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「アルブレヒト・デューラー版画・素描展 -宗教・肖像・自然-」 国立西洋美術館
上野
chariot

上野の国立西洋美術館では「アルブレヒト・デューラー版画・素描展
-宗教・肖像・自然-」が開かれています。
会期は2011年1月16日までです。

デ001


メルボルン国立ヴィクトリア美術館所蔵の版画105点を中心に157点が
展示されています。

アルブレヒト・デューラー(1471-1528)は、芸術において重要な主題は
宗教、肖像、自然の3つであると述べているとのことです。
この展覧会でも、その3つに分けての展示です。


第1章 宗教

会場には4種類の版画連作が展示されています。

『聖母伝』 木版画 20枚
『大受難伝』 木版画 11枚
『小受難伝』 木版画 37枚
『銅版受難伝』 91枚

受難伝はキリストの受難と復活を描いた連作です。
『大受難伝』はA3、『小受難伝』はハガキ、『銅版受難伝』はカードほどの
大きさです。
面白いもので、版が小さいほど、画面の密度が高くなり、大きな版と変わりない
迫力の作品になっています。

これらは人文主義の風潮に乗って、印刷本の挿絵として描かれたもので、
『大受難伝』 は制作に15年かかり、1511年に刊行されています。
『小受難伝』、 『銅版受難伝』と同時進行で制作されています。
これだけ大量の作品を描いたということは、印刷術の情報伝達に及ぼす影響の
大きさが分かります。

「受胎告知」 1503年頃 ペン、褐色インク、水彩 
デ002

ベルリン国立版画素描館の所蔵です。
「聖母伝」制作の準備として描かれたものということです。
有翼の天使が腕を組むマリアに告げている場面で、イタリア・ルネッサンスの
絵画によく見られる構図です。
デューラーは若い時にイタリアで学んでいます。

「聖母の婚約」 『聖母伝』より 1504-05年頃 木版 国立西洋美術館
デ007

聖母マリアのヨセフとの婚約の場面です。
「受胎告知」と同じように、アーチのある壮麗な建築物を背景にしています。
この時代は人文主義の形成期で、聖母崇拝の機運が盛り上がっていたとのこと
ですが、人文主義と聖母崇拝がどう結びつくのか興味のあるところです。


第2章 肖像

「ある女性の肖像」 1503年 木炭 
デュ001

片目の女性の肖像で、ベルリン国立版画素描館の所蔵です。
モデルは妹のマルガレータ・デューラーではないかと言われています。

「神聖ローマ皇帝マクシミリアンI世」 1519年
大判のマクシミリアンI世の肖像版画です。
マクシミリアンI世は自分の肖像を版画にして配布した初めての皇帝で、
印刷術を活用して、プロパガンダに力を入れています。
マクシミリアンI世はデューラーを庇護し、自身の肖像画や肖像版画を
描かせています。
人気の有る皇帝だったので、亡くなった時、家々ではこの版画を壁に貼って、
その死を悼んだそうです。

第3章 自然

「岐路に立つヘラクレス(嫉妬)」 1498年頃 エングレーヴィング
デ006

ヘラクレスが「美徳」と「快楽」のどちらを選ぶか迫られている場面で、
棒を振り上げているのが誠実な「美徳」、裸体が挑発性を持つ「快楽」です。
「快楽」の左側には半獣半人のサテュロスがいて、ヘラクレスは得物の棍棒で
「美徳」を押し留めようとしています。
ヘラクレスの筋肉など、人体表現をよく研究していることが分かります。
エングレーヴィングは銅版に線を彫る版画の技法で、細かい表現が出来ます。

「聖エウスタキウス」 1501年頃 エングレーヴィング
デ005

聖エウスタキウスは2世紀頃の殉教者で、狩の最中に輝く磔刑像を付けた
白い牡鹿に出合い、キリスト教に改宗したと言われています。
鹿や馬、犬など、動物を描きたかったようで、犬は色々の姿をしています。

「メレンコリア I」 1514年 エングレーヴィング 国立西洋美術館
デ004

デューラーの代表作で、人間の4気質の内の憂鬱質を描いているとも言われて
いますが、正確な意味は不明とのことです。
コンパス、球、多面体などが描かれていて、デューラーの科学への関心を
示しています。

「マクシミリアンI世の凱旋門」 1515-17年 木版
デ003

神聖ローマ皇帝マクシミリアンI世(1459-1519)の業績を讃えるために
制作された3m四方の巨大な版画で、198枚の版木と49枚の紙を使っています。
家族やハプスブルグ家の系図、マクシミリアンI世の業績が描かれています。
左右の塔の部分はアルブレヒト・アルトドルファーが担当しています。
1517年に700部が刷られ、諸侯に贈られています。

1517年はルターがヴィッテンベルクの教会に「95ヶ条の論題」を貼り出し、
宗教改革の始まりとなった年でもあります。

デューラーの版画をじっくりと観ていくと、その造形力の高さに改めて感心します。
それらが印刷物として広く流布したわけですから、美術や思想に与えた影響は
大きかったことでしょう。
同じ上野の東京藝術大学大学美術館で12月5日まで開かれている、「黙示録
―デューラー/ルドン」展を観たばかりでもあり、お陰でデューラーの
版画についてかなり知るようになりました。

展覧会のHPです。

「黙示録―デューラー/ルドン」展の記事はこちらです。

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