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「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」展 虎ノ門 菊池寛実記念智美術館
神谷町
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虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」展が
開かれています。
会期は9月3日(日)までです。

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菊池寛実記念智美術館は、菊池智(1923~2016)が1950年代から収集してきた
現代陶芸の作品を展示するため、2003年に開館した美術館です。
女性によるコレクションとその美術館という、珍しい例です。

父は茨城県の高萩炭鉱などを経営した実業家の菊池寛実(1885-1967)で、
戦時中に高萩で働いていた瀬戸出身の陶工のために登り窯を作っています。
智はそこで生み出される陶器を見て、陶芸に惹かれるようになったそうです。

展覧会では昨年、93歳で亡くなった菊池智のコレクションのうち、約60点が
展示されています。

6月10日にアートブログイベントが開かれたので、参加してきました。
写真は許可を得て、撮影しています。

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富本憲吉 「白磁八角共蓋飾壺」 1932年
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若い頃にフランスでマイヨールの彫刻から白磁の構想を得たということで、
端正な中にふくらみのある形です。

八木一夫 「黒陶作品 Night」 1968年
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低温焼成のオブジェで、燻した土を塗って黒色を出していて、金属とは違う
柔らかさがあります。

私が八木一夫を知ったのは、以前、NHKの日曜美術館で司馬遼太郎が
「ザムザ氏の散歩」という作品について語っていたのを見た時でした。
いびつな輪の形が立っているオブジェで、ザムザとはカフカの小説、
「変身」の主人公、グレゴール・ザムザのことです。

三輪休雪(十二代) 「ハイヒール」 1979年
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精巧なつくりですが、ヒールにまでろくろ目が見え、ろくろで成形していることを
見せています。
三輪休雪は代々、萩焼を継承しています。

中村錦平 「扁壷」 1980年
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椎茸や松ぼっくりを思わせる迫力のある造形で、肩の部分に「る」の字が並べてあって、
浴衣の柄のようにも見えます。
中村錦平さんは金沢の陶芸家の家に生まれ、現代社会の中の伝統というものを
問い続けているそうです。
市販の陶土や釉薬を使って電気窯で焼く、東京焼と名付けた、地域性を持たない
作品を制作しています。

鈴木治 「青白磁 鳥」 1981年
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単純化された四角い鳥が三角の羽根を広げて飛んでいる、どこかユーモラスな作品です。

2014年には東京ステーションギャラリーで、「泥象(でいしょう) 鈴木治の世界」展が
開かれていました。

国立新美術館の「泥象 鈴木治の世界」展の記事です。

藤本能道 「霜白釉釉描色絵金彩花と虫図六角大筥」 1990年
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藤本能道は写実的な色絵磁器で知られた作家で、東京藝術大学の学長も勤めていますが、
菊池智と交流があり、最後の新作展は智美術館の前身の菊池ゲストハウスでを開いた
とのことです。
最晩年の作品で、白磁に燃え立つような花と虫が描かれ、心象風景の趣きがあります。

深見陶治 「瞬」 1997年
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陶土を水で溶いて、圧力をかけて型に流し込む、泥漿圧力鋳込みという技法によっています。
手の痕跡をまったく残さない、シャープな造形です。

川瀬忍 「青磁香炉」 1990年
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二股大根のような面白い形で、ろくろで作ってあります。
陶磁器は焼成すると縮みますから、このような背の高い器を
直立させるのはかなりの技です。

川崎毅 「家のある所」 2012年
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展示されている中で一番新しい作品です。
川崎毅さんは南欧風の白い家の形をした作品をつくっていて、そこには小さな世界が表れています。


菊池智の審美眼により選ばれた作品を通じて、現代陶芸の多彩さをゆっくり味わえる展覧会です。

展覧会のHPです。


【2017/06/13 19:34】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展』 上野 東京都美術館
上野
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上野の東京都美術館では『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展』が
開かれています。
会期は7月2日(日)までです。

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オランダのロッテルダムにあるボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館はボイマンスと
ベーニンゲンの2人が寄付したコレクションを基礎にした美術館で、中世から近代まで
約126,000点の美術品を所蔵しています。

展覧会ではヒエロニムス・ボスの作品2点、ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」を中心に、
16世紀ネーデルラントの絵画や版画、彫刻など約90点が展示されています。

会場の最初にはキリスト教の聖人たちの木彫が置かれています。
彩色の残っている作品もあり、どれも精緻に彫られています。

ヒエロニムス・ボス 「放浪者(行商人)」油彩、板 1500年頃
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破れた服の痩せこけた男が杖を突き、とぼとぼと歩きながら、後ろを振り返っています。
背負っている籠に付けられている柄杓と猫の皮は何を意味するのでしょうか。
持っている帽子にはキリが留めてあるので、靴直しもするのではないかとのことです。
それにしては、右足にブーツ、左足にサンダルというのは、かなりの出で立ちです。
左の家は棒の先の壺、白鳥の看板などから娼家らしいとのことで、戸口では男女が
抱き合っています。
男が未練ありげに振り返っている訳が分かります。
祭壇画の一部だったとのことで、欲望への戒めを表しているのでしょうか。
男の表情が生きており、色調もまとまった作品です。

ヒエロニムス・ボス(1450年頃-1516)はネーデルラントの画家で、幻想的な作風で有名です。
後にも大きな影響を与えていますが、油彩画は僅かしか現存していません。
展覧会ではそのうち2点が展示されています。

ヒエロニムス・ボス 「聖クリストフォロス」 油彩、板 1500年頃
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男が川の渡し守りをして人助けをしていたところ、小さな男の子が川を渡してくれるよう頼みます。
男は気軽に応じて男の子を乗せて渡り始めますが、男の子はだんだん重くなります。
やっとのことで渡り終ると、男の子は自分がキリストであることを明かし、男を祝福して、
キリストを背負う者という意味のクリストフォロスと名付けます。
中世末期には、聖クリストフォロスは旅人の守護聖人として大変人気があったそうです。
川を渡る場面が描かれていますが、男は杖にすがって何とか歩いています。
足の形や背を傾けた姿勢は「放浪者(行商人)」とよく似ています。
杖の先から芽が出ていて、地面に突き刺した杖から若芽が出て巨木になったという伝説を
表しています。
血を流した魚が下がっているのはキリストの磔刑を暗示しているそうです。
遠景には追剥のような光景や吊り下げられた熊が、右側にはボス独特の割れた壺などが
描かれています。
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絵:ピーテル・ブリューゲル 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン
「大きな魚は小さな魚を食う」 エングレーヴィング 1557年

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ピーテル・ブリューゲル(1526/1530年頃-1569年)はネーデルラントの画家で、
農民の生活などを細密に描いています。
同名で画家の長男と区別するため、(父)(1世)などと表記されることもあります。
ブリューゲルは版画の下絵も多く制作しています。
魚が魚を食べている異様な光景で、ボスの影響が感じられます。
ネーデルラントでも魚はよく獲られていたはずですが、日本人の持つ魚への親和性とは
異なるものがあります。

ピーテル・ブリューゲル 「バベルの塔」 油彩、板 1568年頃
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「バベルの塔」はブリューゲルの代表作の一つです。
横74.6㎝の作品で、海辺の巨大な円錐の塔が描かれています。
螺旋状の構造になっていて、階によってアーチの形も違い、上の階には雲がかかっています。
左側の白い部分は漆喰をクレーンで運び上げているところで、漆喰をかぶって白くなった
作業員も描き込まれています。
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その左の赤い部分はレンガを運び上げているところで、白と赤の色彩効果を出しています。
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ステンドグラスの嵌まった教会に向かう行列も見えます。
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波止場には大小の船が泊っています。
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一番上はまだ建築中で、木の支えでアーチを組もうとしています。
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遠くにはのどかな風景が広がっています。
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旧約聖書ではこの後、神が人びとの言葉を乱したため、建築は続けられなくなったとありますが、
この絵ではまだ塔は建築中です。
絵の意味は不明ですが、山岳の無いネーデルラントでは高い塔というものに対しては
特別の思いがあったことでしょう。

1400人もの人物が描き込まれているという細密画なので、会場で放映されているCGで
細部の描写を確認できます。


16世紀ネーデルラントの宗教的・社会的雰囲気の伝わる展覧会です。


展覧会のHPです。


【2017/06/10 19:28】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「ファッションとアート 麗しき東西交流」展 横浜美術館
みなとみらい
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横浜美術館では、「ファッションとアート 麗しき東西交流」展が開かれています。
会期は6月25日(日)までで、木曜日は休館日です。

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1859(安政6)年の開港以来、横浜を通じて西洋から日本に入ってきた文化、
日本から西洋に送り出された文化のうち、特にファッションに焦点を当てた
展覧会です。
京都服飾研究財団(KCI)の所蔵するドレスや服飾品100点を中心に、
約200点が展示されています。

第1章 東西文化の交差点 YOKOHAMA

明治時代、横浜から輸出された、衣装や装飾品の展示です。

飯田髙島屋 「室内着」 1906(明治39)年頃 KCI
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輸出用の室内着で、背中に孔雀の刺繍が施されています。
帯を締めず、ガウンのように着ています。
飯田髙島屋は現在の髙島屋の前身です。

初代 宮川香山「高浮彫桜ニ群鳩大花瓶」 
 明治前期 陶磁器 田邊哲人コレクション(神奈川県立歴史博物館寄託)

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高さ56.5cmあり、欧州で好まれた2点セットの形になっています。
京都の陶工、初代宮川香山《1842(天保13)年~1916(大正5)年》は
横浜に窯を開き、輸出用の陶器の製造を始め、横浜眞葛焼として売り出しています。
立体的な動物や植物を器の表面に貼り付ける高浮彫で有名です。

2013年にサントリー美術館で開かれた、「没後100年 宮川香山展」の記事です。


第2章 日本 洋装の受容と広がり

明治となり、洋装を取り入れた日本人を描いた作品などの展示です。

「昭憲皇太后着用大礼服(マント―・ド・クール)」 
 1910年頃(明治末期) 共立女子大学博物館

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昭憲皇太后(1849-1914)は明治天皇の皇后で、初めて洋装をした皇后です。
長い引き裾(トレーン)が特徴で、豪華な刺繍が施されています。
展示されている衣装から見ると、昭憲皇太后はかなり身長の低い方だったようです。
マント―・ド・クールはダヴィッドの「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」
(1807)で、ジョゼフィーヌの礼装としても描かれています。


第3章 西洋 ジャポニズムの流行

西洋で流行したジャポニズム(日本趣味)の表れた作品などの展示です。

ロイヤル・ウースター社 「伊万里写ティーセット」 
 1881年 磁器 三菱一号館美術館

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金襴手の豪華なティーセットで、取っ手やつまみは竹をイメージしていて、
菊の紋も入っています。

2011年に三菱一号館美術館で開かれた、「もてなす悦び展 ジャポニズムの
うつわで愉しむお茶会」でもジャポニズムの工芸品が展示されていました。

「もてなす悦び展 ジャポニズムのうつわで愉しむお茶会」の記事です。

ルネ・ラリック 「チョーカーヘッド《菊》」 1900年頃 箱根ラリック美術館
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ルネ・ラリックのアール・ヌーヴォーの工芸品はジャポニズムを多く取り入れています。
金地にエマイユ(七宝)を施してあります。 

ジュール=ジョセフ・ルフェーブル 「ジャポネーズ(扇のことば)」 
 1882年 クライスラー美術館

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紅い着物を着て紅い扇を持ち、かんざしも差して、腰に別の着物を巻いて
帯の代わりにしています。
当時、欧州では扇の持ち方の違いでいろいろな言葉を表す、扇言葉というものがあって、
扇を口に当てるのは「キスしてください」という意味だそうです。
着物を着て扇を持った妻のカミーユをモデルにして、モネが「ラ・ジャポネーズ」を
描いたのは1876年です。
 
展覧会のHPです。


【2017/06/08 20:36】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展 東京ステーションギャラリー
東京
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東京駅の東京ステーションギャラリーでは、「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展が
開かれています。
会期は6月18日(日)まで、入館料は一般1100円です。

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アドルフ・ヴェルフリ(1864-1930)はスイスの貧しい家庭に生まれ、里親の元を転々として、
学校にもあまり通えず、労働者として暮らしています。
31歳で統合失調症と診断され、病院に収容され、66歳で亡くなるまで病院で過ごします。
絵を描き始めたのは収容から4年後で、鉛筆と白い新聞用紙を与えられたことに始まります。
ヴェルフリはまず、4年間かけて2970ページにおよぶ、空想による自伝的シリーズの叙事詩、
「揺りかごから墓場まで」を制作します。
辛かった過去の記憶を壮大な旅行記に書き換えたと言える作品で、紙面をすべて絵と文字と
音符で埋め尽くす描き方をしています。

続いて、「地理と代数の書」、さらに「歌と舞曲の書」を描き、最後に「葬送行進曲」を
未完にして亡くなります。

こうして生涯に描いた合計で約25000ページにもおよぶ作品群はヴェルフリの亡くなった
15年後の1945年にフランスの画家、ジャン・デュビュッフェによってアール・ブリュット/
アウトサイダー・アート(芸術について伝統的教育を受けていない人の芸術)の画家として
認められています。

ヴェルフリはまだ描き足りないと嘆きながら亡くなったそうですが、隣のドイツではナチス政権が
1939年からT4作戦と呼ばれる、精神障害者などを安楽死させるという、恐ろしい政策を
実行しています。

会場にはベルン美術館アドルフ・ヴェルフリ財団の所蔵する約70点の作品が展示されています。
時期の経過とともに色彩が増えたり、コラージュを利用するようになったりしますが、
同じような形の繰り返しは初期から晩年まで変わりません。
隙間なく描き込まれた画面を観ていると、息が詰まりそうで、25000ページも描いたと聞くと
気が遠くなりそうです。

『ネゲルハル「黒人の響き」』  1911年

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部分
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『クリノリン、ギーガ―=リナ、糸つむぎ=リナ、安楽椅子=リナ、
おとぎ話=安楽椅子=リナ、大=大=女神』 1914年

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部分
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ヴェルフリの形態語彙とされるものの一覧表もあります。

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ヴェルフリの思い描いていた、微細で壮大な世界をまざまざと見せてくれる展覧会です。

展覧会のHPです。

次回の展覧会は、「没後40年 幻の画家 不染鉄展」展です。
会期は7月1日(土)から8月27日(日)までです。

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【2017/06/06 19:37】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「谷保玲奈展 -ウブスナ-」  日本橋髙島屋美術画廊X
日本橋
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日本橋髙島屋美術画廊Xでは「谷保玲奈展 -ウブスナ-」が開かれています。
会期は6月12日(月)までです。

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谷保玲奈さん(1986-)は多摩美術大学出身の日本画家で、常に生命というものを
題材として描いています。

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タツナミガイは軟体動物の一種です。

夢喰い
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ウツボ、エビ、貝、ウツボカズラなどが重なり合っています。

ウブスナ
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部分
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部分
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ウブスナは産土と書き、土地の守り神のことです。
横650㎝の長大な作品で、クラゲやイソギンチャクのような海の生物、陸の植物、
それに金魚などが画面を埋め尽くし、遠くに富士山を臨む海も見えます。
色彩も強烈で、さまざまな生命器官が湧き上がり増殖しているように見え、
圧倒される光景です。


(参考)
「出るために見る夢 I」 2011年
日008

2012年に上野の森美術館で開かれた、「第5回 東山魁夷記念 日経日本画大賞展」に
出品された、谷保さんの入選作品です。
金魚やタコ、魚の骨、花、キノコなどが透明感のある色彩で一緒に描き込まれて、
曼荼羅のようです。



【2017/06/03 19:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
東京のビルの多い街で暮らしています。

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