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旧約聖書を描いた作品
旧約聖書
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旧約聖書を題材にした作品を集めてみました。

イエス・キリスト誕生以後について記した新約聖書に対し、キリスト以前を記した書を
旧約聖書と呼びます。
古代イスラエル民族の興亡の記録、預言者の言葉、物語、詩など、さまざまな内容を
含みます。

システィーナ礼拝堂天井画、「アダムの創造」 ミケランジェロ・ブオナローティ
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創世記にある、神が天地創造の6日目にアダムを創り、生命を与える瞬間で、
天井画の中で最も有名な場面です。
天使たちに担われて近づく神の動、手を差し伸ばしてそれを待つアダムの静が
見事に描き分けられています。

「アダムとイヴ」  1967-71年 靉嘔
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虹色を使った初期の代表作です。
靉嘔(あい おう)さん(1931~)は茨城県出身で、虹色を使った作品により、
「虹のアーティスト」として有名です。
神はアダムの次にイヴを創り、二人はエデンの園に置かれます。

「エデンの園のエヴァ」 アンリ・ルソー 1906-1910年頃 ポーラ美術館
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森の中でエヴァ(イヴ)は満月の光に包まれて、花を摘み取っています。
エヴァの周りに生い茂る植物はとても幻想的です。

「堕罪の場面のある楽園の風景」  ヤン・ブリューゲル(父)
1612-13年頃 ウィーン美術史美術館

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イヴは蛇にそそのかされて、食べてはいけないとされた知恵の木の実を食べ、
アダムにも食べさせます。
これが原罪として、人類に受け継がれることになります。
ヤン・ブリューゲル(父)(1568-1625)はフランドルの画家、ピーテル・ブリューゲルの
次男で、花の絵が得意だったことから、花のブリューゲルと呼ばれています。
一つの画面にさまざまの動物を収める絵もよく描いていて、この絵でも様々な鳥や
動物が描き込まれ、アダムとイヴは奥の方に小さく見えるだけです。

「ノアの箱舟への乗船」 ヤン・ブリューゲル1世 
 1615年頃 油彩、板 デッサウ、アンハルト絵画館

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神は地上に人が増えすぎ、悪を行なっているのを見て、すべて滅ぼすことを決めますが、
ノアだけは正しい人だったので、神はノアに箱舟を作らせ、ノアと家族、ひとつがいの
動物たちだけを乗せるように命じます。
その後、地上に大洪水が起こり、ノアたちだけが生き残ります。
ヤン・ブリューゲル(父)は一つの画面にさまざまの動物を収める絵もよく描いていて、
ノアの箱舟はそれにふさわしい画題です。
描き方は父と同じく細密です。

「バベルの塔」 ピーテル・ブリューゲル 
 油彩、板 1568年頃 ロッテルダム、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館

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創世記によれば、人びとはレンガとアスファルトで、天にまで届く高い塔を
建てることを始めます。
そこで神は人びとの話す言葉を乱し、言葉が通じないようにしたので、
皆散り散りとなってしまいました。
「バベルの塔」はブリューゲルの代表作の一つです。
横74.6㎝の作品で、海辺の巨大な円錐の塔が描かれています。
螺旋状の構造になっていて、階によってアーチの形も違い、上の階には
雲がかかっています。
左側の白い部分は漆喰をクレーンで運び上げているところで、漆喰をかぶって
白くなった作業員も描き込まれています。

「バベルの塔」 渡辺禎雄 1965年
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大勢の人たちが天まで届く塔を建てる作業にせっせといそしんでいます。
何となくとぼけた表情に味わいがあります。
渡辺禎雄(わたなべさだお:1913-1996)は型染版画家で、民藝運動の
一員の芹沢銈介に師事して型染の技法を学んでいます。
クリスチャンの渡辺禎雄は聖書や聖人を題材にした版画を数多く描いています。
民藝風の素朴さと中世キリスト教絵画の精神性さが一体となった、
優しく味わい深い作風です。

「サラ」 ジョルジュ・ルオー 油彩、紙 1956年 ジョルジュ・ルオー財団
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ルオーの最晩年の作品で、アーチで囲まれ、ステンドグラスのように輝いています。
サラは旧約聖書のアブラハムの妻で、神の約束により、90歳でイサクを産んでいます。
この絵はルオーの死後、慣例的にこの名で呼ばれています。
アブラハムはユダヤ人、アラブ人の祖とされる人物です。

マンガン彩組絵タイル 「ハガルの追放」 
 19世紀 オランダ 常滑市、世界のタイル博物館

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旧約聖書創世記の、アブラハムがハガルとイシュマエルを追放する場面です。
オランダでは18世紀からマンガン鉱による紫色の絵具が作られ、マンガン紫として
人気を呼んでいます。
ハガルはアブラハムの奴隷で、サラがイサクを産む前にイシュマエルを産んでいます。
そのため、サラはイサクの立場が危うくなるのを恐れ、アブラハムに願ってハガルと
イシュマエルを荒野に追放してしまいます。
イサクはユダヤ人の祖、イシュマエルはアラブ人の祖とされています。

「ヤコブの梯子」 マルク・シャガール 1973年 個人蔵
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ヤコブはイサクの子です。
ヤコブの梯子は旧約聖書創世記でヤコブが夢に見たという、
天と地を結ぶ梯子で、天使が昇り降りしていました。
神はその地をヤコブに与え、子孫の繁栄を約束しています。
シャガールはよく聖書の世界を題材にしています。

「ラテン語聖書零葉:ヨシュア記・本文第1章
(イニシアルE/ヨシュアに語りかける父なる神)」
ロレーヌ地方(メッス?)、1310-20年頃 インク、金、彩色/獣皮紙
国立西洋美術館

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ヨシュア記は旧約聖書の中の、エジプトからイスラエルの民を救い出したモーセの
後継者、ヨシュアが民を連れてヨルダン川を渡り、カナン(現在のパレスチナ)を
征服していく物語です。
丸い「E」の字の中に描かれているのは、神がヨシュアにヨルダン川を渡れと
告げているところでしょうか。
中世は絵具の数が少ないので、補色を利用して、色の効果を強めていたそうです。

「アモリびとを打ち破るヨシュア」 ニコラ・プッサン 1624-25年頃 プーシキン美術館
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旧約聖書のヨシュア記の一場面で、モーセの後継者ヨシュアの軍勢が
カナンのアモリ人を打ち破っています。
ヨシュアが太陽と月に命じて一日留まらせたという記述を表すため、
太陽と月が描かれています。
ニコラ・プッサンは静かな古典主義の画家として有名ですが、この作品は
ローマで修業を始めた頃のもので、動的な歴史画になっています。
画面も古代ユダヤというより、ギリシャ・ローマ風です。
アモリ人は中東の各地域に居住していた部族です。

「ゴリアテの首を持つダヴィデ」 グエルチーノ 1650年頃 国立西洋美術館
グ008

国立西洋美術館の所蔵するグエルチーノの作品です。
旧約聖書のサムエル記にある話で、ダビデが投石器を使ってペリシテ人の巨人、
ゴリアテを倒し、ゴリアテの剣を使って首を斬っています。
ダビデは天を仰いでイスラエルの神に感謝していて、ダビデを照らす光は
神の祝福を表しています。
サムエルはイスラエルの指導者で、民が王を望むのでサウルを選び、
イスラエル最初の王とします。
ダビデはそのサウルの後継者で、後に王となります。

「サウル王の前で竪琴を弾くダヴィデ」 レンブラント・ファン・レイン 
 1630-31年頃 フランクフルト、シュテーデル美術館

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サムエル記にある話で、サウル王はダビデの弾く竪琴を
よく聴いていましたが、ダビデがペリシテ人との戦いで巨人ゴリアテに
石を投げて殺し、名声が高まるとダビデを恐れ、妬み、遂には槍を
投げて殺そうとします。
豪華な衣装に身を包んだ老いたサウルが、竪琴を弾く若いダヴィデにまさに
槍を投げようとする直前の暗い怒りの瞬間を捉えています。

「バテシバ」 セバスティアーノ・リッチ 油彩、カンヴァス 1725年頃 ベルリン国立美術館
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サムエル記に書かれた、ダビデ王が部下のウリヤの妻バテシバの入浴する姿を見て
横恋慕し、ウリヤを戦場に送って戦死させ、バテシバを妻としたという話を題材にしています。
レンブラントの作品にも描かれた有名な場面ですが、こちらは華やかな明るい色彩で、
画面に動きもあり、聖書というより古典古代の世界を見るようです。
セバスティアーノ・リッチ(1659-1734)はヴェネツィア出身の画家で、ヨーロッパ各地で
神話や歴史を題材にした作品を描いています。

「旧約聖書物語 挿絵」より「ソロモン王とエルサレム」 青木繁 
 1906年 ニューオーサカホテル

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ソロモン王はダビデとバテシバとの間に生まれた子で、イスラエルの王を継いでいます。
青木繁の好んだ神話的な題材です。

「運命を悟るハマン」 レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン
 1660年代前半 エルミタージュ美術館

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旧約聖書のエステル記のお話で、ペルシャの権力者だったハマンが自国に居る
ユダヤ人を皆殺しにしようと画策しますが、王妃でユダヤ人のエステルの機転により
逆にハマンが死刑になってしまいます。
暗い背景の中に浮かぶハマンはトルコ風の衣装を着ていて、後ろに刑を宣告した
クセルクセス王の姿も見えます。

「スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)」 エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ  
 1891年 水彩、グワッシュ・紙

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大きな作品で、旧約聖書の雅歌の一節を主題にしています。
雅歌は男女の愛を歌った歌集で、旧約聖書では珍しい内容です。
白百合は純潔を表し、二人の女性が象徴する北風と南風が風を起こす中を、
レバノンの花嫁が歩んでいます。
バーン=ジョーンズらしい落着いた色彩による、すらりとした姿の女性像です。

「最愛の人(花嫁)」 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 1865-66年 ロンドン、テート美術館
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旧約聖書の「雅歌」に触発された作品で、未来の夫の前でヴェールを脱ぐ
花嫁を描いています。
花嫁の服は日本の着物を基にしています。

「エゼキエルの幻視」 ラファエロ・サンティ 1518年頃 フィレンツェ、パラティーナ美術館
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1520年に37歳で亡くなったというラファエロの若い晩年の作品です。
旧約聖書のエゼキエル書にある、預言者エゼキエルの視たという神の姿を
描いています。
神は人、獅子、牛、鷲の顔をした4つの生き物ともに現れています。
左下にはエゼキエルかと思われる人物を雲間から照らす光も見えます。
小品ですが、構想が大きく、画面も緊密で、「アテネの学堂」などの
大画面を描いたラファエロの力量を示しています。

「スザンナと老人たち」 グエルチーノ 1649-50年 パルマ国立美術館
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旧約聖書のダニエル書の補遺として伝わる話で、水浴をしていたスザンナが
2人の長老に覗き見され、関係を迫られるという話です。
女性の裸体を題材にしているので、ティントレット、ルーベンス、レンブラント、
シャセリオ―など多くの画家に描かれています。
グエルチーノ、本名:ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ(1591-1666)は
イタリアのチェントの出身で、バロックを代表する画家の一人です。

「トビアと天使のいる風景」 クロード・ロラン 1663年 エルミタージュ美術館
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旧約聖書のトビト書の、チグリス河畔でトビアが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルによって救われ、魚の内臓を取り出している場面です。
夕陽が空や雲、野原や木々を照らし、雲は輝いています。
トビアは魚の胆汁を得て、雀の糞が目に入って盲目になっていた父のトビトの目に塗ると、
トビトの目は治ります。
トビト書はユダヤ教では外典、カトリックでは旧約聖書続編とされ、プロテスタントでは
聖書とはされていないという、特殊な書です。

「トビアスと天使」 フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 1787年頃 プラド美術館
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旧約聖書のトビト書の、チグリス河畔でトビアスが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルによって救われる場面です。
世俗を鋭く描いた画家としてのイメージの強いゴヤですが、宗教画にも
優れていたことが分かります。

「ホロフェルネスの首を持つユディト」  ルーカス・クラーナハ(父)
 1530年頃 ウィーン美術史美術館

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旧約聖書外典のユディト記に書かれた話で、アッシリア軍がユダヤの町に攻めてきた時に、
その将軍ホロフェルネスを誘惑し、泥酔している隙にその首を獲って町を救っています。
ボッティチェリ、カラヴァッジョ、クリムトなど、多くの画家が描いている刺激的な画題です。
豪華な衣装を着けたユディトの肌はつややかな張りがあり、瞳はきらめいています。
クラーナハはユディトやサロメなど、女性の持つ危険な魅力をよく題材に選んでいます。

「ホロフェルネスの首を持つユディト」 ルーカス・クラーナハ(父)
 1530年頃 国立西洋美術館

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高さ37.2㎝の小品で、板に油彩で描かれています。
人気のある画題で、クラーナハはユディトを10数点描いています。
豪華な衣装と冷ややかな微笑みが魅力です。

「ホロフェルネスの首を持つユディト」 
 ヴェロネーゼ 1580年頃 ウィーン美術史美術館

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ユディトは獲った首を上気した誇らしげな顔で召使に見せています。
パオロ・ヴェロネーゼ(1528-88)はティントレットと共に、ルネサンス後期の
ヴェネツィアを代表する画家で、特に色遣いが見事です。

「ユディトⅠ」 グスタフ・クリムト 1901年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
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クリムトの代表作の一つで、初めて金箔を使った装飾的な作品です。
当時は日本趣味の流行した時代で、特にクリムトは強い影響を受けています。
額縁もクリムトがデザインし、弟で金属工芸家のゲオルクが制作しています。
JVDiTH VND HOLOFERNESと書かれていて、古いラテン語風にUとVを同じ文字に
しています。

西洋画の主な画題は聖書と歴史なので、さまざまな作品が揃います。
花鳥画や風景画を好む東洋画とはかなり違います。


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【2020/05/26 19:21】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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