国立新美術館 DOMANI・明日展2009
乃木坂
chariot

六本木の国立新美術館で1月24日(日)まで開かれている「DOMANI・明日展2009」
に行ってきました。

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正式には「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2009 
<文化庁芸術家在外研修の成果>」という名前の展覧会です。

文化庁が1967年度から実施している、若手芸術家を研修のため海外に派遣する、
「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)」の成果を発表する展覧会で、
毎年開かれています。

去年の展覧会に行った時の記事はこちらです。

今年は作家によるギャラリートークも3回に分かれて行なわれていて、
私は10日のトークに行ってきました。
トークは大盛況で、50人以上が集まっていました。

今回は以下の12人の作品が展示されています。

久保田繁雄(繊維造形)、吉仲正直(絵画)、栗本夏樹(漆造形)、
伊庭靖子(絵画)、安田佐智種(写真)、吉田暁子(現代美術)、
礒碕真理子(彫刻)、三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)、
呉亜沙(洋画)、浅見貴子(絵画)、高野浩子(彫刻)、藤原彩人(彫刻)

何人かの作家の作品について書いてみます。

久保田繁雄(繊維造形、10日にギャラリートーク)

主に麻を素材とした織物による、大きな立体造形です。

「The Wave Space Ⅴ」

d1-11-2010_001

実際は写真より鮮やかな色彩です。

以下はギャラリートーク。
「日本的なものを追求している。
昔の几帳のようなものをイメージしている。
日本の色、古代色を外国がどのように受け入れてくれるかに興味がある。
初めから、個展ではなく、ローザンヌ(国際タペストリー・ビエンナーレ)を
目指して製作してきた。
作りたい形態と使う素材の関係を常に考えてきた。
今はテグスを染めて、浮遊感のあるものを作っている。
ビジュアル的には平面的なものより、立体的な作品の方が空気感や温度が
感じられて面白い」


吉仲正直(絵画)

抑えた色彩の抽象画です。
筆触に面白さがあります。

「サヨウナラ910×727 パープルレッド・No.1」

この写真は参考画像で、展示はされていません。

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栗本夏樹(漆造形、10日にギャラリートーク)

漆ですが、工芸品というより、大きなパネルなどです。

「上杉の胴服 II」

d1-9-2010_005

上杉謙信の着ていた胴服をイメージしています。

以下はギャラリートーク。
「製作の出発点は人間への興味、それは今も一貫している。
人間という存在を等身大で表現すると、作品も大きくなる。
最初は人と神との関わりを追って、儀式をテーマにしていた。
洗礼を受け、クリスチャンになってからは、それまでの客観的に追求する
立場から、神から見られる立場に変わった。
「祈る形」シリーズは、キリスト教も仏教も神道も、手を合わせて祈る形は
同じことに関心を持って作った。
古い乾漆法という技法を使って、現代の祈りの形を表現した。
漆は平面的だが、表面を研ぎ出す過程で、自分の内面が浮き出てくる。
漆造形は作業の多い分野だが、作家は自分も含めて、そのプロセスの中に
自分の思い、魂を込めている。
パレスチナや韓国をテーマにしたのは、異文化との融合を、車のボンネットを
使った作品は、現代文明と手作りの融合を考えているから」

パネルの中にはボンネットを使っている作品があるとは、言われるまで
気が付きませんでした。


伊庭靖子(絵画、10日にギャラリートーク)

クッションと、染付陶磁器をクローズアップした、写真のような細密画です。

「untitled01-2009」

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以下はギャラリートーク。
「予め、写真を撮り、それを基に描いている。
以前は植物やフルーツを描いていたが、その時、光の具合に興味を持ち出した。
しかし、光を追求していると、絵がきれいになってしまう。
それでは話が終わってしまうので、光を別の形で表すことを考え、
クッションに取り組んだ。
クッションの反射光が観る人を包み込むような感じを出している。
反射する光は必ず対象の触覚を伴ってくる。
触れば分かることだが、観ることによって表現したい。
観る人が絵の中に入ってほしい。
クッションと染付では、反射する光の深さが違う。
今も写真を使うのは、直に対象を観ると、その物に捉われてしまうから。
写真は何かを落としてしまっているのは事実だが、自分の欲しい要素だけを
掴むことができる」

クッションの絵という、地味な作品ですが、不思議に穏やかな魅力があります。


安田佐智種(写真)

ニューヨークや東京など、大都市の写真を高層ビルの上から撮って、加工を
加えています。
今度の展覧会のパンフレットにも使われています。


吉田暁子(現代美術、10日にギャラリートーク)

高さ8mの壁の全面を使った、国立新美術館ならではのインスタレーションです。
壊れた椅子、枝垂れ梅、空中に張った糸に絡まる紙、壁一面に点々と貼られた
小さなプレートなどで構成されています。

この写真は参考画像なので、実際の展示はこれとは違います。

d1-9-2010_004


以下はギャラリートーク。
「出身は日本画だが、その前は油絵を描いていた。
輸入された技法である油絵には、幼いながら疑問を持ち、日本画に転向した。
私たちの視点は学校の美術学校の教育=西洋画の世界とは違うものがある。
西洋のフォーマット、消失点では語れない、中心点の無い世界が日本の特徴。
部分と全体を同時に見る方法も日本的。
それは西洋の見方に慣れた目には弱いものに見えるが、実はそうでは無い。
会場に入った人はどこに視線が行くか考えて、作品を配置した。
全体が一つの絵画になるようにしたが、それが日本の物の見方。
貼ってあるプレートは2001年に描いた絵を切り分けた物。
青いプレートは、集めると島の景色、ピンクのは、霧雨の中の月の絵になる。
奇抜なものは使わず、日常の延長でないといけない。
右に並んだ白い絵は、大阪の展覧会で壁に合わせた素材に、壁の染みに
つながるものを描いた。
観た人は会場を出ると、普通の染みが絵に見えてくるという。
これは日本人の感性で、アメリカ人には中々出来ない」


礒碕真理子(彫刻)

一抱えもある、真っ赤に光るピーマンや豆のようなオブジェです。
その色、大きさから、強い存在感を感じます。

説明板には、「五感で体感できるものを作りたい。視覚を通じて、触覚、聴覚、
味覚、嗅覚を呼び起こしたい。物と周囲との空気感を出したい」というような
趣旨が書かれていました。

「Small red flowers」

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実物よりかなり大きな花が壁に取り付けてあります。
床に置いたオブジェはピカピカですが、こちらは質感が異なり、
和菓子の練り物のようです。


呉亜沙(洋画)

画像はありませんが、自分の住んでいたあちこちの町を愛惜を込めて
描いた絵には、黒いウサギが大勢登場しています。

「樹海」

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東京という大都会に独りで立つ少女は、頭から木の枝を伸ばし、木の葉の糸を
つなげます。
その端を持つ、別の人の手が見えます。
作者のテーマは、自己と他者の関係、そのコミュニケーションにあるそうです。


「floating letter」

2005年に留学したニューヨークでの思い出を、絵と英語の文章で絵巻物に
仕立てています。
帰国が近づくに連れ、部屋の中が片付き、最後はトランクと目覚まし時計と
寝袋だけが残っています。
絵巻物という日本固有の形式を使って英語で綴るという方法に新鮮なものを
感じました。


三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)

「RONDO-N ウサギのささやき」

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写真を使ったビデオ映像で、「ロンドン橋落ちた」の曲がギターで流れ、
作者自身が歌っています。
静かなイギリスの情景の中で、自分と黒いウサギの人形の、取りとめもない
お話が進みます。
呉亜沙の作品と同じように、黒いウサギが出てくるのは面白いところです。


浅見貴子(絵画)

「梅に楓図」

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墨を使った、柿や梅の木の絵です。
いわゆる墨絵とは異なり、立体感、空間性があります。


高野浩子(彫刻)

「雲の依代」

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テラコッタによる、「想う人」シリーズと同じ雰囲気の彫刻です。
「想う人」シリーズは、量感のある体に対し、顔は目を閉じて、
静かに物思いの世界に入っています。

古い本棚や、本に見立てた木片を雑多に積み重ねた、高さ3mはある
オブジェには、心の和む懐かしさがあります。


藤原彩人(彫刻)

天井まで届く、陶板彫刻です。
壁画として楽しむことが出来ます。

「Swimming Woman」

d1-9-2010_002

見上げる高さの空中を泳ぐ、巨大な天女です。
その大きさが浮遊感を強調しています。


今回は4人のギャラリートークを聴くことが出来ましたが、作品を観る上で
とても参考になりました。
聴かなくても作品を楽しむことは出来ますが、特に現代芸術は、聴いた後では
観方が変わることがよくあります。
17日は、吉仲正直(絵画)、三田村光土里(ビデオ&インスタレーション)、
藤原彩人(彫刻)のトークがありますので、聴かれることをお奨めします。


展覧会のHPです。

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【2010/01/13 01:12】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(6) |
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  • はろるどさん、こんばんは。
  • 伊庭さんの、クッションと染付では光の反射する深さが違うという話は、納得できるものでした。
    クッションという、ごく普通の物からこれだけの作品を作り上げていることに感心しました。

    【2010/01/19 23:31】 url[猫アリーナ chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • トークの記事をありがとうございます。伊庭さんはプレビューの時もおられなかったので、こうした生の声を聞くことが出来て本当に嬉しいです。

    クッションと染付け、そのイメージに違いがあるのも、写り込む光が異なっているからなのかもしれませんね。次にどのようなモチーフへと進むのかにも興味がわきました。

    【2010/01/19 21:21】 url[はろるど #sZuoGHFE] [ 編集]
  • 一村雨さん、こんばんは。
  • ギャラリートークは3回ありましたが、出来れば3回とも行きたいところでした。

    【2010/01/18 19:35】 url[猫アリーナ chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんばんは。
    私も土曜日に見てきました。
    こちらのギャラリートークの話を読んで、
    なるほどなぁと思いました。
    いい展覧会でしたね。

    【2010/01/18 01:33】 url[一村雨 #-] [ 編集]
  • Takさん、こんばんは。
  • 伊庭さんのお話は、聴いていて成程そうなのか、と納得出来るものでした。
    光を追求すると、絵がきれいになってしまうという話は、製作の秘密を聴けたような気がしました。

    【2010/01/13 23:34】 url[猫アリーナ chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんばんは。

    すっごくありがたいです。
    特に伊庭さんのお話は
    聞きたかったので!!

    まとめていただき
    ありがとうございました。

    【2010/01/13 23:12】 url[Tak #JalddpaA] [ 編集]
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    国立新美術館(港区六本木7-22-2) 「DOMANI・明日展2009」 2009/12/12-2010/1/24 国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展2009」へ行ってきました。 新美術館で2度、それ以前の損保ジャパン時代を含めると、今年で12回を数えるに至った展示ですが、一応、DOMANIとは
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    国立新美術館で開催中の 未来を担う美術家たち「DOMANI・明日展 2009」〈文化庁芸術家在外研修の成果〉の内覧会にお邪魔して来ました。 Twitter:domani2009 昨年、2008年のドマーニ展から損保ジャパン美術館から国立新美術館へ会場を移し開催。去年は新しい場
    【2010/01/13 23:12】

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