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シャガール展 東京藝術大学大学美術館
上野・根津
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上野の東京藝術大学大学美術館では10月11日まで、「シャガール展」が
開かれています。

シャ7-2-2010_001

正式には、「ポンピドー・センター所蔵作品展 シャガール ロシア・
アヴァンギャルドとの出会い 交錯する夢と前衛」という長い題名の展覧会です。
パリのポンピドー・センターの所蔵するシャガールの作品約70点と、彼も一時
関わったロシア前衛芸術を代表する人たちの作品、約40点が展示されています。
東京の後、福岡市に巡回します。

「自画像」 1908年
シャ7-2-2010_005

マルク・シャガール(1887~1985)はロシア(現在のベラルーシ)の
ヴィテブスクで、ユダヤ系の家に生まれています。
サンクトペテルブルグの美術学校時代の作品でしょうか。
まだ後のシャガールにはなっていませんが、手前の赤が印象的で、
色彩への意識は強かったようです。

「ロシアとロバとその他のものに」 1911年
シャ7-2-2010_003

1911年にパリに行き、フォービズムやキュビズムの影響を受けます。
その頃の代表作で、色彩は強く、形はごつごつしていますが、すでに
シャガールの世界が始まっています。
空の黒が印象的で、赤、青、緑はステンドグラスのように鮮やかです。
この絵は、夢想に取り付かれた人を「頭が飛び立っている」という、
ロシア語やイディッシュ語の言い回しが元にあるとのことです。
イディッシュ語は東欧系のユダヤ人の使っていた言葉です。
「ロシアとロバとその他のものに」という題名は、作品に感動した友人が
付けたものということですが、屋根の上にいるのは牛なので、ロバとは何を
指しているのでしょうか。

シャガールは1912年にモンパルナス近くのラ・リュッシュ(蜂の巣)という名の
集合アトリエ兼住居に住みます。
ここはフェルナン・レジェ、スーティン、モディリアーニ、キスリングらの集まる、
エコール・ド・パリの拠点となる所です。

ヴィテブスクに帰郷中の1914年に第1次世界大戦が始まり、ロシアに留まります。

「緑色の恋人たち」 1916~17年
シャ7-2-2010_006

1915年にはベラ・ローゼンフェルトと結婚します。
色彩も穏やかで、幸福感に満ちた作品です。

「立体派の風景」 1918~19年
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1917年にロシア革命が起こり、革命政府の文化運動に参加します。
1919年にヴィテブスクに美術学校を設立し、校長となって、教師として
抽象画の創始者の一人とされるマレーヴィチらを招きます。
このマレーヴィチは、カリスマ性のある人で、幾何学的な抽象表現を徹底した
「シュプレマティズム」を広め、生徒たちは具象のシャガールから離れて
しまいます。
ひさしを貸して母屋を取られることになったシャガールは辞職してしまい、
やがてロシアからも出て行き、パリに移住します。
マレーヴィチもその後のソ連の文化政策と合わず、活動を止めることになります。

この絵は、シャガールの中では最もキュビズム風の作品で、一時は協力していた
マレーヴィチの影響があるということです。

「赤い馬」 1938~44年
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1923年にパリに移ってからは、これまでの芸術運動から離れ、夢想的な独自の
画風を深めます。
新郎新婦、浮遊する人物、月、燭台、故郷の風景と、シャガールの世界が
揃っています。

「彼女を巡って」 1945年
シャ7-2-2010_009

第2次世界大戦が始まり、フランスはドイツに占領され、シャガール夫妻は
1941年にアメリカに亡命します。
1944年に妻ベラが急逝し、シャガールは悲嘆に暮れて、しばらく絵筆を
取らなくなります。

ベラを追憶しての作品で、全体に冷え冷えとした藍色の画面の中で赤い服の
ベラは物思いに沈み、首を逆にしたシャガールの顔はひきつった表情です。

「家族の顕現」 1935/1947年

イーゼルの前にパレットを持って座るシャガールの周りには、両親、弟妹、
ベラなどが集まっています。
1935年に描かれた後、フランスから亡命の際に持ち出され、その後も
手直しされているとのことです。
ユダヤ教の聖書であるトーラーの巻物を持っているのが父親でしょう。
白い花嫁ドレス姿の女性はベラと思われますが、手前にもう一人、
両手を広げた女性が描かれています。
この女性もベラで、彼女の死後に描き加えられたのではないでしょうか。

「日曜日」 1952~54年
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1952年にヴァランティーナ・ブロドスキーと結婚します。
シャガール、65歳の時です。

輝く朝日に照らされるノートルダム寺院、エッフェル塔とともに、
妻のヴァランティーナとシャガール、雪のヴィテブスクを描いています。
昇る朝日の赤、サーチライトのように伸びる赤、空の強い黄色の中に浮かぶ
二人の顔は、ハート型の中に溶け込んでいて、シャガールの素直な喜びを
表しています。
自分の愛するものを全部描きこむ、子供のような心があります。

「イカルスの墜落」 1974~77年
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90歳近い晩年の作品です。
故郷ヴィテブスクの人々の上に墜ちて行くのは、シャガール自身にも見えます。
ヴィテブスクはユダヤ人を中心にした町でしたが、独ソ戦の戦場ともなっていて、
人々の運命は過酷だったはずです。
これほど多くの人々を描き入れたのは、鎮魂の意味を込めたのでしょうか。
たとえ墜落ではあっても、帰るべき故郷への思いの強さを見せています。


シャガールはニューヨークのメトロポリタン歌劇場のこけら落としに上演される、
モーツァルトの「魔笛」の舞台と衣装デザインの依頼を受けています。
舞台美術の原画、約50点が展示されています。

『モーツァルト「魔笛」パパゲーノ』 1966~67年
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登場人物の衣装デザインの一つです。
鳥の羽根を着け、鳥かごを背負い、パンフルートを持った鳥刺しのパパゲーノ
という役をファンタジックに描いています。

『モーツァルト「魔笛」フィナーレのための背景幕』 1966~67年
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太陽の円環を基調にした、シャガールの世界全開の壮大な画面です。
実際の舞台は、さぞ見事なものだったことでしょう。


シャガールは「追憶の画家」というまとめられ方をされます。
しかし、作品から受ける印象は予想以上で、強く訴えるものがあり、
只者でない迫力を感じます。


展覧会では、20世紀初頭にロシアで活躍し、シャガールとも交流のあった、
ロシア・アヴァンギャルドの作品も多く展示されています。

「収穫物を運ぶ女たち」 ナターシャ・ゴンチャローワ 1911年
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強い色彩と単純化された描線による、簡潔な画面です。
ナターシャ・ゴンチャローワは、ミハイル・ラリオーノフとともに、
西欧の動きやアカデミズムに反発し、ロシアの独自性を主張する、
ネオ・プリミティズムと呼ばれる運動の推進者とのことです。
ネオ・プリミティズムは、ロシア・アヴァンギャルドの初期の流れに
属するそうです。

「アフティルカ 赤い教会の風景」 ワシリー・カンディンスキー 1917年
シャ7-6-2010_001

カンディンスキーの描いた、ロシアの風景画の小品6点も展示されています。
カンディンスキーは抽象画の創始者ですが、これらはセザンヌ風のがっちりした
具象画です。


展覧会のHPです。

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【2010/07/07 05:19】 美術館・博物館 | トラックバック(3) | コメント(2) |
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  • dezireさん、はじめまして。
  • コメント頂戴し、有難うございます。
    後ほど、そちらのblogにも訪問させていただきます。

    【2010/09/12 06:58】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • シャガール
  • 初めて訪問させていただきます。
    記事を興味深く読ませていただきました。作品を深く理解されているのに感服いたしました。いろいろ勉強になりました。私もシャガール―ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交錯する夢と前衛~」の美術展を見てきました。この美術展に展示されている作品とあわせて、今まで来日したシャガールの傑作を回顧しながら、シャガール美術の魅力について書いてみましたので。ぜひ読んでみてください。
    http://desireart.exblog.jp/11260152/
    よろしかったらブログに書き込みしお願いします。

    【2010/09/11 11:37】 url[dezire #tLX0El8c] [ 編集]
    please comment















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    東京藝術大学大学美術館で開催される ポンピドー・センター所蔵作品展「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い-交錯する夢と前衛」の内覧会にお邪魔して来ました。 公式サイト Twitter「シャガール-ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展公式アカ
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