「DOMANI・明日展 2010」 国立新美術館
乃木坂
chariot

六本木の国立新美術館で2011年1月23日(日)まで開かれている
「DOMANI・明日展 2010」に行ってきました。

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正式には「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2010<文化庁芸術家
在外研修の成果>」という名前の展覧会です。

文化庁が1967年度から実施している、若手芸術家を研修のため海外に派遣する、
「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)」の成果を発表する展覧会で、
毎年開かれています。

去年の展覧会に行った時の記事はこちらです。


今回は以下の12人の作品が展示され、作家によるギャラリートークも以下の
4回に分かれて行なわれています。

12月12日(日)
近藤弘(陶造形)、町田久美(絵画)、山口紀子(ファイバーアート)

2010年12月18日(土)
流麻ニ果(絵画)、鈴木涼子(現代美術)、近藤聡乃(現代美術)

2011年1月10日(月・祝)
遠山香苗(絵画)/赤崎みま(写真)/神戸智行(日本画)

2011年1月15日(土)
古郷秀一(彫刻)、三好耕三(写真)、深井聡一郎(彫刻)

私は12日のトークに行ってきました。
トークには50人以上のお客さんが集まっていました。

近藤弘(1958~)(陶造形、イギリス派遣)
「T.K-Self‐Portrait Mist」 2010年
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近藤さん自身の頭部から型を取った陶器にさまざまの絵付けをした作品23点が
並んでいます。
これはそのうち、銀滴と言われる技法で、顔の表面に水滴のような銀の粒を
散らしています。

近藤さんのトークです。
「元々、京都山科で染付の陶芸を行なっていたが、やがてオリジナルな物を
作り始め、25年経った。
ここに並んでいる作品はその頃から使ってきた技法を古い順に並べてある。
エジンバラに派遣された時にガラスを使う技法を学び、今の金滴、銀滴という
技法につながっている。
陶芸は火の世界だが、それに対するものとしての水のイメージを金滴、銀滴で
表現している。
目を開いている作品は、まだ自分が頑張るぞという意気込みを持っていた時代を
表している。
目を閉じている作品は、制作の難しさに苦しむようになった時代を表している。
自分の今までの25年の制作のまとめの意味があり、一つの死と再生でもある。
金滴は本物の金を使っていて、経済中心の現代社会への批判の意味も持っている。」

陶磁器にあしらう金や銀というと、野々村仁清のような装飾的な使い方を
思い出しますが、社会批評的な表現にも使われているのでした。

近藤弘さんのHPです。

町田久美(1970~)(絵画、デンマーク派遣)
「手紙」 2009年
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日本画出身の方で、墨による明快な線描を使って、不思議で何となく不気味な
世界を描いています。
元は普通の日本画を描いていたのが、アルバイトで縁起物の絵を描いている時に、
簡単な線描の持つ力強い表現力に気付き、線描を強調した現在の作風に至った
とのことです。
現在の日本画ではあまり見られないのに、町田さんはあえて線描を前面に
押し出しています。
確かなデッサン力もあり、線描に手応えを感じておられるのでしょう。

残念ながら、体調不良とのことでギャラリートークは欠席でした。

ちょうど日本橋の西村画廊で、2011年2月5日まで町田さんの個展、「
Stories from a Cold Country」が開かれています。

山口紀子(1972~)(ファイバーアート、ドイツ派遣)
「Das Tor」(部分) 2010年
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山口さんは、こよりや縄を使った立体作品を制作しています。
この作品は新美術館の高さ8mの天井から白く長い壁紙を6枚並べて吊るし、
それにこよりを結び付けています。

山口さんのトークです。
「自分は大学で染色を学んだ後、家であれこれ習作している時に、和紙のこよりを
使うことを思い付いた。
こよりや縄は紙で作ってあっても強くてなかなか切れず、繊維の基本の形である。
自分は小さな単位をつなげて大きな物にしていくタイプ。
現在、ドイツに住んでいて、従来の立体作品では日本への輸送に問題があるので、
今回は平面的な作品に挑戦してみた。
展示スペースも考え、天井から吊るす形にした。
素材はドイツの壁紙や梱包に使う紙で作ったこよりを使っている。
こよりの端が木の葉状なのは、植物を意識して作った訳ではないが、作る影の
面白さに気付くようになった。
平面の紙と、ひも状の物の組合わせは初めての試み。
吊り下げた壁の裏側からも観ることが出来るので、光の陰翳も楽しんでほしい。」

山口さんの制作姿勢は、人間が繊維を使うようになった遠い昔の時代の面影を
感じさせます。

山口紀子さんのHPです。

流 麻ニ果(1975~)(絵画、アメリカ派遣)
「静音」 2010年
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どの作品も抽象画のようですが、よく観ると人の姿の形がかすかに残っている
ものもあります。
通り過ぎていく人たちの残した束の間の残像を描き留めているとのことです。

鈴木涼子(1970~)(現代美術、ドイツ派遣)
「ANIKORA-Kawaii no.6」 2009年
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等身大より大きな画面で、クロモジェニックカラーフィルムという素材を
使っています。
作者の顔にいろいろのコスチュームをしたアニメキャラクターの姿をつなげています。
女性の体の写真にアイドルの顔をコラージュする、アイドルコラージュ(アイコラ)に
ヒントを得ているとのことです。
いわゆるカワイイ姿を批判的な目で見ています。

鈴木涼子さんのHPです。

近藤聡乃(1980~)(現代美術、アメリカ派遣)
「waiting-sketch」 2008年
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会場では短いアニメーションが上映され、下絵やスケッチも展示されています。
アニメは幻想的な内容ですが、静かな展開です。
展示されているエッセイ風のマンガ、「春まで1/15秒」には淡々とした味わいが
あります。

近藤聡乃さんのHPです。

遠山香苗(1958~)(絵画、フランス)
「07/07/10」 2010年
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白い画面に絵具を刷毛で一息に引いています。
明るく、きっぱりと思い切り良く、リズムを感じます。
キャンディーが散らばっているような景色です。

赤崎みま(1965~)(写真、チェコ)
「風景ー水晶3」 2007年
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小さなサイズの写真で、教会の彫刻、果物、水晶などを暗い背景の中に明るく
浮かび上がらせています。
写されている物が中から光を発しているようにも見えます。
それは、希望の光、祈りを表しているとのことです。

神戸智行(1975~)(日本画、アメリカ)
「ハナモヨウ」 (部分 参考作品) 2006年
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パネルに、池の水面に浮かぶ桜花と金魚を描き、そのパネルを何枚も
会場の壁に貼ってあります。
別の作品では、水草とカエル、ザリガニなどさまざまの生物が賑やかに
描き込まれています。
自然への慈しみの気持ちが表れています。

古郷秀一(1952~)(彫刻、アメリカ派遣)
「木の回廊 VIII」 2002年
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木や鉄で作ったオブジェです。
眺めと物質性をテーマにしているとのことで、木や鉄の材質感を感じさせます。

三好耕三(1947~)(写真、アメリカ派遣)
「CACTI 3240 1020 AZ9221,1992」 1992年
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モノクロ写真で、満開の桜、サボテン、大根の写真です。
植物のたたずむ姿に惹かれての撮影とのことです。

三好耕三さんのHPです。

深井聡一郎(1973~)(彫刻、イギリス)
「country house」 2010年
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陶製のヨーロッパの中世の家、教会、塔などです。
この作品のように、舞台の大道具のような形の物もあります。
土の造形の楽しさを感じます。

深井聡一郎さんのblogです。


ギャラリートークは興味深いお話ばかりでした。
現代アートは鑑賞する人が自由に観れば良いとも言いますが、やはり作家の
トークを聴くと理解が深まります。

それぞれの作家の作品紹介やQ&Aも載っていて、読んで面白いです。
皆さん、派遣先で貴重な体験を積まれていることが分かります。
さすがに皆さん、中学校時代の美術の成績はとても良いようです。

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【2010/12/16 06:20】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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