑やかに遊んでいた一蝶が目を付けられたのかもしれないとのことです。

「徒然草・御室法師図」 英一蝶 江戸時代 17世紀後半 個人蔵
つ005

徒然草の第53段、仁和寺の法師が宴会の座興にふざけて鼎(かなえ)をかぶったら、
抜けなくなったというお話です。
すっぽり鼎をかぶった羽織姿が体を支えてもらいながら、医師に脈を診てもらっていて、
横では小僧さんが薬研で薬を作っています。
医師には「かかることは文にも見えず、伝へたる教へもなし」と、匙を投げられ、
結局皆で力任せに鼎を引き抜いて、命は助かっています。
本人には一大事でしょうが、見ていて笑えてしまう場面です。

「朝暾曳馬図(ちょうとんえいばず)」 英一蝶 静嘉堂文庫美術館
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朝日の昇る中を、馬を曳いて橋を渡る人がいます。
馬は蹄の音を響かせ、水面にはその影が映って、さわやかな風景です。
水面に映る影を描くのは一蝶の工夫です。

英一蝶 「雑画帖」のうち、「猫」 江戸時代・17世紀後半 大倉集古館
東西002

まるまった猫の毛の一本一本も描きこんで、柔らかな手ざわりを再現しています。
「雑画帖」は芸能、和漢の故事、名所、動物など、さまざまな画題を描いた
36枚を1帖にまとめたものです。
島流しにされる47歳以前の作とのことです。

画帖の中に、「荘子胡蝶の夢図」というのがあります。
寝台の上で寝ている人がいて、そばで蝶が舞っています。
荘子が寝ていると、自分が蝶になった夢を見た。
覚めてみて、これは荘子が蝶の夢を見たのか、蝶が荘子になった夢を
見たのかと自問するお話です。
「胡蝶の夢」は、幕末の蘭方医たちの群像を書いた、司馬遼太郎の
小説の表題にもなっています。
島流しが赦されて帰るときに見た蝶から新しく付けた、「一蝶」という雅号は、
この話にちなんでいるのでしょうか。

「布晒舞図」 英一蝶 
 元禄11年~宝永6年(1698~1709)遠山記念館 重要文化財

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三宅島に流された時の絵で、新体操のリボンのような座敷芸なのでしょう、
娘が白布を翻して踊っている場面です。
右袖を脱ぎ、たすきをしていて、下に着ている小袖の赤色がアクセントに
なっています。
一番の見せ場の、体を反らせ、扇子を高く掲げた瞬間を捉えています。
盛り上げ処で、お囃子も声を張り上げ、小鼓は片膝を立て、前のめりに
なっています。
白布の作る流れるような線も見事です。
座敷中の拍手喝采が聞こえてきそうです。
遊芸の愉しさ、精妙さが伝わってきます。
私が英一蝶に興味を持ったのも、この絵の、洒落て活き活きとした描写に
驚いてからです。

「四季日待図巻」(部分) 英一蝶 
 元禄11年~宝永6年(1698~1709) 出光美術館 重要文化財

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「日待」は、日の出を拝むため、集まって夜を明かす行事とのことです。
1月、5月、9月の中旬に行なわれることが多く、この図巻では炭火を起こしているので、
1月の情景のようです。
酒を飲んだり、碁を打ったり、瓢箪を的に弓を射たりと、人々が賑やかに楽しんでいます。
修験者がお勤めをしている後ろで、団扇であおいでいる小僧さんは居眠りをしています。
三宅島に島流しにされている時の作品ですが、着物の柄まで細かく描かれ、目の前の光景を
写したように活き活きとしています。
一蝶の画力と、江戸を懐かしむ思いの伝わる絵巻です。

この絵も、「布晒舞図」も、三宅島に流されていた時の作品です。
英一蝶は島流しの間も、絵具を仕送りしてもらって描き続け、
島の人たちのために仏画や七福神の絵も描いています。
三宅島から出した手紙も残っています。

それにしても、モデルもおらず、画帖もあまり持てない生活の中で、
よくこれだけ活き活きした絵を描けたものだと思います。
頭の中にイメージがしっかり出来ているのでしょう。

「大井川富士山図」 英一蝶 江戸時代・17~18世紀 大倉集古館
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富士山を背景に、大井川を渡る旅人たちを、穏やかな筆遣いで描いています。
涼しそうで、画題として好まれた図柄ですが、実景とは異なり、絵のようには
富士山は見えないとのことです。

「富士山図」 英一蝶 江戸時代・18世紀 東京国立博物館
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薩埵峠から見た富士山で、槍持ちを従えた武士の一行が山道を行く、
のどかな風景です。

「雨宿り図屏風」 英一蝶 江戸時代・18世紀 東京国立博物館
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夕立に慌てて、門の下で雨宿りする、股立ちを取った侍、行商人、御幣担ぎ、
琵琶法師など、さまざまな人たちがひと所に描かれています。
子どもは門の横木にぶら下がり、犬まで混じっています。
雨宿りは身分、職業を問わず、さまざまな人たちが集まるので、良い画題になります。

「乗合舟図」 英一蝶 江戸時代・18世紀 東京国立博物館
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乗合舟も雨宿りと同じく、絵師にとって恰好の画題となります。
侍、猿回し、獅子舞い、山伏、鐘勧進などが乗り合わせ、奴さんと馬が
勢いよく乗り込むところも描かれています。

「投扇図」 英一蝶 板橋区立美術館
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神社の参詣者が、扇を投げて、鳥居の横木の間を通そうと競っています。
ずい分暇な人たちだと思いますが、神前での占いの意味もあるのでしょう。
勢い込んで投げようとしている姿が、槍投げ選手のようで、ユーモラスです。

「不動図」 英一蝶 板橋区立美術館
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青不動が滝に打たれて修行しています。
剣と赤い火炎を横に置いて、大真面目な顔で打たれているところが
ユーモラスです。

「一休和尚酔臥図」 英一蝶 板橋区立美術館
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酒好きの一休が、酒屋の前で、払子を持ったまま、幸せそうに
酔いつぶれています。
軒には、造り酒屋の印の酒ぼうきが下がっています。
これはもう涅槃(ねはん)の境地でしょう。

「涅槃図」 英一蝶 正徳3年(1713) ボストン美術館
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縦290cm近い見事な大作です。
旅の途中で病を得た釈迦は沙羅双樹の下で涅槃に入ります。
諸菩薩、天部や釈迦十大弟子、動物たちは周りで嘆き悲しみます。
釈迦十大弟子の一人、阿那律の知らせを受けた、釈迦の母、摩耶夫人が
天から駆け付けています。
空には釈迦入滅の日とされる陰暦2月15日の満月がかかっています。

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左下で倒れ込んでいる、色白の人物は釈迦十大弟子の一人で美男といわれた阿難です。
右端でご飯を捧げているのは釈迦に最後の食事を差し上げたとされる純陀です。

「見立業平涅槃図」 英一蝶 江戸時代・18世紀 東京国立博物館
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釈迦の涅槃に見立てた涅槃図はいろいろありますが、こちらは平安時代の歌人、
在原業平です。
釈迦の寝台である宝台を囲んで、大勢の女性たちが嘆き悲しんでいます。

英一蝶は俳諧を好んだだけあって、その絵には可笑しみがあり、浮世に生きる楽しさを
存分に見せてくれる絵師です。

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【2020/05/07 19:57】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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